『アリー/スター誕生』サウンドトラック(Album Review)

2018年10月11日 / 18:00

 2018年10月5日に北米で公開がスタートした映画『アリー/スター誕生』。主演・監督・プロデュースを兼任するのは、俳優のブラッドリー・クーパー。彼の“映画監督”としての、デビュー作ということになる。そしてもう1人の主役で、こちらも自身初の主演を務めるのが、歌手のレディー・ガガ。本作は、ガガ演じるアリーが、ウェイトレスをしながらスターになるまでの過程を描いたストーリー。自身のキャリアと重なるところもあり、「当時を思い出しながら演じた」とUSプレミアではコメントしていた。

 「ジャスト・ダンスfeat.コルビー・オドニス)」や「ポーカー・フェイス」などの全米No.1ヒットを輩出した、衝撃のデビュー・アルバム『ザ・フェイム』(2008年)のリリースから、今年で早10年。あの頃の斬新なEDMサウンドや、生肉ドレス~パンダメイクで世間を賑わせたガガは、どこへやら。最近はトニー・ベネットとデュエットしたジャズ・アルバム『チーク・トゥ・チーク』(2014年)や、アダルト・コンテンポラリー・アルバムに近い『ジョアン』(2016年)など、ビジュアルのみならず、音楽の方向性も大きくシフトチェンジしている。
 
 本作『アリー/スター誕生』では、その2作で培った経験が大きく活かされている。その代表格となるのが、エディット・ピアフの「ラ・ヴィ・アン・ローズ」のカバーだろう。レディー・ガガの、シンガーとしての実力が如何なものかということを、あらためて思い知らされた。それから、ガガとアンドリュー・ワット、マーク・ロンソンという超強力タッグによる「シャロウ」も、息を呑むすばらしさ。映画のシーンを起用したミュージック・ビデオも話題の「ルック・ホワット・アイ・ファウンド」も、今のガガだからこそ表現できる、厚みというか深みみたいなものを感じさせる。古いソウルを彷彿させるサウンドや、難解ながらも美しい旋律もすばらしく、本作の中でも1、2位を争う名曲だ。

 各誌で絶賛の声を浴びているガガの演技も、これらの“歌唱シーン”があったからこそ(もちろん、演技自体もすばらしいのだが)。彼女がリスペクトするマドンナ(エビータ)や、クリスティーナ・アギレラ(バーレスク)も、映画の中で披露した「歌」のパフォーマンスが、演技の評価に繋がった。『ボディーガード』(1992年)の大ヒットも、故ホイットニー・ヒューストンが劇中で歌う「オールウェイズ・ラヴ・ユー」があったからだろう。

 そんな往年のスターたちによる大ヒット映画に“続く名作”といっても過言ではない、『アリー/スター誕生』。同日にリリースされたサウンドトラックには、映画の中で歌われるブラッドリー・クーパーとのデュエット曲や、それぞれのソロ・ナンバーが全19曲、映画のシーンの一部を切り取ったインタールードが15曲、収録されている。この、曲と曲の間に組み込んだ数秒間の台詞が、アルバムを通して映画を観ているような気分に浸らせる。楽曲は、映画の撮影中にそれぞれライブ録音されたそうで、それだけに、作品との一体感も強い。ブラッドリー・クーパーも、「ストーリーのような作品」だと自負している。

 歌力で圧倒させるピアノの弾き語り「イズ・ザット・オールライト?」や、ソウル・シンガーのような粘りっこいボーカルを聴かせる「ビフォア・アイ・クライ」、やさしさと強さを兼ね備えたメイン・テーマ「アイル・ネヴァー・ラヴ・アゲイン」といったバラード曲こそ、本作のハイライトであることは間違いないが、一方で、ダイアン・ウォーレンが制作に参加した、エレポップ調の「ホワイ・ディド・ユー・ドゥー・ザット?」~「ヘアー・ボディー・フェイス」や、ジュリア・マイケルズ&ジャスティン・トランターのタッグによる「ヒール・ミー 」など、今っぽいというか、アリーではなく本来の“レディー・ガガ”に近いタイトルもいくつかあって、作品を単調化させない。

 それから、ブラッドリー・クーパーによるカントリー・ソングも、本作の重要なポイントであり、聴きどころ。ブラッドリー・クーパーが演じるのは、落ち目のカントリー・シンガー。アリー(ガガ)が彼と出会って才能を見いだされ、スターへと駆け上がっていくのだが、ブラッドリー・クーパー演じるジャクソンが、いかに偉大なシンガーだったかを、歌でもしっかり演じ切っている。中でも、冒頭のカントリー・ロック「ブラック・キーズ 」と、ガース・ブルックスを彷彿させるミディアム「トゥー・ファー・ゴーン」、そしてスタンダードなカントリー・バラード「アイ・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」の3曲は、完成度高い。

 本作の全面プロデュースを担当したのは、ルーカス・ネルソン。ルーカス・ネルソンはご存知、カントリー界のドンことウィリー・ネルソンの息子で、父親の遺伝子を受け継いだ、正真正銘のサラブレッドだ。これだけ素晴らしい作品が完成したのも、彼の存在があってこそ。ちなみに、本作ではバンドのメンバーとしても出演しているとのこと。

 同名映画(1976年)で主役を演じたバーブラ・ストライサンドも絶賛し、ガガ自身も「自信に繋がった」と公言している、本作『アリー/スター誕生』。公開後週末の北米映画興行収入ランキングでは、『ヴェノム』に続いて2位にランクインし、現時点で40億を超える興行収入を獲得している。メディアが高く評価していることもあり、今後、感謝祭~クリスマスまでに売上を伸ばす可能性も高い。12月に発表される<ゴールデングローブ賞>のノミネートも大いに期待できるかも?日本では12月21日に公開予定。

Text: 本家 一成


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