ブルース・コバーン、25年ぶりの来日公演が開催。初日の模様をレポート

2018年9月30日 / 12:30

 ブルース・コバーンがまた日本にやって来てライブをするなんて、ちょっと信じられないというか、まさに奇跡のようなできごとだ。今回は9月29日と30日の二日間、ビルボードライブ東京での一日2回、4回だけの公演だ。その初日の2回のステージを続けて見た。

 ステージでブルース自身感慨深げに語っていたように、今回は25年ぶりの日本でのコンサートとなる。前回の来日は1990年代前半、『Big Circumstance』や『Nothing But A Burning Light』といったその頃にブルースが発表していたアルバムがまだ日本できちんと紹介されていた時代だ。ブルースの人気も高く、彼の歌を聞き続けている熱心なファンは、『High Winds, White Sky』、『Night Vision』、『Joy Will Find A Way』といった、70年代前半の彼の代表的なアルバムで、その歌とギターの世界に魅了された人たちが多かった。

 25年ぶりのブルースのライブは、奇跡の実現をずっと待ちわびていた、そうした昔からのファンの姿がたくさん見受けられ、年齢層もかなり高かったが、ブルースも今年73歳、演奏活動を始めてからはすでに50年以上、客席からもステージからも流れた歳月の長さと重みを強く感じさせられた。

 しかしブルースのステージは、もちろん過ぎ去った時代を回顧するものでも、過去の代表曲に寄りかかるものでもない。今回のステージのセット・リストは昨年発表したばかりの通算25枚目のスタジオ録音アルバムとなる最新作『Bone On Bone 』の収録曲が中心に据えられ、これまで自分が築き上げて来た世界の延長線上にある今現在の自分の姿を伝え、そして未来への意欲も感じさせる、実にポジティブで素晴らしいものだった。

 9月29日のブルースのステージは、2回とも『Bone On Bone』の中の「States I’ m In」で始まり、80年代の人気曲「Lovers In A Dangerous Time」、そして70年代後半に来日した時に作られた曲「Tokyo」へと続いていく。そして4曲目は「とてもとても古い曲をやる」と言って、ファースト・ステージでは「One Day I Walk」、セカンド・ステージでは「Mama Just Wants To Barrelhouse All Night Long」(どちらも日本でとても人気のある曲)が演奏された。

 その後ブルースはアコースティック・ギターからリゾネイターのついた金属製のギターに持ち替え、ファースト・ステージでは『Bone On Bone』からの「Cafe Society」と80年代半ばの「Peggy’s Kitchen Wall」、セカンド・ステージでは2011年のアルバム『Small Source Of Comfort』からの「The Iris Of The World」と90年代半ばの「Strange Waters」を歌い、どちらのセットも最新アルバムからのギター・インストゥルメンタル曲「Bone On Bone」でリゾネイター・ギターのコーナーを締めくくった。

 それからブルースは南米アンデス地方の民族楽器チャランゴで、ファースト・ステージは90年代半ばの曲「Bone In My Ear」、セカンド・ステージは『Bone On Bone』からの「Mon Chemin」を、左手に置いたウィンド・チャイムを足で蹴って鳴らしながら披露した。それぞれたった1曲だけだったが、チャランゴで歌われる曲は、彼のソロのステージの雰囲気をがらりと変え、とても印象深く、別世界に引きずり込まれた。

 後半は「ビルボードのチャートに入った自分の唯一の曲だ」と言って1980年のビルボード・ヒット・チャート21位の曲「Wonderrin’ Lions Are」、そして「The Gift」、「If I Had A Rocket Launcher」、「Waiting For A Miracle」といった人気曲がそれぞれのステージで歌われたが、どちらのステージでも、ディレイのエフェクターを見事に使ってアコースティック・ギターの音が左右に、そして後へと飛び交う「If A Tree Falls」、そして『Bone On Bone』の中でも最も強烈な「False River」と、環境問題や人類や地球の未来に強い思いを寄せ続けるブルースの曲がその中心に位置していた。

 アンコールにはファースト・ステージが「All The Diamonds In The World」、セカンド・セットが「Lord Of The Starfields」と、いずれも70年代の古い曲が選ばれていた。

 アコースティック・ギター、金属製のリゾネイター・ギター、そしてチャランゴと3台の弦楽器を持ち替え、高い椅子に腰掛けながらたった一人で、70年代から現在までの50年近いキャリアの中から選りすぐった曲を演奏するブルースのライブを聞いていると、奇妙なことにうんと昔の古い曲が落ち着いていてどこか老成しているように思え、新しい曲が熱く激しく怒りに満ち、とても若々しく思えてくる。それは73歳の今もブルースが決して隠棲することなく、自分を取り巻く今の世界を、そしてこの地球の未来を思って、自分の音楽を作り、演奏し、発信し続けているからだと確信した。

 そしてテクニックだけをひけらかすのではなく、ひとつひとつの音やフレーズに心の叫びを込め、感情のゆらぎを伝えるブルースのギターやチャランゴの演奏が素晴らしかったことは言うまでもないが、うんと久しぶりに彼のライブを見て改めて強く思ったのは、その歌の深さ、強さ、鋭さ、優しさ、あたたかさ、豊かさだ。歳月を経てますます凄みを増しているブルースの歌に激しく心を揺さぶられた。

 まさに奇跡と言えるブルース・コバーンの25年ぶりの来日公演。これは何があっても、台風にもめげることなく、ぜひぜひ見てほしい。決してお見逃しのないように!

Photo:Masanori Naruse
Text:中川五郎

◎ブルース・コバーン公演情報

ビルボードライブ東京
2018年9月29日(土)※終了
2018年9月30日(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30
2nd Stage Open 18:30 Start 19:30

URL:http://www.billboard-live.com/


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