ダウスゴーのブラームス・ツィクルス、第3弾が登場(Album Review)

2018年9月4日 / 12:00

 1963年デンマーク生まれの指揮者、トーマス・ダウスゴーは、もう30年以上の長きにわたってスウェーデン室内管弦楽団の首席指揮者の任にある。この手勢やデンマーク国立管などを率いてシューマン、ベートーヴェン、あるいはシューベルトの録音をすすめつつ、ハルトマン、ハメリク、ランゴーといった古典期からロマン派の知られざる作曲家に取り組み、故国の現代作曲家の作品もとりあげるなど、レパートリー広いダウスゴー、近年の演奏活動は、いきおい多産なものになっている。そんな彼がいまBISレーベルでスウェーデン室内管と取り組んでいるのがブラームスの交響曲ツィクルスで、このアルバムがその第3弾となる。

 交響曲第1番を1872年に完成させるまで、実に20年以上もの歳月を要した完璧主義者のブラームスだが、50歳を迎えた1883年の5月から10月にかけて一気に書き上げたのが、今回ここで演奏されている交響曲第3番である。

 ダウスゴーとスウェーデン室内管といえば、小編成であるがゆえに音の厚みこそないものの、小回りの効く俊敏な機動性をフル活用した、颯爽たる音楽作りに最大の特徴があり、起伏に富んだ音楽は清冽極まりない。ただし、そうしたヴィヴィッドな印象は、解釈自体のエキセントリックさによるものなどではないことも、その綿密丁寧なアプローチに触れればすぐに得心のいくところだろう。

 華やかな楽想を詰めこんだこの交響曲にしても、大編制のオケによる演奏では、渾然一体となった音の塊が押し寄せ、味わいはいささかもっさりとしたものになることも少なくはない。対するダウスゴーらの音作りは、一切ぼやけることのない、各々のパートの存在意義が明晰に打ち出されている。そして各奏者が奏でる全ての音は、聴き手の鼓膜に到達してはじめて重層的かつ有機的に絡み会い、クリアな像を結ぶかのような錯覚を覚えるほどだ。だからこそ、流れる音楽は、常に瑞々しく生々しい。

 第1楽章第1主題の高らかなファンファーレから一気呵成に第1主題に攻め込むあたりからして音の厚みこそないのだが、そんなものを惜しむ寸暇はない。情報量が多いために飽和状態に近いほど濃密な演奏にぐいぐいと引き込まれてしまう。

 緩徐楽章の秘やかな響きなどは室内管でなければ出せない味わいだし、第2楽章の主題を出すクラリネットとファゴット、第3楽章と終楽章で活躍するホルンはじめ、管楽器セクションの上手さも光る。そして、第4楽章は、期待した通り、これ以上ないくらいハマっている。

 なおダウスゴーらのブラームス盤では、交響曲を2曲抱き合わせたり、あるいは名の通った管弦楽曲をカップリングする、という常道を取らないのも特徴だ。

 交響曲は1枚に1曲。そこに管弦楽曲に加え、必ず編曲ものを組み合わせている。今回のアルバムには、シューベルト歌曲のブラームスによる管弦楽伴奏編曲版が6曲、ダウスゴーの編曲による21のハンガリー舞曲集WoO.1から第11番から16番、それにアルト・ラプソディがカップリングされ、演目だけでもさまざまな楽曲が楽しめるのがうれしい。演奏内容がいずれも充実したものであることは、付言するまでもない。Text:川田朔也

 


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