フェリ“オネーギン“は円熟の極み、若いパワーほとばしるシムキン“ドンキ”【バレエフェス2018】

2018年8月22日 / 17:00

 3年に一度のバレエの祭典【世界バレエフェスティバル】が8月1日に開幕し、8月8日にBプログラムが行われた。

 全部で19組というスターが登場するガラ公演【世界バレエフェスティバル】。Bプログラムの1組目は、オレシア・ノヴィコワとデヴィッド・ホールバーグのペアによる「眠れる森の美女」の3幕のパ・ド・ドゥだ。クラシック・バレエの代表的な振り付を、白い衣装に身を包んだ王子とお姫様が確固たるパで体現する、その一瞬一瞬が、“完璧”と形容しても過言ではない美しさを観客に披露してのスタートとなった。

 “眠り”に続き、ヴィエングセイ・ヴァルデス、ダニエル・カマルゴによるコミカルな「ムニェコス(人形)」、レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェによる優美なバランシンの「ソナチネ」、シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコによるノイマイヤーの悲しみあふれる「オルフェウス」が続き、最後はローラン・プティの「コッペリア」をアリーナ・コジョカル、セザール・コラレスがチャーミングに踊り、1部は終了した。

 2部はドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオによるヌレエフ版「シンデレラ」、タマラ・ロホ、イサック・エルナンデスによる「HETのための2つの小品」、アシュレイ・ボーダーとレオニード・サラファーノフによる黒鳥のパ・ド・ドゥと続き、アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲルがノイマイヤーの「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥを踊り、砂糖菓子のように甘い時間にフレデリック・ヴァイセ=クニッテルのピアノが二人に寄り添い、客席との距離を親密なものにしていたのも印象的だ。

 3部の幕が開くと、「ロミオとジュリエット」で最も幸せな第1幕のパ・ド・ドゥのための舞台装置が登場。メリッサ・ハミルトンとロベルト・ボッレが後の悲劇を予感させる夜のパ・ドゥ・ドゥを切なく踊った。続くミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマンは「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”を踊り、煌めく明るさで舞台を照らした。

 そしてひとつのクライマックスとも言えたアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーによる「マノン」第3幕のパ・ド・ドゥ。アクロバティックなリフトと、重力に委ねる独創的なマクミランの振り付けは、その身体性から心情を余すことなく伝えてくれるものだった。サラ・ラム、フェデリコ・ボネッリの「アポロ」は神そのものを体現する神々しさ。そしてアンナ・ラウデールとエドウィン・レヴァツォフが「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥを踊り、溢れ出る悲哀と官能を、ノイマイヤーのエレガントな振り付けで体現していた。

 4部はエリサ・バデネスとダニエル・カマルゴによる「じゃじゃ馬馴らし」に始まり、マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフによる「ヌレエフ」よりパ・ド・ドゥ、そしてマリア・アイシュヴァルトとアレクサンドル・リアブコの「アダージェット」が続く。

 終幕に近づいたこのタイミングで、アレッサンドラ・フェリとマルセロ・ゴメスによる「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ。タチヤーナが、オネーギンの求愛を拒絶するたった数分の場面であったにも関わらず、そこまでに至る全幕を感じさせるフェリとゴメスの“演技”に客席は大喝采。この日唯一のカーテンコール2回が飛び出す盛り上がりとなった。12年ぶりにこの【世界バレエフェス】のステージに舞い戻り、最年長にして最も注目を集めていると言っても過言でなかったアレッサンドラ・フェリが、“健在”を通り越し、更なる大きな存在となっていることが確信できた公演となった。

 そして最後のステージはドン・キホーテのパ・ド・ドゥを、マリア・コチェトコワとダニール・シムキンという若き大スターが登場。会場からは登場時から男女ともに歓声が聞こえ、クラシック・バレエにおしとやかなイメージをお持ちの方はビックリされるかもしれない程の人気振りが感じられる空気。コチェトコワの正確かつエネルギッシュなフェッテの回転、シムキンのパワフルかつ鳥のように羽ばたくマネージュに客席はひとつひとつ沸き、まさに祝祭的なラストに相応しい演目となった。

 3年に1度のスーパースターがきら星のごとく集う【世界バレエフェスティバル】。3年後のバレエフェスには、どんなダンサーが揃うのか、また新たな振り付けに出会えるのか。近年ますます盛り上がりを見せる日本のバレエ熱に、世界中の希有なダンサーたちが最高のコンディションで応えてくれることを、今から楽しみにしたい。Text:yokano

◎公開情報
【世界バレエフェスティバル】
Aプログラム:2018年8月1日(水)~8月5日(日)
Bプログラム:2018年8月8日(水)~8月12日(日)
Sasaki Gala:2018年8月15日(水)
東京文化会館


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