『スウィートナー』アリアナ・グランデ(Album Review)

2018年8月18日 / 18:00

 2016年5月に発表したアルバム『デンジャラス・ウーマン』(全米2位 / 全英1位)から約2年振り、通算4作目となるアリアナ・グランデの新作『スウィートナー』。リリース前に公開された“逆さ”のアートワークについては、2017年の5月に英マンチェスターのライブ会場で起きた自爆テロ事件を受け、「地面が見つからなかったけど、今ようやく足が付いた」というアイデアからできたものだと、雑誌のインタビューで話している。

 逆さといえば、本作からの先行シングル「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」のミュージック・ビデオも、天地がひっくり返るようなシーンが登場し話題を呼んだ。これも、ジャケット写真と同じ意味合いが含まれているのだろう。同曲は、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で初登場3位にデビューし、アルバム・リリースまでTOP10にランクインし続けるロングヒットを記録。イギリスやカナダでは2位、オーストラリアではNo.1をマークした。

 アルバムは、彼女の真骨頂ともいえる美声を高らかに披露するアカペラのオープニング「レインドロップス(アン・エンジェル・クライド)」から、3曲続けてファレル・ウィリアムスによるプロデュース曲が続く。2曲目の「ブレイズド」は、ファレル自身もゲストとして参加したダンス・ポップ。ここ最近の、というよりは、第一次ファレル・ブームを巻き起こした2000代初期~中期のサウンドに近い。夏っぽい爽快感があって、ドライブやフロアでも映えそう。

 続く「ザ・ライト・イズ・カミング」は、アルバムの発売前に公開されたニッキー・ミナージュとのコラボ・ソング。アリアナとは、ジェシー・Jとのトリプル・コラボ「バン・バン」(2014年)や、前作『デンジャラス・ウーマン』からのヒット・シングル「サイド・トゥ・サイド」で意気投合し、お互いを親友と呼び合う仲……だが、一部では不仲説も囁かれている。ファレルがプロデュースしたグウェン・ステファニーの大ヒット曲「ホラバック・ガール」(2005年)を彷彿させる、ヒップ・“ポップ”的サウンドで、サビではアリアナもグウェンそっくりにラップを披露している。

 4曲目の「r.e.m.」は、一転してリラックスムード漂うミディアム。ボーカルも終始気だるく、冒頭からの勢いを一旦クールダウンさせる役割を果たしている。サウンドはファレルっぽいが、メロディだけ聴くとちょっと意外な印象を受ける。この3曲の他にも、計7曲をファレルがプロデュースしていて、中でもタイトル曲の「スウィートナー」は絶品。同曲は、アリアナの歌唱力が活かされたメロウ・チューンで、優しく丁寧に歌うヴァースから、高音と低音、ファルセットを柔軟に使い分けたフック、優等生っぽさを緩和させるファレルの音選びも絶妙。

 遊びゴコロとファレルっぽさを全面に出したファンク・ポップ「サクセスフル」、ファレルとは復帰シングル「WTF」(2015年)でコラボした、ミッシー・エリオット参加の「ボーダーライン」も良い出来。アルバムの最後を締めくくる「ゲット・ウェル・スーン」 は「スウィートナー」同様、ど派手でははないが、聴けば聴くほど味の出るノスタルジックなバラード曲。後半につれ加熱する、重層感あるアリアナのコーラスに圧倒させられる。

 コーラスのすばらしさといえば、アルバムからの2ndシングル「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」で聴かせる、ゴスペル風のコーラスもゴージャス且つ迫力満点。この曲は、前述の「バン・バン」の作者でもあるサバン・コテチャとリカード・ゴランソンの共作で、プロデュースは前作『デンジャラス・ウーマン』も手掛けたスウェーデンの音楽プロデューサー=イリア・サルマンザデが担当している。アリアナの大ヒットナンバー「プロブレムfeat.イギ―・アゼリア」や「ブレイク・フリーfeat.ゼッド」などを手掛けたマックス・マーティンは、「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」と「エヴリタイム」にソングライターとして参加している。

 マックス・マーティンが手掛けた2曲や、スウェーデンのポップ・バンド=カーディガンズのピーター・スヴェンソン作のエレクトロ・ポップ「ブリージン」など、旋律のハッキリしたポップ・ソングもあるが、トミー・ブラウンとヒットボーイ作によるオルタナティブR&B寄りの「ベター・オフ」や、UKの女性シンガーソングライター=イモージェン・ヒープの同名タイトル「グッドナイト・アンド・ゴー」(2005年)をネタ使いした「グッドナイト・アンド・ゴー 」など、テンションを抑え気味にした曲が、若干割合を多く占めている。

 2ndアルバム『マイ・エヴリシング』(2014年)のような、若さハジけるポップ・アルバムとは対照的に、様々な経験を重ねたからこそ表現できる、サウンド・ボーカル共に成熟した内容のアルバム。「ちょっと地味だな~」という印象を受けた方も、何度か聴いていくうちにどっぷりハマるはず。

Text: 本家 一成


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