BRAHMAN/ストレイテナー/BIGMAMA/Dragon Ashら、初の海外開催【RUSH BALL in台湾 20th ANNIVERSARY】をレポート(後編)

2018年8月1日 / 18:02

 6月30日、台湾・台北にて関西を代表するロックイベント【RUSH BALL】の台湾版【RUSH BALL in台湾 20th ANNIVERSARY】が開催された。本稿では、BRAHMAN、ストレイテナー、BIGMAMA、Dragon Ashが国境を越えて日本のロックを台湾のファンへと届けた後半の模様をお届けする。(→前編はこちら)

 日本と台湾、それぞれが音楽を通じて交流を重ねる。言葉が分からずとも、想いは通じ合うことができるはず。BRAHMANのステージはまさにその言葉通りのものだった。1曲目に何を選ぶのか、きっとこの曲だろうと想像はしていたが目の前で繰り広げられるステージを見て、涙が溢れた。「満月の夕」、2015年の「RUSH BALL」でトリを飾った時に最終曲で披露した楽曲だ。魂の込められた歌には圧倒的な力が存在する。阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして今年2月に台湾・花蓮で起きた震災…。親日家の多い台湾は東日本の震災時には国を上げて、日本へ大きな援助をしてくれた。国を越え、感謝の想いを伝えるようにノーマイクで歌い上げるTOSHI-LOWの姿にじっと魅入ってしまう観客たち。次曲「賽の河原」、フロアがもみくちゃになるほど凄まじい盛り上がりを見せると、「BASIS」へ。「―-其処に立つ」、歌詞のその言葉がビリリと体を刺すように響く。MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)の2人から放たれる屈強なリズム、KOHKI(Gt)の緊張感を煽るメロ。そして拳を振り落とすように歌いあげるTOSHI-LOW。「AFTER-SENSATION」「SEE OFF」と最新アルバムから1stアルバムまで、新旧織り交ぜた楽曲陣にも興奮が止まらない!そして「ANSER FOR…」ではフロアを練り歩き、もうどこにTOSHI-LOWがいるのかわからないほどに観客とぶつかり合いながらの熱唱へ。少しの落ち着きを取り戻したところへ「鼎の間」に。スクリーンには日本でのライブと同じように、原発事故後の写真とメッセージで綴られた映像が英語字幕付きで流された。ただ変わらずステージにいるメンバーを見る人、映像に見入る人、メッセージに涙を流し一緒にいる隣人の肩を抱く人。何を思うかは自由で、そこに“何か”を感じてほしいと音を奏でる彼らに、大きな賞賛の拍手が送られる。そしてTOSHI-LOWは英語で3.11で感じた思いを語る。「失うものが多いなかで、たくさんの得るものもあった。台湾でも尊敬すべき友人ができた」と、ステージにサプライズゲストとして、台湾パンクシーンの先駆者・滅火器(Fire EX.)のSam(Vo)、ORio(Gt)を呼び込むと会場からは大きな歓声が沸き起こった。BRAHMANはもちろん、HUSKING BEEやMONOEYES、MONGOL800などとも対バンをし、日本でも着実に知名度を上げている彼ら。「今夜」「おやすみ台湾」とそれぞれの楽曲をコラボし、ステージで台日の友好をしっかりと感じさせると、ラスト「真善美」まで、怒涛のステージングでオーディエンスを圧倒していった。

 続いて登場したのは【RUSH BALL】と同じく、今年で結成20年を迎えるストレイテナー。2003年の【RUSH BALL】出演以降、2011年にはトリを務めるなどイベントとともに成長してきた彼ら。「RUSH BALL」の記念すべき海外進出ともなれば、彼らの出演は外すことはできないだろう。「彩雲」から始まったステージは開放感に満ち溢れ、BRAHMANのライブで熱気昂るフロアを熱量は等しく高いまま、緩やかになだめてくれるようだ。「DISCOGRAPHY」ではメランコリックなサウンドの中にもソリッドなギターサウンドがオーディエンスを快感の渦へと誘い込む。言葉は分からずとも音で極上の匂いを嗅ぎつけるのか、音に導かれるように次々に上がる拳がその快感の度数を計るようで、観ているこちらも思わず笑みを浮かべてしまう。その後も「The World Record」「From Noon Till Dawn」と、感度の高いナンバーを立て続けに披露。バンドとしては3年ぶりとなる台湾でのライブだが、「RUSH BALLとして、尊敬する先輩たちと(台湾に)来られるのはうれしい。台湾に来た日本の人は観光を楽しんで。台湾のみんなが日本に来てくれるのを待っています」と次に来るイベントに懸ける思いを語ると、ステージ後半は美しいサウンドを描く序盤から、サビになると一気にスケールの大きな熱量を放つ「DAY TO DAY」で会場を魅了! シンプルながらも緻密な構成にほれぼれとさせられる「The Future Is Now」、強靭なリズムに思わず身震いする「Melodic Storm」と、バンドが持つ多角的な世界観をこれでもかと見せつけていく。20年に渡って彼らが積み上げてきた音の魅力をぎゅっと詰め込んだようなステージはとてもとても贅沢で、光悦の表情でステージに魅入ってしまう。そしてラストは「シーグラス」、観る者の深層を突くようなエモーショナルなナンバーに心酔したオーディエンスからは大きな賞賛の声が沸き起こった。

 この日のBIGMAMAのステージを見て、「――音楽は世界語。翻訳の必要がない――」どこかでそんな格言を聞いたけど、まさにその通りだなと思わずにはいられなかった。ベートーヴェンの「運命」をモチーフにした「虹を食べたアイリス」から始まったステージ、誰もが知るクラシック音楽を入り口に持って行くことで、バンドへの間口は一気に広がっていく。BIGMAMAの楽曲を知らないだろう観客も「何これ!?」という表情で驚き、次の瞬間には満面の笑みでステージに見入っている。チャイコフスキー「白鳥の湖」のシリアスな空気からポップに弾けていく「Swan Song」、バンドの初期曲ながらスケールの大きさと憂いのあるボーカルが雄々しさを生みだす「Paper-craft」とバリエ豊かなセットリストでフロアを沸かしていく。バンドの音に乗って大きくジャンピングする人がいれば、エアヴァイオリンで一緒にステージにいる気分になる人も。ライブの楽しみは人それぞれ、良い意味での“統一感のなさ”こそ、純粋に目の前の音楽を楽しんでいるように感じる。「POPCORN STAR」「秘密」と、バンドの華やかさを押し出した楽曲から一転、骨太なギターサウンドでバンドの剛毅さを押し出した「ファビュラ・フィビュラ」へ。深紅の照明が興奮を煽り、観る者の集中力を高める荒々しくもスリルあるヴァイオリンの音色に思わず背筋がゾクリとする。その後もロック×クラシックの融合見事なサウンドが豪快に轟く「荒狂曲“シンセカイ”」、攻撃的な中にも優美なメロがドラマティックに展開していく「Strawberry Feels」と止まることなくライブを展開。最終曲「Lovers in a Suitcase」では波打つような優雅なメロに高まる感情を抑えきれず、一緒になって声を上げる観客たち。全9曲と短い時間ながらも共に高みへと昇っていく様は美しく、もう一度この国でこの景色を観られたらと願わずにはいられないステージだった。

 いよいよイベントも最後、Dragon Ashのステージへ。1999年の「RUSH BALL」初開催から出演&最多出場という、イベントには欠かせない存在の彼ら。台湾の地でも既知の存在らしく、台南や基隆、嘉義でも彼らの名は通じたし、楽曲をコピーしたこともあるという現地のバンドマンとも出会うことができた。この日を待ちわびていたオーディエンスの数はきっとこの日一番なのだろう、メンバーが登場した瞬間にフロアの熱気がぐっと高まるのが肌を通じて伝わってくる。「Stardust」「Mix it Up」と、早くも頭数曲でバンドが持つ壮大な世界観やパフォーマンスの大胆不敵さ、静と動の美しさと、ありったけの魅力を打ち出していく彼ら。観客の音への反応も抜群に素晴らしく、日本でのライブと何ら変わらない盛り上がりを見せる。Kenken(Ba)の唸るリズムが興奮を高める「The Live」では、HIROKI(Gt)の鋭利なギターサウンドも合わさり、フロアの床が大きく揺れる。「Ode to Joy」では観客のテンションの高なりにつられてか、Kj(Vo&Gt)も笑みを浮かべている。「Jump」「百合の咲く場所で」と、濃厚かつ浸透率高いナンバーを投下。気付けばフロアには大きなモッシュピットが生まれ、観客同士にも一体感が生まれている。日本人か台湾人か、誰が先導を切ったのかはわからないがそんなことは関係ない。みんなが笑顔になってその瞬間々々を楽しんでいるのが最高じゃないか。MCではKjは英語で思いを伝えていく。記者は英語も分からないのだが、「台湾の人も日本と変わらず、音楽が好きってわかってうれしい」というニュアンスのことを言っていたように思う。いや、そう思わずにはいられないほど、観客はみなこの日のステージを、イベントを存分に楽しんでいるのだ。本編ラスト「Fantasista」ではこの日一番の歓声が沸き起こり、ダイバーが次々に増え、日本のそれと変わらないように皆がフロアサイドを笑顔で走り抜けていく。これまでになかった盛り上がりに、フロア前方はもみくちゃ状態になったようで、kjが前方を気遣う様子も見える。ダイブをすることが正しいとか間違いとかは置いといて、異国の地で観客をそこまで盛り上がらせたDragon Ashが誇らしくて、思わず涙が出てしまった。

 アンコールでは、まさか再びステージに呼ばれるとは思わなかったのかHIROKIが楽屋に帰ったまま戻ってこないという嬉しいハプニングも♪ 予想外のアンコールだったのか、メンバー同士でその場で話し合い選ばれた楽曲は「Iceman」。アルバム『Buzz Songs』の隠しトラックとして収録されていた楽曲だが、ここ数年のライブで披露されることはほとんどなかったように思う。何かが始まるようなワクワクさせるパンクロックナンバーは、MAKOTO SAKURAI(Dr)、kenkenのリズムが最高に高揚感を煽ってくれる。フロアはモッシュなどが発生し、興奮は最高潮に!そしてラストは「Life Goes On」。歌詞の意味までしっかりと通じ合っているように感じるほどフロアはピースフルな空気で満たされたままステージの幕が閉じた。

 【RUSH BALL】初となる海外公演はこれにて無事終了。日本のフェスをそのままパッケージングしたイベントが異国の地でどう捉えられたのか。その答えはきっと今年の夏に開催される【RUSH BALL 2018】で答え合わせができるはず。いつもと同じようにイベントを楽しんでいると、もしかしたら隣の人は台湾からやってきた人かもしれない。台湾だけでなく、韓国やタイ、中国、ヨーロッパやアメリカからもやってくるのかもしれない。言葉が分からなくてもいい、少しだけ勇気を出して話しかけてみてはどうだろう。「どこから来たの?」「どのバンドが好きなの?」「あなたの国でオススメのバンドは?」。最近のスマホアプリは簡単な会話ならすぐに翻訳してくれるので、そういったもので交流するのもいい。「音楽に壁はない」、言葉で言うのは簡単だがやってみなくちゃわからない。もしかしたら、知らなかったその国のアーティストを知ることもできるかもしれない(Fire.EXも最高にカッコイイし♪)。今回の「RUSH BALL」は台湾という国での開催だったが、日本の音楽を愛している人は世界中にいる。自分たちが好きなアーティストが海を越えた異国でも愛されているのは、すごく嬉しいし誇らしい。その逆も然り。今回の台湾でのイベントに遊びにきた台湾の人たちがこの夏【RUSH BALL】へ来て、たくさんの日本のアーティストに出会うことももちろんあるだろう。それを想像するだけで、なんだか無性に楽しくなってくる。

 そして初の海外公演、節目となる20回目の開催を迎える【RUSH BALL】が今後どういったイベントへと進化していくのか。それも楽しみで仕方がない。

Photo by 橋本塁
Text by 黒田奈保子 

◎イベント情報 
【RUSH BALL in 台湾 20th ANNIVERSARY】終了
2018年6月30日(土)台湾・台湾大学体育館
主催 企画制作: GREENS 
公式HP=http://www.rushball.com/taiwan/
出演:THE ORAL CIGARETTES / go!go!vanillas / BRAHMAN / ストレイテナー / BIGMAMA / Dragon Ash

【RUSH BALL 2018 20th ANNIVERSARY】
2018年8月25日(土)、8月26日(日)、9月1日(土)
会場:泉大津フェニックス 
時間:各日共、開場9:30 / 開演11:00

RUSH BALL 2018 公式HP= http://www.rushball.com

 


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