GLAYが大ブームを巻き起こす中で生まれた『pure soul』に見るGLAYらしさ

2018年8月1日 / 18:00

8月25日&26日の両日、彼らの地元である函館・緑の島野外特設ステージにて、5万人動員の大型野外ライヴ『GLAY ✕ HOKKAIDO 150 GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT vol.3』を開催するGLAY。7月31日は“GLAYの日”でもあったことだし、今回はそんなGLAYのアルバムを紹介してみようと思う。数ある作品の中で多くのリスナーにとって記憶に残っているのは、やはり1997年から1999年にかけて彼らが“モンスターバンド”と化した時期に発表されたあのオリジナルアルバムではなかろうか。
20世紀末の邦楽シーンを席巻

1999年7月31日、幕張メッセ・駐車場特設ステージで伝説の20万人ライヴ『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL』が開催された。この日はファンの間で“GLAYの日”と呼ばれている。2004年の同日にも大阪・ユニバーサル・スタジオ・ジャパン内特設会場で『GLAY EXPO 2004 in UNIVERSAL STUDIO JAPAN™ “THE FRUSTRATED”』が開催され、それ以後は2006年、2011年、2016年にファンクラブ会員限定ライヴが開催されたり、昨年は東京・青海南臨時駐車場にはアルバム『SUMMERDELICS』発売記念のフリーライヴが行なわれたりと、すっかり記念日として定着しているようである。何でも、この日に入籍するGLAYファンのカップルもいるとかいないとか。今年の7月31日にはGLAYが2011年から発表し続けているアンソロジーシリーズの6作目として『pure soul Anthology』がリリースされ、TERU(Vo)が発売記念のトークイベントを行なった。昨晩の話だ。

昨日も暑かったが、1999年7月31日も暑かった。振り返れば、1999年7月31日は当時のGLAYの人気を目の当たりにした1日だった。1997年10月にリリースした初のベストアルバム『REVIEW-BEST OF GLAY』が480万枚超を売上げて当時のアルバム売上の日本記録を更新。それ以前にもアリーナツアーを行なっていたGLAYだが、1998年には全国46都市53公演のホールツアー、全国7都市13公演のスタジアムツアー、さらに1999年には全国4都市15公演のドームツアーとそのスケールをどんどん大きくしていった。ただ、その数字を見ているだけではそれがどのくらいすごいのか、正直言ってピンと来なかったようなところはある。規模が大きすぎて実感できなかったのだ。

しかし、1999年7月31日の『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL』では“GLAYがどれほど人気があるか!?”を目視で体感することができた。終演後、バスで都内まで戻ったのだが、ステージに向かって左手、ZOZOマリンスタジアム側の道路を進みながら会場内を眺めると、車窓外の風景から人波が途切れない。会場内に居た時は観客の全体像が掴めなかったが、バスの車内は座席位置も高く、会場全体が見渡せたことで奥行きのでかさも分かった。また、筆者が居たブロックはステージ前だったのだが、その真逆の位置にあった展示ブースまで随分難儀して歩いた記憶もある。距離もそうだが、人が行き交っていて、そうスムーズに進めなかった気がする。今も幕張メッセへ行くと、“あの暑い最中、よく歩いたな”と思うくらいだ。後にも先に一カ所にあれほど人が集まった光景を眼前にしたのはあの時だけだし、当時のGLAYの人気がとにかく規格外だったことを思い出す夏の記憶である。

1997年から1999年において、GLAYは間違いなく日本の音楽シーンの頂点に登り詰めた。GLAYのアルバムから1枚を選ぶとなると、やはりこの時期のものとなろう。5thアルバム『HEAVY GAUGE』(1999年)もかなり興味深い作品ではあるものの、順当に考えれば、ベストアルバム『REVIEW-BEST OF GLAY』から『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL』に至る過程で発表された4th『pure soul』(1998年)が選ばれるのではなかろうか。ホール~スタジアム~ドームとGLAYが自身のコンサートをスケールアップさせてきたのは本作が冠されたツアーであり、『pure soul』が当時のGLAYの大きな推進力であったことは間違いない。本作がGLAYのオリジナルアルバムとして最高売上を記録していることがそれを証明していると思う。
ポップでロックなGLAYらしい作品

改めて聴いてみても、『pure soul』は一アルバム作品としてとてもまとまりがいいことが分かる。オープニングに相応しいM1「YOU MAY DREAM」からアップチューンM2「ビリビリクラッシュメン」につながり、M3「May Fair」でテンポが落ち着くものの、軽快なR&RナンバーM4「SOUL LOVE」、ミディアムバラードM5「出逢ってしまった2人」、シリアストーンだがしっかりとポップなM6「pure soul」と、親しみやすさを損ねないままに展開。そこからキラーチューンM7「誘惑」からM8「COME ON!!」、M9「FRIEDCHICKEN & BEER」とノイジーかつワイルドなサウンドを聴かせつつ、サイケでオルタナなM10「3年後」でロックバンドとしてのポテンシャルをダメ押しし、やはりこれもまた親しみやすくもスケールの大きいM11「I’m in Love」で締め括る。

アナログ盤で言えば、大きく分けてA面がポップサイドでB面がハードサイドといった感じで、ポピュラリティーを兼ね備えたロックバンド、GLAYならではと言える構成である(M7「誘惑」からロックナンバーへと“誘っている”のは偶然であろうが、面白い並びだ)。聞けば、アルバム用に用意されたデモ曲はかなり多かったらしく、そこから収録曲をチョイスすることで1作品としてのシルエットを描きやすかったとも推測できるが、それにしてもおそらくは超多忙だった中、自身の世界観を示したところにGLAYの矜持を垣間見れる。
The Beatlesからの影響

TAKURO(Gu)にとって最大のインフルエンサーであるThe Beatlesへの敬愛を隠していないところも、『pure soul』の注目ポイントであろう。有名なところはM4「SOUL LOVE」とM11「I’m in Love」。M4「SOUL LOVE」のイントロは明らかに「涙の乗車券(Ticket to Ride)」だ。これは今回リリースされた『pure soul Anthology』のDISC 2に収録されたデモ音源を聴くと分かるのだが、デモの段階でもあのイントロはあのままで、最初からこれがやりたかったことがよく分かる。短期間で作曲したナンバーらしく(10分で書き上げたという説もある)、良い意味で勢いのままに作られたことで手癖が出たのであろうか。ギターリフもさることながらドラムのパターンも「涙の乗車券(Ticket to Ride)」を彷彿させるのは微笑ましくも清々しい。M11「I’m in Love」は「愛こそはすべて(All You Need Is Love)」。そこにJohn Lennonの「平和を我等に(Give Peace a Chance)」の加味した感じだろう。ブラスとストリングスは明らかにそれだし、アウトロ近くでゲストコーラスの誰かが「HAPPY BIRTHDAY」を歌っている辺りとかも、正しき「愛こそはすべて(All You Need Is Love)」オマージュという気もする。

そんなふう風に考えると、M1「YOU MAY DREAM」は楽曲そのものはまったく似てないが、そのスケール感やオープニングナンバーらしさは「マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)」、あるいは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band)」からの影響かもしれない(と今思った)。あと、シタール風なギターを聴くことができるM10「3年後」は「ラヴ・ユー・トゥ(Love You To)」ほどインドインドしてないが、TERUの歌に幻想的な深めのディレイがかかっているのと併せてサイケデリックな印象で、これにも少なからずThe Beatlesからの影響はあるだろう。

もっとも称えなければならないのは──これは『pure soul』に限らず、GLAYの特徴と言えるだろうが、そうしたThe Beatlesへの敬愛を示しつつも、The Beatlesフリークがたまに陥るマニアックサイドに堕ちていないところだと思う。それこそ大ヒットシングルでもあるM4「SOUL LOVE」があれだけThe Beatlesエッセンスが注入されているにもかかわらず、今も彼らを語る時、The Beatlesの話でGLAYそのもののバンド像が矮小化されることがないのは、楽曲の主軸が分かりやすくキャッチーなメロディーであるからこそ、であろう。“ポピュラリティ>マニアック”の構図が徹底しつつも、ロックバンドが持っていてしかるべきスタンダードなロックマナーの取り込み具合が絶妙だからこそ、GLAYは大衆からの圧倒的な支持を得たのだろう。改めて『pure soul』を聴いてみてそんなことを思った。
現在にもつながる汎用性の高い歌詞

歌詞は実に汎用性が高い。恋愛の初期衝動をプラトニック方向で綴った内容と、リビドー剥き出し的に書いたリリックが同居し、その2曲が先行シングルとして同時リリースされているのがまず幅広さの証左だ。

《ふいに心を奪った瞬間の あのトキメキよりも眩しい程に/いつか出逢う 夢の中 心のままに/待ちこがれていた あなたをこうして Wow…》《あの日心が触れ合う喜びに 生まれてくる愛にとまどいながら/動き出した2つの影は Wow… 夕映えに長く/さんざめく気持ち おさえきれずにいる hu…》(M4「SOUL LOVE」)。

《時に愛は2人を試してる Because I love you/キワどい視線を振り切って WOW/嘘も真実も駆け引きさえも いらない/今はオマエが誘うままに Oh 溺れてみたい》《KISSから始まる夜は熱く Because I love you/犯した罪さえ愛したい WOW/名前も過去も心でさえも いらない/求め会う2つのカラダがある oh それだけでいい》(M7「誘惑」)。

また、M2「ビリビリクラッシュメン」やM8「COME ON!!」、M9「FRIEDCHICKEN & BEER」のように正直言って意味不明で、それゆえにロックっぽさを醸し出している歌詞がある一方で、それまでロックが扱わなかったような題材をメロディーに乗せているのはGLAYの発明であり、最大のオリジナリティーであったと言える。具体的には以下の部分にそれがあった。

《親(あなた)の言葉も聴こえなくなるほど遠くに来ました/幼い頃の子守歌を手に》《人の優しさに触れた時 なぜか想い出すことがある/初めて独り歩き出した 幼い僕を見つめるその愛》(M6「pure soul」)。

《古びたアルバム 開いた僕は/若かった両親と 今じゃ歳もそう変わらない/昭和という時代に 僕らをかかえて走った/そんな貴女の生きがいが 染みて泣きたくなる》(M11「I’m in Love」)。

今でこそロックにしてもヒップホップにしても、親、家族への情愛を綴ったナンバーは珍しくないが、この頃までは少なくとも男性のロックは反抗を歌うのが主流であったと思う(女性ロックバンドだと、REBECCAの「MOON」とかPRINCESS PRINCESSの「パパ」があった)。GLAYはその壁を破った。最初にアルバム『pure soul』を聴いた時、もっとも印象に残ったのはそこだったし、驚きを隠せなかった記憶があるが、そうした新機軸もGLAYが幅広い世代に支持されていった要因のひとつであったことは間違いないし、それが20万人ライヴにもまったく影響しなかったわけではなかろう。また、GLAYが今もアリーナツアー、大規模ライヴイベントを開催しているのは、シングル「BELOVED」や「HOWEVER」は元より、20年前にM6「pure soul」やM11「I’m in Love」を発表したことと無関係ではないと思う。M11「I’m in Love」は今もコンサートでのシンガロングの定番だ。そんなふうに考えても、やはりアルバム『pure soul』はGLAYにとっての最重要作品と言っても過言ではないのかもしれない。
TEXT:河崎直人
アルバム『pure soul』
1998年発表作品

<収録曲>

1.YOU MAY DREAM

2.ビリビリクラッシュメン

3.May Fair

4.SOUL LOVE

5.出逢ってしまった2人

6.pure soul

7.誘惑

8.COME ON!!

9.FRIEDCHICKEN & BEER

10.3年後

11.I’m in Love


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