ハナレグミ、ツアー中盤の東京公演で見せた心の“ど真ん中”に響くステージ

2018年6月25日 / 20:00

6月21日(木)@マイナビBLITZ赤坂 (okmusic UP's)

6月8日の宇都宮からスタートし、7月21日の大阪城音楽堂まで14公演に渡る『ハナレグミ 2018 ツアー ど真ん中』の5公演目となる東京公演が、マイナビBLITZ赤坂で開催された。梅雨の中休みの曇天だが、駆けつけたファンは皆、笑顔。即日ソールドアウトで満員御礼のフロアーに夏を予感させるボサノヴァが流れて、リラックスしつつも気分を高揚させる。ワンマンライヴは昨年末の東京国際フォーラム以来であり、特段、リリースに伴うツアーでもない今回。今、ハナレグミがどんなテンションでいるのか?そのことを確認するには今回のツアーは外せないと感じたファンが多かったはずだ。そして“ど真ん中”と銘打たれたツアーの真意とは?様々な想いや期待を寄せながら開演を待つ。

BGMが止まりSEが流れるとその曲に乗せクラップが起こり、バンドメンバーのYOSSY(Key)、伊賀 航(Ba)、菅沼雄太(Dr)、石井マサユキ(Gt)が登場、少し間を置いて永積 崇がひと際大きな拍手と歓声で迎えられる。「360°」の演奏を始めたバンドのグルーヴに乗り、開口一番“お待たせしました、ハナレグミです。ちょっとぎゅうぎゅうだけど、ゆっくりやりましょう。世の中早すぎるから、ここはゆっくり楽しみましょう”と挨拶をし、緩やかにライヴはスタート。冒頭からバンドの楽器一音一音の良さに、ほぼこの日の成功を予感してしまった。暖色系のライトがポツリポツリと灯る控えめな照明がステージをリヴィングのように演出し、日常の延長線上で歌い、演奏するような5人を柔らかく照らす。

様々な時期の作品をセレクトしながら、ひとつ軸のある世界観でライヴが進行していくのは、現在のバンドメンバーとのグルーヴが本人たち自身、気持ち良いからだろう。ヴィンテージなギターやピアノ、オルガンなど、楽器そのものの音が鳴っている。隙間の多いアンサンブルと、豊穣だった時代のアメリカンロックの乾いた匂いを想起させるアレンジが、東京の梅雨を忘れさせるようだ。

永積曰く“こんなことでもないと口パクじゃないってわからないでしょ!”という、ちょっとしたハプニングあり、かの名曲をイントロダクションで一節ラップしてオリジナル曲に繋いだり、身ひとつでシンプルこの上ないライヴを彼にしかできないエンタテイメントに膨らませてゆく懐の深さ。ツアー中なので詳述は避けるが、今後ライヴに足を運ぶ人は存分に楽しめるであろうタームだった。

カラッと明るいアメリカンロック的なブロックもあれば、じっくり聴かせる展開も見せる。もっとも長らく演奏されてきたであろう名曲「家族の風景」は、イントロのギターの単音だけで拍手と歓声が起きる。伊賀のアップライトベースから醸し出されるふくよかなロングトーン、星の明滅のような単音、しっかりした足取りのような菅沼のキック&スネア、そしてどこかゴスペルを思わせるYOSSYのオルガンがひとつのうねりを生み出して、体験的なアンサンブルに進化した「家族の風景」が立ち上がった。弾き語りからダビーな音像まで、実にアレンジのしがいのあるこの曲の深みを2018年のバージョンで堪能する幸せを噛み締めた。大きなグルーヴは、続く初期の名曲「音タイム」で、さらに増して、ザ・バンドの全盛期ってこんな感じだったのでは?といった妄想まで広がってしまった。それぐらい、人と人が生楽器で合奏し、呼吸を合わせて歌の世界を届けることの尊さを感じる演奏だった。

再び様々な時期のレパートリーからの選曲で、ハナレグミとともに、さながら音楽の旅をしているような心地になる。アメリカンロックの中でもルーツライクなものから、AORに近い洒脱なナンバーもあれば、スカでステップを踏んだり、フューチャーソウルやファンクで、さらにバンドの力量を堪能する場面も。しかし、そのどれもが必要最低限に削ぎ落とされ、5人のセンスが凝縮されているのが、なんとも心憎い。菅沼のドラムスタイルは時に閉じたハイハットがもっとも重要な役割を果たしていたりと、近年の新世代ジャズに通じる音のバランスが新しい。それはハナレグミの楽曲が究極、永積 崇の歌とギターで成立するからこそ、曲自体が色褪せないせいでもあるのだろう。音数は少なく、圧もない現代的なアレンジが新旧の楽曲をアップデートしている。まだこのメンバーで半分以上、ツアーが続くと思うと、もう何本かこのアンサンブルの心地良さを経験したくて、ライヴを観たくなるほどだ。

今回のひとつのハイライトとなったのが、「深呼吸」を永積がピアノを弾きながら歌った場面だろう。昨年10月にリリースされた最新アルバム「SHINJITERU」収録曲であり、是枝裕和監督の映画『海よりもまだ深く』の主題歌としても知られる楽曲だ。この曲を演奏する前に、永積は是枝監督の『万引き家族』のパルムドール受賞を讃え、自身も先日観たばかりだと話した。“淡々とした営みや、忘れてはいけない人間の重みが描かれていて素敵な作品……宣伝みたいになっちゃった”とジョークを飛ばしながら、是枝監督をして震えるほど感動させたという「深呼吸」を披露したのだ。《おーいおい ぼくがぼくを信じれない時も 君だけはぼくのこと 信じてくれていた》、この歌詞がここまでのライヴの流れや内容と相まって、胸に込み上げるものがあった。孤独、家族、旅。生きていく上で直面したり、自分の意図に関わらず存在するものであったりする様々な事柄や経験。誰もが自分の中で反芻するように静かに聴き入り、心からの拍手を送っていた。

ことさらシリアスになりすぎることはなく、ツアータイトルが示唆するように心の“ど真ん中”に命中するような歌を届けてきたハナレグミ。どんな毎日でもまた元気で会いたいね、そんな思いが「明日天気になれ」で体を揺らし、クラップし、踊るフロアーに現れていたのではないだろうか。

ハナレグミの“ど真ん中”。今、このタイミングでしか味わえない意志と最高の演奏を体験したければ、ぜひ8月7日の新木場Studio Coastでの追加公演に足を運んで観て欲しい。

撮影:田中聖太郎/取材:石角友香
『ハナレグミ 2018 ツアー ど真ん中』
6月08日(金) 栃木 HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2

6月09日(土) 山形・ミュージック昭和セッション

6月13日(水) 京都・磔磔

6月14日(木) 和歌山・SHELTER

6月21日(木) 東京・マイナビBLITZ赤坂

6月28日(木) 福岡・DRUM LOGOS

6月29日(金) 大分・DRUM Be-0

7月01日(日) 宮城・仙台 GIGS

7月04日(水) 静岡・LIVE ROXY SHIZUOKA

7月05日(木) 愛知・名古屋 Zepp Nagoya

7月10日(火) 新潟・LOTS

7月18日(水) 香川・高松MONSTER

7月19日(木) 広島・CLUB QUATTRO

7月21日(土) 大阪・大阪城音楽堂

<チケット>

・6月21日(木)東京公演、7月01日(日)仙台公演

スタンディング¥4,860(税込)

※整理番号付・ドリンク代別・未就学児童入場不可

2階指定席 ¥5,400(税込)

※全席指定・ドリンク代別・未就学児童入場不可

・7月05日(木)名古屋公演

1階前方指定席 ¥5,400(税込)

※全席指定・ドリンク代別・未就学児童入場不可

2階指定席 ¥5,400(税込)

※全席指定・ドリンク代別・未就学児童入場不可

1階後方スタンディング ¥4,860(税込)

 整理番号付・ドリンク代別・未就学児童入場不可

・7月21日(土)大阪公演

指定席 ¥5,940(税込)

※全席指定・小学生以上チケット必要

芝生自由席 ¥5,400(税込)

※整理番号付・小学生以上チケット必要

・その他公演

スタンディング ¥4,860(消費税込)

※整理番号付・ドリンク代別・未就学児童入場不可

※6月09日(土)山形公演のみドリンク代不要
アルバム『SHINJITERU』
2017年10月25日発売

VICL-64847/¥3,000+税

<収録曲>

1.線画

2.ブルーベリーガム

3.君に星が降る

4.深呼吸

5.My California

6.ののちゃん

7.消磁器

8.秘密のランデブー

9.Primal Dancer

10.太陽の月

11.YES YOU YES ME


音楽ニュースMUSIC NEWS

メタル界のレディー・ガガ、アッシュ・コステロ率いるニュー・イヤーズ・デイが新作日本盤を5月にリリース

洋楽2024年3月29日

 ニュー・イヤーズ・デイによるニューアルバム『ハーフ・ブラック・ハート』の日本盤が5月22日に発売されることが決定、リードシングルの日本語字幕ビデオとリジー・ヘイル(ヘイルストーム)による推薦コメントが公開された。  アッシュ・コステロ率い … 続きを読む

クジラ夜の街、本日ラジオ初解禁の「美女と野獣」はストリングスアレンジのバラードナンバーに

J-POP2024年3月29日

 クジラ夜の街が約4か月ぶりとなる新曲「美女と野獣」を4月3日に配信リリースする。  今作のアレンジャー兼サウンドプロデューサーには、Teleのアレンジ・キーボード演奏やロックバンド BRADIOのアレンジ等にも参加している奥野大樹を起用。 … 続きを読む

ボン・ジョヴィ、最新AL『フォーエヴァー』日本盤発売決定 ボートラ2曲収録

洋楽2024年3月29日

 2024年6月7日に発売されるボン・ジョヴィによる4年ぶりのオリジナル・アルバム『フォーエヴァー』の日本盤の発売が決定し、詳細が明らかになった。  国内盤のアルバムはデラックス盤CDと通常盤CDの2形態にて発売される。それぞれに2曲の日本 … 続きを読む

テイラー・スウィフト/SEVENTEEN、2023年のIFPIグローバル・アルバム・チャートを席巻

洋楽2024年3月29日

 テイラー・スウィフトとK-POPが、2023年のグローバル・アルバム・セールスのベンチマークとなったことが、IFPI(国際レコード産業連盟)が発表した新しいデータで明らかになった。  先週発表された「グローバル・ミュージック・レポート20 … 続きを読む

カルヴィン・ハリス、【ウルトラ】でのセットへの“期待以下”というコメントに反応

洋楽2024年3月29日

 現地時間2024年3月24日、カルヴィン・ハリスが、米マイアミで開催された【ウルトラ・ミュージック・フェスティバル】でメイン・ステージのヘッドライナーを務めたが、いくつかの批判的なコメントが寄せられたため、パフォーマンスを擁護した。  米 … 続きを読む

Willfriends

page top