『ショーン・メンデス』ショーン・メンデス(Album Review)

2018年5月25日 / 18:00

 ショーン・メンデス通算3作目のスタジオ・アルバムは、自身の名前をタイトルに冠したことからも、「自信作」であることが伺える。

 前2作も素晴らしかった。2015年リリースのデビュー・アルバム『ハンドリトゥン』は、とても(当時)16歳とは思えない落ち着きが表現された傑作で、3rdシングル「スティッチズ」が全米4位、全英チャートでは初のNo.1を獲得。翌2016年にリリースした2ndアルバム『イルミネイト』も密度の濃い内容で、本作からは「トリート・ユー・ベター」(全米6位/全英6位)と「ホールディン・ミー・バック」(全米6位/全英4位)の2曲がTOP10入りし、アルバムは各国でプラチナ認定される大ヒットを記録した。

 本作からも、「トリ―ト・ユー・ベター」を手掛けたスコット・ハリスとテディ・ガイガーが制作した1stシングル「イン・マイ・ブラッド」が、UKやカナダなどでTOP10入りし、高い評価を得ている。アコースティック・ギターのイントロから壮大なサビに繋げる、ショーンらしいナンバーで、突き抜けるような高音と、甘く語り口調のような低音の高低差あるボーカルが、曲のもち味をうまく引き出した。

 「イン・マイ・ブラッド」と同時にリリースされた「ロスト・イン・ジャパン」は、ファレル・ウィリアムス~ジャスティン・ティンバーレイク直結のファンク・ポップ。本来は声の“張り”を売りにできるタイプだが、この曲では良い意味で終始力の抜けたボーカルを聴かせる。プロデュースは、カミラ・カベロの「ハヴァナ」やカイゴ&セレーナ・ゴメスの「イット・エイント・ミー」を大ヒットさせたルイス・ベル。タイトルからもお分かりの通り、日本について歌われた、遠距離恋愛がテーマのラブ・ソングだ。この曲のノリに近いのが、ワンリパブリックのライアン・テダーが制作した「パティキュラー・テイスト」。ループするフックではラップみたいな歌い回しも飛び出し、ショーンの新たな一面が垣間見える。

 ロードやカリードのデビュー・アルバムを担当した、ニュージーランドのソングライター=ジョエル・リトルがプロデュースした3rdシングル「ユース」も、独創的で良い曲。そのカリードがデュエット・パートナーを務めているだけはあり、オルタナティヴR&Bとアコースティック・ポップが見事にブレンドされた、ネオ・ソウル風のナンバーに仕上がっている。本作収録の「ホエア・ワー・ユー・イン・ザ・モーニング?」も、ファルセットの歌い方と横ノリのオーガニック・サウンドが、ネオ・ソウルっぽい。

 ジャスティン・ビーバーの「ソーリー」(2015年)のソングライターとして注目され、昨年リリースしたソロ・デビュー曲「イシューズ」も大ヒットさせた女性シンガー・ソングライターのジュリア・マイケルズは、2曲を提供。アルバムのリリース直前に配信された「ナーヴァス」は、ショーンがインタビューでも答えているように、故プリンスを彷彿させるファンク・チューン。ジュリア自身がフィーチャリング・アーティストとして参加した「ライク・トゥ・ビー・ユー」は、大自然が目に浮かぶようなカントリー&ウェスタンで、どちらもこれまでのジュリアっぽくない、ショーンに寄せていった感じの傑作だ。

 エド・シーランとジョニー・マクデイドが共作した「フォーリン・オール・イン・ユー」は、まさに“エド節”炸裂のノスタルジックでブルージーな、温もりあるミディアム・ソング。「ビコーズ・アイ・ハド・ユー 」も同調の心に響く良い曲だ。その他にも、言葉ひとつひとつを丁寧に歌う、繊細なバラード曲「ホワイ 」や、ピアノとアコースティック・ギターで仕上げたマイナー調のメロウ「パーフェクトリー・ロング」など、ミディアム~メロウが充実している。声を張り上げていないのに、もの凄い説得力があるショーンのボーカル・ワークも見事。

 イアン・カークパトリック(ジャスティン・ビーバー、ブリトニー・スピアーズなど)が制作した「ミューチュアル」や、ライブで披露したら会場から手拍子が湧き上がりそうな「クイーン」など、初期の作品に近いポップ・チューンも間に挟みながら、アルバムは米ブルックリン出身の女性シンガー・ソングライター=エイミー・アレンが手掛けた、ラストを飾るに相応しい「ホエン・ユア・レディ」で幕を閉じる。

 前2作と違うのは、アンビエント的要素が含まれていること。リスナーを無視したというワケではなく、「ヒットさせなきゃ」という圧みたいなものが感じない、という意味で。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
アルバム『ショーン・メンデス』 
デジタル配信、輸入盤:2018/5/25 RELEASE
日本盤CD:2018/5/30 RELEASE
<初回生産限定スペシャル・プライス盤>
UICL-9116 2,200円(plus tax)


音楽ニュースMUSIC NEWS

故エイミー・ワインハウス、伝記映画『Back To Black』サントラの詳細が発表

洋楽2024年3月29日

 故エイミー・ワインハウスの半生を描いたサム・テイラー=ジョンソン監督による新作映画『Back To Black』のサントラ『Back To Black: Songs from the Original Motion Picture』の詳細 … 続きを読む

とんねるず、29年ぶりのライブ開催 11月武道館公演決定

J-POP2024年3月29日

 11月8日、9日の2日間【とんねるず THE LIVE】が、東京・日本武道館で開催されることが決定した。  2018年にバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終了し、惜しむ声や2人の姿を見たいという声も上がるなか、2人のラ … 続きを読む

いきものがかり、3/28『三ツ矢の日』に配信イベント【カンパイトーク&ライブ】に登場

J-POP2024年3月29日

 新曲「青のなかで」をリリースした、いきものがかりがリリース日の3月28日『三ツ矢の日』に【一緒なら、もっと楽しいLIVE配信イベント『三ツ矢の日×いきものがかり カンパイトーク&ライブ』】に出演した。  3月28日は、『三ツ矢サイダー』の … 続きを読む

ジム・ジャームッシュ&カーター・ローガンによるスクワール、マン・レイの映画作品を探求したプロジェクトをリリースへ

洋楽2024年3月29日

 ジム・ジャームッシュとカーター・ローガンによるユニット、スクワールが、ダダイストのパイオニア、マン・レイの映画作品を音で探求し、音楽と映画を融合させた魅惑的なプロジェクト『ミュージック・フォー・マン・レイ』を2024年5月22日にリリース … 続きを読む

のん【NON PURSUE TOUR -最強なんだ!!!-】が5月に映像化

J-POP2024年3月28日

 2023年7月9日に東京・Zepp Hanedaで開催された【NON PURSUE TOUR -最強なんだ!!!-】を収録したBlu-ray『PURSUE TOUR – 最強なんだ!!! -』が、2024年5月1日に発売される … 続きを読む

Willfriends

page top