ベルチャQとアンデルシェフスキのショスタコーヴィチ 世代を代表する奏者たちの共演(Album Review)

2018年5月23日 / 22:00

 1994年、ロンドン王立音楽院の留学生だったルーマニアのコリーナ・ベルチャとポーランドのクシシュトフ・ホジェルスキーを中心に結成されたベルチャ四重奏団は、1999年に大阪とボルドーのメジャーコンクールを相次いで制覇、2001年に放ったデビュー盤は斯界の注目を集め、その後も順調なキャリアを積み上げてきた。残念なことに来日公演こそ絶えてないが、本拠地ロンドンはもちろんのこと、欧州で抜群の人気と実力を誇る、新世代カルテットの先頭を走るスゴ腕集団だ。

 そんな彼らがショスタコーヴィチの室内楽曲の中でもとびきり有名なピアノ五重奏曲の相方に選んだのは、なんとアンデルシェフスキ。アンデルシェフスキの室内楽録音といえば、まだ世紀をまたぐまえの、ヴァイオリニストの姉やムローヴァとの盤がある程度なのだから、この組み合わせそのものからして、大変な驚きだ。

 ほぼ三部形式の第1楽章「前奏曲」は、抜けよい透明感あるピアノの和音が印象的な、悲劇的色彩も帯びる主題を提示するソロから始まる。そこに弦楽四重奏がトゥッティで加わってくるのだが、もうこの時点からして、奏者たちの巧さが尋常ではなく鳥肌モノ。各成員の音量バランスと呼吸の合わせ方、間合いと、いずれも絶妙、ピアノも弦も、誰の音色にも一切の曇りなく、徹底してクリアに艶やかに立ち上がる音像には実体感もある。ここもピアノが主題を爪弾き、ヴィオラが対旋律をつけるポコ・ピウ・モッソの中間部では、そこはかとない憂いの表情を刻みつける。

 第1楽章からアタッカで入る第2楽章「フーガ」は、技巧的粋を凝らして作られた堅牢な構造体である以上に、多分に変奏曲の要素を持つ楽章で、ベルチャQとアンデルシェフスキはその推移と変化を克明に刻みつけている。第3楽章「スケルツォ」は、いかにもベルチャQらしい、非常にダイナミックな演奏になっており、静謐感湛えたフーガとの鋭いコントラストをなしている。淀みない音楽はこれ以上ないくらい律動的で、エネルギーに漲っている。

 その熱を冷まそうとするかのような第4楽章「間奏曲」の伸びやかな抒情性から、これもアタッカで繋がれる第5楽章フィナーレは、メロディアスな主題を軸に先行楽章の回想などを挟みながら進む。ベルチャQとアンデルシェフスキはそれぞれのパッセージ、モチーフ、主題群に精緻な色づけを行って、ショスタコーヴィチにしては珍しく、あちこちに咲き誇る歌の織り成す世界をヴィヴィッドに現出させることに成功している。

 カップリングはこれまた名曲、弦楽四重奏曲第3番(1946)。第1楽章はおどけた陽気な表情づけが微笑ましいが、以後作品は悲劇と悲しみの色合いを増してゆく。ベルチャQはこの曲にも集中力高く取り組み、隅々まで目線を配らせている。第3楽章のヒステリックな切迫感など、エッジの効いたベルチャQの面目躍如たるものだ。第4楽章パッサカリアの暗鬱さ、第5楽章の内省的な造形と、実に隙がない。Text:川田朔也


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