エンターテインメント・ウェブマガジン
年明けから始まった全22箇所の全国ツアー。ナカムラリョウ(Gu&Synthesizer)が入った新体制お披露目ツアーであり、あとは毎回セットリストにテーマを掲げ、時にはヘンテコなキャラ設定で爆笑を生むツアーでもあったけれど、結局これは最新アルバム『That’s Fantastic!』のリリース・ツアーなのだと改めて感じるファイナルだった。テーマは‟We are New POLYSICS!!!!”。当然、ニューアルバム収録曲がメインである。
オープニングSE兼一曲目となる「That’s Fantastic!」では、ヤノ、フミ、ナカムラがまず演奏を始め、歌の入るタイミングでハンドマイクのハヤシが登場。音のことはメンバーに任せきり、自ら率先してフロアを煽っていく‟いかもフロントマン”なスタイルが、このツアーですっかり定着している。ナカムラにも緊張の様子はなく、ヤノとフミの牽引力に自然と歩調を合わせている。もっとも‟自然”というには、凄まじい音量と下腹をえぐってくる音圧がハンパないのだけど、この爆音の快感こそポリシックスだ。
アルバムの曲順どおりに進む3曲目の「Cock-A-Doodle-Doo」。ニワトリの謎について歌うナンセンスな曲で、タイトルを連呼しながらクチバシの形にした両手を千手観音のごとくに動かしているハヤシに笑ってしまったが、ふと気づいたのは、この曲は速い、ということだった。そもそもポリの曲は‟性急・ハイテンション・姦しい”の条件が揃ってナンボみたいなところがあるが、新曲群はその第一条件からあっさり解放されている。もうトシだから高速ビートが無理みたいな話では全然なくて、性急であらねばならない、の思い込みから自由になっている感じだ。ゆったり踊れるファンキー&キュートな「ルンバルンバ」、音数を下げることで空間を意識させ、同時にヤノやフミの存在がより際立って聴こえる「Pretty UMA」「Shut Up Baby」なども然り。3人から4人になることで、どれだけ余裕が生まれ自由が増えるのか。そんなことを改めて感じさせる。もちろん、どの曲も‟ハイテンション・姦しい・ポリらしい”という条件からはまったく外れてはいない。そういう新曲たちに挟まれて披露された「MEGA OVER DRIVE」には、旧体制との違いが如実に感じられた。シンセサイザーがメイン、以前はギターレスで完成していた凶暴なダンスミュージックなのだが、ここにナカムラのギターが加わることでハードコアな迫力が倍増。凄まじい破壊力に全身の血が沸騰する。当初からハードな曲ではあったけれど、ここまでブチ上がる曲だったか? と怯んでしまうほどだ。
後半のMCで今回のツアーに触れ、たとえば仙台ではマシンのトラブルで20分くらい演奏ができなかった、その間フミがひたすらトークで繋いだ、などのエピソードを明かすハヤシ。‟テクノバンドだからね”と語りつつ、‟なきゃないで、何とかするけど”と笑うところにライブバンドの矜持を見る。シーケンスのピコピコ音がなければポリの魅力は半減するだろうが、それがなくても十分に観客を圧倒できるテクニックがありプライドもある。バラードはもちろん、箸休めになるような遊びの曲は皆無。とにかくハイテンションで姦しく、意味不明ながら爆笑できる面白さの詰まった曲ばかり。それを20年というのは正気の沙汰ではないが、まさに正気の本気でやり続けてきたのがハヤシヒロユキなのだ。そこにフミが、次にヤノが巻き込まれ、今ではナカムラもがっちり加わった。そういう歴史が、まったく感動とは無縁の爆音になっているのが最高だ。
後半は鉄板ナンバーのオンパレード。本日初のモッシュピットとクラウドサーファーが勃発した「SUN ELECTRIC」や、代表曲と言いたいほどの盛り上がりを見せる「シーラカンス イズ アンドロイド」。名曲「Buggie Technica」に、4人全員が両腕をクロスするポーズから始まるラストの「URGE ON!!」など。メンバーの温度にまったくズレはない。ギターソロでガンガン前に出ていくかと思えば、シンセの前で暴れまくっているナカムラを見ながら、‟今から4人になるって? マジで?”と驚いていた2017年10月が嘘みたいだなぁと考えていた。
2017年の3月4日からスタートした20周年アニバーサリー・イヤー。祝福すべき一年が終わってしまうことを惜しむ様子もなく、‟明後日の12時には21周年目になる”、そして‟新体制になって、まためちゃくちゃ新しい曲が書きたくなってる”と、未来について頼もしい展望を語ったハヤシ。そうこなくっちゃ。これからも楽しませてくれよ。そんな笑顔が汗まみれのリキッドルームには溢れ返っていたのだった。
Photo by 緒車寿一
Text by 石井恵梨子
【セットリスト】
1. That’s Fantastic!
2. Crazy My Bone
3. Cock-A-Doodle-Doo
4. ルンバルンバ
5. Sea Foo
6. Tune Up!
7. Pretty UMA
8. Beat Flash
9. MEGA OVER DRIVE
10. How are you?
11. Digital Coffee
12. Boy’s Head
13. 発見動物探検隊
14. United
15. Shut Up Baby
16. You Talk Too Much
17. SUN ELECTRIC
18. MAD MAC
19. シーラカンス イズ アンドロイド
20. Shout Aloud!
21. Hot Stuff
22. Buggie Technica
23. URGE ON!!
<ENCORE>
1. PLUS CHICKER
2. Modern
3. カジャカジャグー
洋楽2024年4月19日
2024年4月24日に発売される故ドナ・サマーの日本限定ベスト盤『ドナ・サマー・ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』に収録されている3曲「I Feel Love」「She Works Hard For The … 続きを読む
J-POP2024年4月18日
NEXZが、ダンスパフォーマンスビデオ『NEXZ Archive | J-HO Choreography | Tambourine – Eve』を公開した。 ソニーミュージックとJYPによる日韓合同オーディション・プロジェク … 続きを読む
J-POP2024年4月18日
私立恵比寿中学が、2024年7月3日に同1月6日~7日に開催した【私立恵比寿中学 新春大学芸会2024~高く飛ぶ竜と僕らのその先~】のライブ映像を発売することが決定した。 DAY1のパフォーマンスに加え、本作の初回生産限定盤には、DAY … 続きを読む
J-POP2024年4月18日
Crossfaithが、新体制初となる新作アルバム『AЯK』を2024年6月26日にリリースすることを明らかにし、併せて【Crossfaith AЯK Japan Tour 2024】の開催を発表した。 『AЯK』は、『EX_MACHI … 続きを読む
J-POP2024年4月18日
&TEAMが、2024年5月8日にリリースとなる1stシングル『五月雨 (Samidare)』のコンセプトフォト44点を公開した。 ソロカットでは、舞い落ちる桜色の花びら、雨粒の残る車窓からどこか遠くを見ている9人それぞれの新鮮 … 続きを読む