70年代初頭、ロックギタリストとして不動の地位を築いたロリー・ギャラガーの名盤『タトゥー』

2018年1月12日 / 18:00

アイルランド初のロックスターとして、また記録よりも記憶に残る名ギタリストとして知られるロリー・ギャラガー。彼の音楽はブルースを基盤としながらも、ブリティッシュトラッドやカントリーまで多彩な音楽性を持っているのが特徴だ。熱いギタープレイのみで語られることが多いが、彼は何よりもソングライティングのセンスが抜群であった。95年に47歳という若さで亡くなってからは話題に上ることも少なくなっているが、今回紹介する彼の代表作のひとつ『タトゥー』は、パッションあふれるギターと数々の名曲が収録された名作であり、ロックファンなら聴いておくべき作品だろう。
ハードロックの萌芽となるテイスト結成

1960年代の半ば、ロリー・ギャラガーはブルースやR&Bスタイルの曲をハードに演奏するスリーピースバンドのテイストを結成する。彼の素晴らしいギターワークはパブやクラブでオーディエンスの注目を集め、レコードデビュー前にもかかわらず地元アイルランドやイギリスで、ちょっとは知られたアーティストになっていた。

噂を聞きつけたクリームのマネージャー、ロバート・スティグウッドはテイストを第2のクリームに育てようと、68年に行なわれたクリームの解散コンサートの前座に抜擢する。この時の演奏でより多くの人に注目され、テイストはポリドールレコードと契約し、翌69年にはデビューアルバム『テイスト』でメジャーデビューする。

テイストはザ・フーやブラック・サバスを思わせるようなハードなスタイルで、まさに熱いロックを展開していた。当時のブリティッシュロック界はフリートウッド・マックやサヴォイ・ブラウンなど、地味でマニアックなブルースバンドが多かったが、テイストはよりロック的なサウンドが持ち味で、ギャラガーのギターを全面的にフィーチャーしており、最初期のハードロックと言っても過言ではないぐらいの音圧であった。この『テイスト』は良い作品であることは確かだが、まだまとまりに欠けるところと良い曲が少ないのが残念だ。

それを克服したのが2ndアルバムの『オン・ザ・ボーズ』(‘70)。このアルバムは全曲ギャラガーのオリジナルで占められ、ギタープレイはブルースをベースにジャズ的なインプロヴィゼーションを展開するなど(ここでギャラガーはフリージャズっぽいサックスソロも披露している)、ギャラガーの才能が開花したテイストを代表する作品である。
テイストを解散し、ソロ活動へ

その後もテイストは『オン・ザ・ボーズ』が全英チャートで18位になるなど、順風満帆な活動をしているかに見えたが、メンバー間の軋轢やツアーの疲れなどからあっけなく解散。テイスト名義のアルバムは、解散後に『ライヴ・テイスト』(‘71)と『ワイト島のテイスト』(’72)の2枚のライヴ盤がリリースされている。これらのライヴ盤は荒削りではあるがギャラガーのロックアーティストとしての魅力が詰まった秀作となっている。

しばらくの充電期間後、新しいメンバーと活動を始め(テイストと同じくトリオ編成)、以降はソロアーティストとして活動していく。そして71年、待望の1stソロアルバム『ロリー・ギャラガー』をリリース。テイストの『オン・ザ・ボーズ』を発展させたような、彼の多彩な音楽性を披露する作品となった。テイストのハードロック的エッセンスは後退し、その代わりにトラッド的なものやカントリーブルース的なナンバーを新たに取り入れている。

また、一部ではピアノを加えるなど、このアルバムは彼の新しい一面が表現された佳作となった。ギタープレイはもちろん、特にソングライティングは冴え渡っており、テイスト時代と比べると一気に良い曲が増えている。もちろん収録曲は全曲ギャラガーの作詞作曲である。一部ではデュアン・オールマンを手本にしたギタープレイもあり、彼の貪欲さが見てとれる。
クラプトンを超えた?  ロリー・ギャラガーのギタープレイ

同年、2ndアルバム『デュース』をリリース。このアルバムは前作よりもライヴ感を大切にした作りで、個人的には前作のほうが好きだが、やはりソングライティングの面では冴えている。

続いてリリースされたライヴ盤『ライヴ・イン・ヨーロッパ』(‘72)はセールス的にも大成功し、彼のアルバムがギャラガーの最初で最後のトップテンヒットとなった。このライヴ盤、ギャラガーの魅力はライヴでないと味わえないと思わせるほどの充実した内容だ。シカゴブルースをベースにしたハードなロックを中心に据えてはいるが、カントリーブルースにもスポットを当てるなど、楽しそうに演奏している様子が聴いてる側にも伝わってくる。特にフラットマンドリンをかき鳴らしながら歌う「ゴーイング・トゥ・マイ・ホームタウン」は名演!

このアルバムをリリースした後、「メロディ・メーカー」誌のギタリストの人気投票でギャラガーは1位を獲得している。この時の2位はエリック・クラプトン、3位がテン・イヤーズ・アフターの早弾きアルヴィン・リーで、当時のギャラガーのギタリストとしての人気がよく分かる。
キーボードを加えた 第2期ロリー・ギャラガー

『ライヴ・イン・ヨーロッパ』の成功で精神的に余裕が出たのかもしれない。ここからギャラガーの黄金時代がスタートするのである。次にリリースした『ブループリント』(‘73)はドラマーをウィルガー・キャンベルからロッド・ディアスに代え、新たにキーボードプレーヤーのルー・マーティンを加えた布陣によるもので、このソロ第2期がギャラガーの絶頂期である。

『ブループリント』のサウンドはこれまでになく泥臭く、どちらかと言えばスワンプロックのテイストに近いのだが、おそらく多くのブリティッシュロッカーがそうであったように、ギャラガーもまたデレク&ドミノスやデラニー&ボニーといったアメリカ南部のグループに影響を受けていたのだろうと思う。日本のロックシーンも含めて、70年代初期はスワンプロックの全盛期であった。このアルバムには彼の代表曲となる「Walk On Hot Coals」や「Daughter Of The Everglades」が収録され、彼のソングライティングの巧みさが開花する時期でもあった。
本作『タトゥー』について

そして、『ブループリント』と同じ73年にリリースされたのがロリー・ギャラガーの最高傑作『タトゥー』である。前作同様、第2期メンバーでの録音だ。ソロとして5作目となる本作は名曲「タトゥーの女」から始まる。この曲はデレク&ドミノスの「レイラ」にインスパイアされたナンバーで、ギタープレイもクラプトンに似ているのだが、それでも格別に素晴らしい仕上がりだ。

他にも彼が得意とするブルースロックはもちろん数多く収められているし、彼のソングライティグが光るジャジーな「They Don’t Make Them Like You Anymore」や、彼にしては珍しくハーモニックス奏法を使ったドラマチックなマイナーバラードの「A Million Miles Away」、アルバムの最後を飾る「Admit It」ではシュギー・オーティスを思わせるファンキーなナンバーなど、ギャラガーの才能が噴出した名曲&名演が詰まった作品になっている。

本作がリリースされた73年、日本でもギャラガーの人気は高く、多くのロック少年は彼が弾くストラトキャスターに憧れ、ストラトタイプの和製ギターが大いに売れた。そして、翌年には日本公演も実現するのだが、彼の絶頂期はここまでだったと思う。
ハードロックへと変貌

その後、『ライヴ・イン・アイルランド』(‘74)をリリースし、レコード会社を移籍、テイストの初期に戻ったかのようなハードロック作品『アゲンスト・ザ・グレイン』(’75)、『コーリング・カード』(‘76)などの佳作をリリースするものの、『ブループリント』や『タトゥー』のような完成度には及ばなかった。また、時代はすでにパンクの波にもまれようとしており、ストレートでロック界の王道を突き進むギャラガーのようなロッカーは徐々に忘れられていくのである。

もし、ロリー・ギャラガーを聴いたことがないのであれば、彼の黄金期が収録された『ライヴ・イン・ヨーロッパ』『ブループリント』『タトゥー』のどれでもいいから聴いてみてください。きっと新しい発見があると思うよ♪
TEXT:河崎直人
アルバム『Tattoo』
1973年発表作品


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