問答無用でフルチャージできる宝塚の特効薬5選

2018年1月8日 / 18:00

ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲 (okmusic UP's)

「梅は咲いたか 桜はまだかいな」と端歌にもありますが、俗曲師の桧山うめ吉さん曰く、この歌に出てくる花はすべて女性の暗喩だそうです。うめ吉さんも出演された元日の末廣亭、本当に楽しかったです。桂歌丸師匠の休演を知った時は出入口で30分ほど立ち尽くしてしまいましたが、春風亭昇太師匠の化け物じみた「時そば」、自虐とメタ要素たっぷりの桂文治師匠の「掛取万歳」に抱腹絶倒でした。それはさておき、いよいよドラマ『越路吹雪物語』がスタートしました。宝塚歌劇団出身の伝説のスターを描く同作に、退団後もひときわ輝くOGの方々も登場されます。今回はヅカのヅの字も知らない自分に架空の友人が教えてくれた劇中歌の中から、一聴すれば歌詞もメロディーも完璧に覚えられるキラーチューンをご紹介しますので、みなさんこれで正月休み明けの鬱を蜂の巣にしてください。
「PARADISO」(’12)/真矢みき

『ダンディズム!』を初めて観た時は「なんだこのグラマラスで夜の匂いがする軽薄な男は」と驚愕したものですが、その人こそ今や『ビビット』で朝の顔となった真矢ミキ様でした。ハスキーで鼻にかかった甘い声に、挑発的かつ華美な所作で、リアリティーを多分にはらんだ男性像を実体化し、“異端児”と呼ばれた真矢様。松本隆作詞、南佳孝歌唱・作曲のこの曲のカバーも、我が物とばかりに蠱惑的に歌いこなします。コールドファンクを纏ったビートロックの骨格はそのままなのですが、ハードボイルドで乾いた肌触りの原曲のヴォーカルとは打って変わり、もったいぶった歌声と斜に構えた眼差しが、滲んでぼやけたネオンのように濡れそぼった色香が艶かしく光ります。
「TAKARAZUKA・オーレ!」(’11) /天海祐希

10年に1人の逸材と称された天海祐希様。小芝居が生み出すオフビートの笑いとヅカらしからぬエネルギッシュさに満ちた『TAKARAZUKA・オーレ!』でも、寸分の狂いもなく完全に音と同化したダンスにどこにいても何をしても輝いてしまう業と表裏一体のオーラに目が眩みます。そんなショーと同タイトルのこの曲ですが、ブラジリアンなリズムに《オーレ!オーレ!オーレ!タカラヅカ・オーレ!》という歌詞がこれでもかこれでもかと乗せられ、拍手と手拍子以外お断り劇場で上演するのが惜しいほどのダンサブルでパッションにあふれています。なお、歌詞の6割が《オーレ!オーレ!オーレ!タカラヅカ・オーレ!》という構成ですので、朝うっかり聴いたら1日中脳内再生される呪いにかかります。
「ニコライとプガチョフ」(’11)/真琴つばさ&紫吹淳

昨年末の『ガキ使』で切れ味鋭いダンスを披露した紫吹淳様。『黒い瞳』というロシアを舞台にした作品では、革命家のプガチョフを演じました。貧困に喘ぐ農民を率いて反乱を起こさんとするプガチョフ、彼が間違っていると分っていながらも惹かれる真琴つばさ様の演じるニコライの掛け合いの醸し出すブロマンスの緊張感には、息をすることすらためらわれます。《燃える火は風を受け明日さえ燃やしてしまう》と自らの末路を悟ったようなプガチョフの豊かな低音と静謐なオーボエから始まり、ロシア民謡をベースにした強靭なリズムとメロディーに重厚に連なる弦楽器が2人の男の逃れようのない運命を物語り、観客を風雪が舞い、どこまでも寒色の凍てつく大地に引きずり込みます。
「レインボー・シャワー」(’17)/剣幸、涼風真世

この季節に雨に見舞われたらいとも容易く冬季うつが増幅されますが、純白のオーラで客席全員を包み込むような剣幸様の包容力と涼風真世様の地響きすら引き起こす歌声があれば、氷点下の土砂降りの中でも鼻歌交じりでスキップできます。弾むようなビッグバンドの高揚感を背負い、かたや春の陽だまりのようなキャパシティー、かたや劇場の天井をも貫く躍動感と立体感と、異なる魅力で空気がはらむプリズムを照らし出す2トップの贅沢な歌唱もさることながら、間奏部分のダンスパートではエスニックなフュージョンも奏でられたりして、五感をフル活用するだけではとても足りないのです。iTunesで配信中のアルバムには収録されていないのがつくづく残念です。
「ロック蒲田 (Song of the Vagabonds)」(’10)/宙組

男役スターが演じるのは、清廉潔白で品行方正で眉目秀麗な二枚目ばかりではありません。『蒲田行進曲』をベースとした『銀ちゃんの恋』は、がらっぱちな昭和の男が舞台を占拠する異色作。ベースとドラムがタイトに刻む16ビートをバックにギュインギュイン旋回するメタリックなギターにロックアレンジと“コーラスの宙”との異名をとる宙組の流麗で爽快なコーラスとのマリアージュ、そしてジェンヌ全員がいわゆるヅカ式のお辞儀ではなく、それぞれの役に入ったまま思い思いに礼をする天衣無縫なフィナーレが胸を熱くさせます。銀ちゃん役の大空祐飛様、専務の悠未ひろ様、トメ役の風莉じん様。ああ、リアルタイムで鑑賞して、心の中で北翔海莉様と一緒に「銀ちゃん、日本一!」って叫びたかった!
TEXT:町田ノイズ


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