BURGER NUDS/ART-SCHOOL/カフカ、それぞれの音と心が交錯した【Pure vol.1】

2017年11月24日 / 20:15

 未来とはやはりわからないもので、ときに誰も想像しなかったことが起こり得る。2017年11月19日に東京・新代田FEVERで開催された【Pure vol.1】もその一つ。主催者であるBURGER NUDSに加え、2000年代初頭のインディ・ロックシーンを共に支えたART-SCHOOL、前身バンド名をBURGER NUDSのデビューミニアルバムのタイトルと同じ「LOWNAME」にしていたカフカ――この3組の共演が実現したのである。

 2014年に再結成、今年は特に精力的な活動を繰り広げているBURGER NUDS。6月には14年ぶり2枚目のオリジナルアルバム『Act 2 或いは Act 3』をリリースし、それに伴うツアーも開催した(ライブレポート:http://bit.ly/2ARWU92)。このとき門田匡陽(vo,g)は、今回の自主企画について「すげえいいタイトルだと思います」と語っていたが、終わってみて納得した。確かに純粋で、澄んだ、きれいな音と心の交錯する一夜となったのだ。

【カフカ】「再結成っていう奇跡みたいなことが起きて、俺はそれに救われた人間」

 ソールドアウトとなった会場に大勢のオーディエンスが詰め掛ける中、まずはカフカが定番SEであるスマッシング・パンプキンズ「Tonight,Tonight」で登場。そして「BURGER NUDS、呼んでくれてありがとう」というカネココウタ(vo,g)の一声から、昨年リリースの最新アルバムで、バンド史上初めて恋愛をテーマにした『あいなきせかい』より、生活に寄り添った歌詞とポップなギターサウンドで夏の別れを表現した「Ice Candy」を披露。切なくも爽やかなナンバーでイベントの幕開けを飾ってみせた。

 カフカのBURGER NUDSに対する思いは非常に強い。冒頭3曲を演奏し終えたカネコは「再結成っていう奇跡みたいなことが起きて、俺はそれに救われた人間だし、今日みたいな日が来るとは思っていませんでした」と語ったが、特に初期はその影響が顕著だった。ただ数年前からはエレクトロサウンドも導入するようになり、そのころ発表された「彼女は海で」の演奏後には、門田に初めて挨拶したときのことを振り返る。「俺にとっては神様みたいな人だから『好きです』って言うしかなかったんです。でも、そのときに『今のこのシーンなんてぶっ壊そうぜ』って言ってくれて、俺はすごい勇気が出たし、今日までやってこれたので、だから門田さん、ありがとうございます」

 解散を考えたこともあった。昨年はフジイダイシ(dr)が視神経炎発症に見舞われた。それでも今年は4人揃って初の全国ワンマンツアーを敢行。来年からはKFK(ケーエフケー)として活動していくこと、そして1月には新名義のミニアルバム『ラブソングフォーディストピアシティトーキョー』をリリースすることを発表している。改名についてのコメントには「好きなものを好きなだけ持ち込める場所」とあるが、この精神もBURGER NUDSに通ずるものがあり、カネコのMCにも深く頷けるわけである。

 それほど大好きな先輩に呼ばれたこの日、後半には今年7月に配信リリースしたニュー・ウェイヴ調の「雨」、四つ打ちのドラムが映えるダンスミュージック「Night Circus」を披露。ヨシミナオヤ(b)とミウラウチュウ(g)もグルーヴに乗ってバンドの進化を見せつけると、最後に「色んなことがあって汚れていくと思うんだけど、俺はその心がすごくいいと思うし、自分もその汚れた心を持って生きてるし、その汚れた心を持って生きてるあなたにすごく救われてるし、そのままでいいよって思ってます」と、その気持ちを詰め込んだバラード「あいなきせかい」を丁寧に歌い上げた。

【ART-SCHOOL】「“ART-SCHOOL派”か“BURGER NUDS派”に分かれることが多かった」

 続くART-SCHOOLは、こちらも定番SEであるエイフェックス・ツイン「Girl/Boy Song」が鳴り響く中、くるくると回る放射状のライトを受けながら姿を現した。シンプルな低音から激情的な展開をみせる「シャーロット」から始まり、鬱屈たる初期の名曲群に、戸高賢史(g)加入後の「Ghost of a beautiful view」を加えた5曲を立て続けに演奏。翳りと煌きの錯綜する世界を築き上げていく。

 2000年代初頭、BURGER NUDSとは決して親しいわけではなかった。戸高曰く、ファンも「“ART-SCHOOL派”か“BURGER NUDS派”に分かれることが多かった」らしい。木下理樹(vo,g)は「そう?」と気の抜けた返事を漏らしたが、「あなたが一番ギラついてたでしょ。あれはもう、下北沢の闇王子」と突っ込まれると、苦笑しながら「いや、最近、俺はもう明るくなりたいなあと思って、“明るくなる”っていう本を読んでるんですよ」。かつての闇王子による「明るくなりたい発言」にはいつも笑ってしまうが、時代が変わればこうして笑えるようにもなるらしい。素敵なことである。

 なお、カフカに対しては、戸高が「別にART-SCHOOLになんか影響は受けてねえよ、みたいなアティチュードも嫌いじゃないですよ」と触れる場面があったが、もちろんこれは大げさな表現であり、先ほどカネコは「ART-SCHOOLもすごく好きです」と話している。木下はそんなカフカとBURGER NUDSを「いいですよね」と褒めつつ、「こっからは、あの、激しいんで……激しく……」と切り出すも、結局は「色々経てきたわりにお客さんの心掴むの下手だし。まあ、2000年代初頭のようなセットリストになってます」と戸高がまとめ、疾走感溢れる人気曲「エイジ オブ イノセンス」へとなだれ込んだ。

 今年1月にB SIDES BEST『Cemetery Gates』をリリースし、それに伴うツアーを開催(ライブレポート:http://bit.ly/2zOb36N)。7月には突如、配信シングル『スカートの色は青』を発表し、10月にワンマンライブ、来る12月にも2週連続ワンマンライブが控えているなど、彼らは這い蹲りながらも常に前に進んでいる。その中心である木下は、最後に「バーガー、なついなあ……楽しみだよ。今日はどうもありがとう」と呟き、喪失と絶望のキラーチューン「FADE TO BLACK」を熱唱。変わらないようで変わった、変わったようで変わらないバンドの姿をまざまざと見せつけた。

【BURGER NUDS】「友だちが少ないバンドなので、カフカとART-SCHOOLには本当に感謝してます」

 言うまでもなく締めはBURGER NUDSだが、先に登場した2組とは打って変わり、サウンドチェックからの板付きという少々変わった方法でパフォーマンスはスタート。暗闇から少しずつ明るくなっていく中で、まずは最新アルバム『Act 2 或いは Act 3』より、単調な全体像にさり気なく起伏をつけた「Lesson」を披露。さらに、こちらもライティング演出と楽曲展開の巧みさが際立つ「エコー」など、解散前のマスターピースも多数織り交ぜた7曲を一気に歌い上げた。

 ようやく一息ついた門田は、「今日はどうもありがとうございます。友だちが少ないバンドなので、カフカとART-SCHOOLには本当に感謝してます」と挨拶。その昔、ART-SCHOOLとの関係性は穏やかなものではなかったかもしれないが、お互いに特別な存在であるのは間違いない。門田からは「個人的にリッキー(木下理樹)にすごく感謝してるのはね、雑誌に『Act 2 或いは Act 3』のディスクレビューを寄稿してくれて、それが本当に胸を打つレビューでさ。すごい嬉しかったです。ありがとう」とも語られている。

 内田武瑠(dr)も「アートと最後にライブをやったのは2003年なんですよね。感慨深いものがあります」と話し、続けて「うちらは一回、旗を下ろしてるわけだから。持続して第一線を走るのは本当にすごい大変だと思うんですよ」とART-SCHOOLとカフカを賞賛。門田が「ずーっとやってる人が一番偉いんだよね」と頷けば、一時は音楽から完全に離れていた丸山潤(b)が「いや、二人はすごいなと思うよ、俺は。ぐさぐさ刺さるよ……」と胸に手を当ててみせた。

 とはいえ、一度はメンバーがばらばらになり、それぞれの経験を持ち寄って出来上がったのが『Act 2 或いは Act 3』である。このアルバムからはさらに、門田の一風変わった言葉選びで生を切り取った「酸素」や、本編ラストとしてシューゲイザー調の「コミュニティー」も演奏。現在の底力を見せつけたあと、バンドTシャツを着て登場したアンコールでは、彼らの特異さが際立つアンセム「AM 4:00」、比較的ストレートながらやはり一筋縄ではいかない名曲「ミナソコ」と、消えることない初期衝動も打ち出し、最後に一言「どうもありがとう」とステージを去っていった。

 本当に、誰も想像しなかった。門田は「感謝してるんだよ。出てくれた人たちもそうなんだけど、スタッフもね。僕たち、なかなか連絡も取れないような人間だから」とも呟いていたが、現実のような夢だった存在が、夢のような現実になっていることを実感する。カフカより明かされた『今のこのシーンなんてぶっ壊そうぜ』という発言も昔では考えられなかった。孤高の存在であり、少し捻くれた言い方をすれば、他者の動きにはほとんど興味を持ってこなかったバンドである。

 もちろん、これからもBURGER NUDSは自分たちを簡単に理解させてはくれないだろう。ただ、2018年は自主企画を積極的に行うつもりだということもあり、昔よりは歩み寄る機会を与えてくれるような、そんな気がしているのである。

TEXT:佐藤悠香
PHOTO:野田雅之

 次回【Pure vol.2】は2月25日に東京・代官山UNITにて、THE NOVEMBERSをゲストに迎えたツーマンライブとして実施される。BURGER NUDSのオフィシャルサイトでは、11月30日18:00までチケット先行販売受付を実施。一般発売は1月21日となる。

◎セットリスト
【Pure vol.1】
2017年11月19日(日)東京・新代田FEVER

▼カフカ
01. Ice Candy
02. マネキン
03. 還る空
04. 彼女は海で
05. plastic city
06. 雨
07. Night Circus
08. あいなきせかい

▼ART-SCHOOL
01. シャーロット
02. プール
03. SWAN SONG
04. Ghost of a beautiful view
05. Butterfly Kiss
06. エイジ オブ イノセンス
07. foolish
08. ロリータ キルズ ミー
09. FADE TO BLACK

▼BURGER NUDS
01. Lesson
02. Methods Of Dance
03. 自己暗示の日
04. ANALYZE
05. エコー
06. 歪み
07. 感想文
08. 酸素
09. 逆光
10. コミュニティー
EN1. AM 4:00
EN2. ミナソコ

◎ライブ情報
▼BURGER NUDS
自主企画【Pure vol.2】
2018年2月25日(日)東京・代官山UNIT
出演:BURGER NUDS / THE NOVEMBERS
OPEN 17:30 / START 18:00
<チケット>
料金:前売3,500円 / 当日4,000円(All Standing / 別途ドリンク代必要)
■オフィシャルサイト先行販売
11月19日(日)22:00~11月30日(木)18:00
URL:http://burgernuds.jp/
■一般発売
2018年1月21日(日)~

▼ART-SCHOOL
・【ART-SCHOOL LIVE 2017 『New Day Rising volume1 ~BLACK~』】
2017年12月15日(金)新代田FEVER
出演:ART-SCHOOL
オープニングACT:ニトロデイ
OPEN 18:30 / START 19:00
・【ART-SCHOOL LIVE 2017 『New Day Rising volume2 ~WHITE~』】
2017年12月22日(金)新代田FEVER
出演:ART-SCHOOL
オープニングACT: MONO NO AWARE
OPEN 18:30 / START 19:00
<チケット>
チケット一般発売中
料金:各日前売 3,800円(All Standing / 別途ドリンク代必要)

▼カフカ
【カフカ Presents 【NIGHT CIRCUS vol.4】】
2017年12月15日(金)渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 17:30 / START 18:30
Opening Act : KFK
GUEST:セプテンバーミー / ANIMAL HACK
<チケット>
チケット一般発売中
料金:前売3,500円(All Standing / 別途ドリンク代必要)

◎動画
カフカ – 雨 / マネキン(Music Video):https://youtu.be/YaAfwudSVN4
ART-SCHOOL – B SIDES BEST『Cemetery Gates』Trailer:https://youtu.be/cdvu4UmrUxQ
BURGER NUDS / エコー:https://youtu.be/i1aMH2-YCWk


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