【スカート インタビュー】ポップスに対する敬虔な気持ちを忘れない

2017年10月20日 / 10:00

(okmusic UP's)

澤部渡によるソロプロジェクト、スカートがアルバム『20/20』でメジャーデビュー! これまでの活動を振り返りつつ、自身の音楽観や新作について話を訊いた。このタイミングでぜひ、スカートの提案するポップスに触れてみてほしい!
──これまでの活動を振り返ってみてどうですか?
「スカートの歴史は10年くらいだけど、本当にただやれることをやるしかなかったんです。ビジョンもまったくなく、ひとまず音源を出してみて“どんなふうに聴かれるんだろう?”みたいな。曲作りは高校生の頃から始めて、音大になんとなく入って、卒業する時に『エス・オー・エス』(2010年)っていうアルバムを作りました。紙を折って真ん中にCDを挟んで売る、自分なりに一番安いパッケージングの仕方で、“反応があったら続けよう、なかったら辞めよう”ぐらいの気持ちで。でも、妙に反応が良かったんです。」
──妙に、ですか。
「あれは妙でしたよ(笑)。その連続で現在に至ってます。何かのきっかけでひとつ開けて、また次に行ける流れで。僕自身は基本変わってなくて、ビジョンを描いてくれる人が周りにいるのが今だと思います。ただ、とにかく長く続けたい、何年経っても歌える曲を歌いたいという考えは昔からありますね。」
──音楽性はずっと一貫してる印象があります。
「してると思いますね。僕、ピュアであることが必ずしも作品の強度を保証するわけじゃないって、早い段階で気付いてしまったんですよ。セックス・ピストルズの再結成ライヴ盤を聴いた時に、40歳くらいになっても“ノー・フューチャー”って歌わなきゃいけないよりは、“そうならないためにはどうすればいいんだろう?”って感じて。だから、今しか歌えないものに興味がないんです。」
──割り切ってますね。
「歌謡曲とかは好きですけどね。歌謡曲の素晴らしさって作詞が本人じゃないところ…あくまで依り代として誰かが歌うところで。他者の視点、耐久性があると思うんです。」
──確かに澤部さんの曲には、自分の今を歌うばかりじゃない性質がありますね。だから、NegiccoのKaedeさんへの楽曲提供なんかが自然にできたりするのかなと。
「ありがとうございます(笑)。歌詞もNUMBER GIRLの「透明少女」で出てくる《気づいたら俺は夏だった》みたいな、ああいうちょっとした風景の切り取り方とかが好きで。それを小6くらいで感じて、同時にはっぴいえんども聴いてたので、“あっ、どっちも同じようなことを歌ってる!”って当時思ったんですよ。」
──スカートの世界観により入り込めるような、とても興味深い話です。
「ちょっとした切り取りなんですよ。“何か嬉しいことがあって嬉しい”を“晴れ”だとして、“悲しいことがあって悲しい”を“雨”だとしたら、その中間であり、ニュートラルでもないというか。感情の動き、質と量をどう表現するか。どっちかに振るほうが分かりやすいけど、“果たして雲が晴れて太陽が見えるのか? それとも曇り続けてやがて雨が降ってしまうのか?”の微妙なさじ加減をどう音楽に落とし込むか。この追求がインディーズまでだった気がします。」
──それが、新作『20/20』ではだいぶ変わった?
「はい。単に晴れや雨の方角に進んだとかではなくて、また別の落とし込むべき美意識が生まれてるというか。」
──「視界良好」を聴いてても、1曲の中で行ったり来たりする感情がやっぱりあるけど、これまでとは異なる明るさを伴ってる気もしますね。
「“予感”を歌うようになったのかな。目線の高さ、視点は絶対に少し変わってます。今作の核になる曲は自分なりに外を向いてる。」
──「静かな夜がいい」ができたことが大きいですか?
「大きいと思います。歌詞を書く段階で“不在”を歌わないようにしたいという決意もあったんですよ、本当は。明るく開けたものを今後ポップスとして自分がやるべきかなとか漠然とイメージしたのですが、作業を進めていけばいくほど、逆に“不在を今歌わないでどうするんだ!”って。ときどき僕も括られる“シティポップ”って何だろう?という想いも同時にあったり。“スカートがシティポップだとしたら、2017年に何を歌うべきなんだろう?”と考える中で、都市が変わっていってしまう、自分の慣れ親しんだ風景がどんどん消えていく、そういう不在を歌うべきなんじゃないかって気持ちになったんです。それが「さよなら!さよなら!」や「わたしのまち」につながってるのは、あとで分かりました。」
──なるほど。
「なので、これまでの曇天の美学が強く出てる曲もありますよ。「ランプトン」「オータムリーヴス」「わたしのまち」とか。」
──秋からの季節に合います。
「このアルバムを10月に出せるのは最高なんです!」
──「視界良好」のサビメロなんて、“これぞスカート!”ですしね。
「そうそうそう! ワケ分かんない転調というかね。クリシェで降りていくのはよくあるけど、“そっち行くんだ!?”みたいなの。いいですよねぇ〜(笑)。この曲は突き抜けていながら、スカートがずっとこだわってきたコード進行の異物感も出せてるのがポイントです。」
──おかげで、シンプルなビートの「私の好きな青」が効いてると思います。
「うわぁ! そうなんですよ。意図的にシンプルなものにしました。“澤部くんの曲はコードが難しいの多いし、誰でも弾けるような簡単なやつで1回作ってみたら?”って佐久間(裕太/サポートドラム)さんに言ってもらって、セッションしながらできた曲で。なので、どう思われるのかが一番心配な曲だったんです。特に、昔から聴いてくれてる人には。」
──アルバムにあってくれないと困る曲です。
「あぁ、嬉しいです。この曲がなかったら、全体のトーンがもっと暗くなっちゃうと思うんですよ。なんか安心しました(笑)。「私の好きな青」を入れたことが数年後に効いてくるといいな、とも願ってたから。」
──聴き手のリアクションって気になるほうですか?
「なりますね。自分では、アウトサイダーアートみたいなことをやってしまってるような意識も若干あったので。でも、こんなに内省的な音楽なのに、少しずつ聴く人が増えていって、“スカートがメジャーデビュー!”って夢あるじゃないですか。ポップスをやる身分として異形かもしれないけど(笑)、ポップスに対する敬虔な気持ちを忘れずに今後も精進していきたいですね。」
取材:田山雄士
アルバム『20/20』
2017年10月18日発売

PONY CANYON

PCCA.04583

¥2,600(税抜)
『20/20 VISIONS TOUR』
10/21(土) 愛知・名古屋TOKUZO

10/29(日) 東京・WWWX

11/26(日) 北海道・札幌SOUND CRUE

12/01(金) 福岡・INSA

12/03(日) 広島・4.14

12/06(水) 大阪・Shangri-La

12/20(水) 宮城・仙台enn 2nd
スカート
スカート:2006年、澤部渡のソロプロジェクトとして多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業、性別、年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。強度のあるポップスを提示しながらも観客を強く惹き付けるエモーショナルなライヴパフォーマンスが話題を呼んでいる。17年10月にリリースする新作アルバム『20/20』にてメジャーデビューを果たす。


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