「ポップ・ミュージックを作っていると、自分を見失わないように戦わなきゃいけないことが多々ある」― ロード 来日インタビュー

2017年8月21日 / 18:00

 ここ数年の間に経験した大失恋から生まれた自己不信や孤独、そして絶望の淵から立ち直りながら自分と向き合っていくリアルな姿を綴った『メロドラマ』が大きな話題となっている現在20歳のNZ出身のシンガー・ソングライター、ロード。2017年6月にリリースされ、米ビルボード・アルバム・チャートでも初登場1位をマークした今作をを引っさげ、約3年ぶりに出演を果たした【FUJI ROCK FESTIVAL ’17】では、最終日<グリーン・ステージ>のトリ前に登場し、パフォーマーとしてのさらなる成長が伺える、人間味あふれるステージで魅せてくれた。そしてライブの前に、ミントグリーン&ピンクのキュートな上下を纏い、リラックスした様子で取材エリアにやってきたロードは、心から来日を楽しんでいるようだった。
 
◎久しぶりの来日ですね。
そうなの。戻って来れて嬉しい!フジロックは本当に素敵な場所。それに明日、丸一日オフだから、色々なところに行きたいと思ってる。
 
◎気になっている場所はあるんですか?
う~ん、予定はほとんど立てていなくて、行き当たりばったりって感じかな。その方が楽しいでしょ?
 
◎ですね(笑)。先月『メロドラマ』という見事なポップ・アルバムを届けてくれましたが、反響も素晴らしいですね。
何もかもに驚かされた。しばらく作品をリリースしてなかったから、本当にクレイジー。あんなに何年も作品をリリースしていないと、みんなが興味を持ってくれるかどうかすらわからない。でも、ものすごく素晴らしい反響があって、私たちがこの作品で目指したことをきちんと理解してもらえたと感じてる。アメイジングとか言いようがない。時間はかかったけれど…2ndアルバムは、『ピュア・ヒロイン』とは全く違う、特別な作品にしたかったから。様々なことを探求し、実験を重ねることに時間をかけたの。
 
◎今作は、デビュー・アルバムを発表した16歳からの4年間というティーンから大人へ成長する大事な時期に制作されてました。
その通り。人として大きく成長する時ね。
 
◎ロードの場合は普通のティーンとはやや違う4年間だったとも思います。
世界中をツアーしたり…そういう部分はもちろん違ったけれど、それが終わったら故郷に戻って、人生がクレイジーになる前と同じ生活を送ることを心掛けていた。
 
◎そのゆえ、これまではなかったパーソナルな面をさらけ出した作品になりました。
このアルバムは、本当にパーソナルな作品。ポップ・ミュージックを作っていると、自分を見失わないように戦わなきゃいけないことが多々ある。粗削りな曲をより洗練されたものに変えていき、均質化するというのが、ポップ・ミュージックの根幹にある。それはそれで好きなんけど、やはり今の自分自身を、まるで地図のごとく表現している音楽が作りたかった。新作で自分のやりたいことができて、心から良かったと思う。そしてリスナーがその部分に共感してくれて嬉しく感じる。
 
◎特に「Liability」なんかは、パーソナルすぎて、ライブで披露するのが辛いな、なんてことはないんですか?
そこはすごく興味深くて(笑)…「Liability」はパフォーマンスするのをとても気に入ってる。ステージの端に座って、みんなに語りかけて…。
 
◎セットの中でも特に感傷的な場面ですよね。
本当にそう。だから、あの曲を生で歌うのは大好き。どの曲もパフォーマンスするのが好きよ。まだいくつかライブでプレイしていない曲もあるんだけど、今後ライブに取り入れていくのを楽しみにしてる。
 
◎自分が表現したいことが見つかってからは、順調にレコーディングが進んだのですか?
それが、そうでもないの。作品に見合うサウンド、プロダクションとか音楽的な部分にすごく時間がかかった。ほとんどすべてジャック(・アントノフ)と私だけで作業を進めていったから。
 
◎ジャックとは出会ってすぐに意気投合したのですか?
出会って2時間ぐらいで打ち解けた。そして、この2年間、ほぼ毎週一緒に曲を書いた。曲を書いてない時も、頻繁に電話で話してたし、即座に繋がりが感じられた。そんな風に思える人に出会うのって本当に稀だと思う。私は変わっているところがあるし、繊細で、ミュージシャン気質だから。多くのソングライターは、いとも簡単にどんな人とでも曲を書くことができるけど、私にとっては難しいこと。相手とちゃんとした繋がりが感じられて、一緒にいて安心できないと無理。彼に出会ったことで、信頼できる音楽におけるパートナーができたのは喜ばしいこと。
 
◎コラボレーターとしての彼の魅力についてもう少し詳しく教えてもらえますか?
私のアイディアに対してすごくオープンなの。ソングライターってやや頑固なところがあって、曲の流れや構造を決めたがる人が多い。けれど、アーティストと曲を書いたり、コラボをするときは、そのアーティストが主体となって流れを決めた方が、パワフルな作品が生まれると私は感じる。そして彼はポップ・ミュージックが持つパワーを心から信じていて、皮肉さやクールに振舞ったりする素振りがない。彼はクールなタイプじゃないし、それは私も同じ。ちょっと内容が重いけど、“楽しい”音楽を一緒に作れていると思ってる。
 
◎サウンドに関しては、前作のミニマルで無機質な質感とは正反対の、色鮮やかで豊満なもの仕上がっています。
うん。サウンドの幅を広げたかったのはすごくある。1stアルバムは、いわゆるベッドルームで作ったようなアルバムで、その頃から私の世界は大きく広がったから、サウンドもそれに伴い進化させたかった。そうすることによって元の計画から1年以上長くかかってしまったけれど、それ以上にスペシャルな作品にしたかったの。
 
◎主にアナログ機材を使用したのも、今作のサウンドとフィーリングに影響を与えていますね。
ほぼアナログ機材しか使っていなくて、ジャックのPCには音楽ソフトは全く入ってないし、あるプロデューサーがMIDIキーボードを借りに来たことがあるんだけど、それすら持ってないぐらいなの(笑)。私にとって、何もかもが新しかった。アナログ・シンセサイザーとかって高価なものだし、前作で使った機材はどれもPCにつなげられるようなものばかりで、実はパイレートのソフトもあった。「こういう世界もあるんだ」って具合に、色々な機材についてじっくり知れたと思う。
 
◎アルバムにはまるで物語のような流れがありますが、収録曲を選んだ時にこだわったことは?
例えると、素敵なブーケを作る感覚に似ているかな。「この花とこの花をいれて…でもこの花はやめておこう」みたいな。完璧と思える一輪の花に合う、新たなスペシャルな花を次々と加えていく感じ。無駄がないアルバムで、たとえ1曲でもなくなったら、不完全だと感じると思う。個人的に、そういう無駄のないアルバムが大好きで、それは一つの完璧な作品に聞こえるようなアルバムには不可欠。きちんと曲順を考えることで、アルバムを通して流れるエネルギーも変化してくるしね。
 
◎「She thinks you love the beach, you’re such a damn liar」や「Perfect Places」を締めくくる詞など、普遍的でありながらもティーンの心に刺さるというのが、ロードの詞のユニークな部分だと思うのですが、詞を書く際に意識していることは?
ソングライターとして、古典とモダンなもの融合させるのが好きなの。クラシックなアイディアを今風の言葉やスラングを用いて表現してみたり、ちょっと風変わりな言い回しをしたり。最終的には、若いミュージシャンだから言えちゃうような、大げさな表現方法が好きなんだと思う。派手に失恋した時も、小生意気なスローガン的な言葉で表しちゃうみたいな(笑)。とにかく言葉や詞が大好きなの。
 
◎では最後にロードの“夏の1曲”を教えてください。
ジュリア・マイケルズ!彼女の曲は、どれも最高。本当に才能豊かで、グレイトな存在ね。
 
 
◎リリース情報
『メロドラマ』
ロード
2017/6/16 RELEASE
2,700円(tax incl.)
 

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