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まさに破壊的融合の一夜だった。7月7日、交わることのなかった2つのバンド――PIERROTとDIR EN GREYによるジョイントライブ、その1日目となる 「ANDROGYNOS –a view of the Megiddo-」が横浜アリーナで開催された。90年代後半から2000年代前半にかけてビジュアル系シーンを代表する存在でありながらもライバル視するような関係のもとお互いが接点を持つことはなく、さらにファン同士の「抗争」とも呼べる現象が話題にもなった彼ら。今になってその争いに決着をつけようという対バンライブである。
ステージを「危険地帯」、客席を「緩衡地帯」や「非武装地帯」といった名称で会場を戦場になぞらえる主催者の徹底ぶりもあってか、会場内は開演前から異様な緊張感が漂う中、場内暗転。するとDIR EN GREYのMVをコラージュした映像を背にメンバーひとりひとりがステージに姿を表し、そのまま「Revelation of mankind」とともに戦闘が開始される。「かかってこい!」と激しく客席を煽る京をはじめステージの5人は、「ピエラー」と呼ばれるPIERROTのファンを前にしても、いつもの彼らと同じように自分たちの感情を叩きつけるのみ。ワンマンであろうと対バンであろうと、彼らは自分たちの流儀を少しも変えることはない。それは「戦争」になぞらえたステージでもあっても同じなのだろう。世界で唯一無二、他のどこにも存在しない音楽を追求し続けてきたバンドならではの確固たる意志を感じさせるライヴは、今年で結成20周年を迎えた歴史を凝縮したような内容でもあった。そして最も印象的だったのは「ピエラーの皆さん、こんばんは。DIR EN GREYです。よろしく……」とラスト曲の前に京の不敵な笑み。時代を切り分けてきたバンドとの共演を心から楽しんでいるように見えたのが意外でもあり、対バンライブらしい光景でもあるように思えた。
後攻となるPIERROTは、2014年に復活ライブを行って以来のステージとなる。現在はメンバーそれぞれが自身のバンドで活動している中での再集結だ。1曲目に「MASS GAME」が披露されると、キリトの手の動きに合わせて会場中で一斉に手振りが始まる。まさに独裁国家の「マスゲーム」のような光景だ。その後も対立関係にあるはずのファン同士を束ねていくような彼ら代表曲が惜しみなく披露されていく。そもそも彼らがこうしてまたPIERROTとして舞台に立つこと自体が奇跡であるはずだが、共に時代を切り分けてきた好敵手のライブと続けて観る彼らのステージは、どこか必然であるように思えてしまう。それだけこの2バンドが長い時間を経て合いまみえることは、今のシーンや世相とどこかリンクする現象なのだろう。「これはもはや戦争でもなんでもない。君たちはひとつになって溶けてしまったから。メギドとかアクロとか、なんですか? 戦争とはなんですか? 最初は皆、ひとつだったんです(笑)。お前ら、俺たち、全員が最初はひとつだったんです。また、ひとつに戻りませんか? ひとつのキ○ガイに戻りませんか!?」。アンコールでキリトが放ったこのセリフが、この夜の出来事を象徴していた。これは戦争ではない。20年続けてきたバンドと、必然性を伴って復活したバンド、お互いがお互いの存在に対して贈ったエールのようなステージなのだ。奇しくもこの日は七夕。織姫と彦星が出会うように、かれらもまたここでの競演が運命づけられていた、ということなのかもしれない。
『ANDROGYNOS』
「ANDROGYNOS – a view of the Megiddo -」
7月07日(金) 横浜アリーナ
出演 PIERROT / DIR EN GREY
「ANDROGYNOS – a view of the Acro -」
7月08日(土) 横浜アリーナ
出演 DIR EN GREY / PIERROT
『ANDROGYNOS』告知映像
https://www.youtube.com/watch?v=1pNCvvQNbn4
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