シリアスで普遍的なメッセージを込めた大作、ファーザー・ジョン・ミスティー『ピュア・コメディ』(Album Review)

2017年4月8日 / 17:00

 米国のシンガー・ソングライターであるファーザー・ジョン・ミスティーが、3作目となるアルバム『Pure Comedy』をリリースした。本名ジョシュ・ティルマン、元はJ・ティルマン名義でアルバムを発表していたアーティストだが、2008年から2012年初頭にかけてはフリート・フォクシーズのドラマーとして活躍していた経緯もある。その後ファーザー・ジョン・ミスティーを名乗り、米サブ・ポップと英ベラ・ユニオンの共同リリースのもと、作品を残している。前作『I Love You, Honeybear』は、US最高17位、UK最高14位とヒットを記録した。

 ファーザー・ジョン・ミスティー作品の特徴は、どこか芝居掛かった大仰なチェンバー・ポップを用いて、皮肉や嘆きを込めながら人間社会を風刺していく点にある。新作『Pure Comedy』はまさに自らの作風を客観視したかのようなタイトルだが、壮麗にしてドラマティック、ときには捻れたサウンドスケープの実験性が感情表現の生々しさを伴って表出されるという、全13曲・再生時間は1時間14分にも及ぶ大作(アナログ盤はLP2枚組)となった。

 2017年1月、彼は新作のイントロダクションとして、サブ・ポップのYouTubeチャンネル上で25分の映像『Pure Comedy [The Film]』を公開した。人間の際限なき欲望をテーマにした新作の製作風景を下地に、炎に包まれるハリウッド(何事も起きていないかのように過ぎ行く人々や車が不気味だ)や、自作の風刺イラストが織り成す、少しばかり平衡感覚を失うような刺激的な映像である。真剣な面持ちで創作に取り組み、ときには抗鬱剤を自らに投与するファーザー・ジョン・ミスティーことジョシュの姿にも胸を打たれる。

 新たな命が誕生する瞬間から問題提起を始めるタイトル曲「Pure Comedy」。今まさに燃え尽きようとしている命と共にある空虚な欲望を描く「Ballad of The Dying Man」。そして“死さえも拒む、神なきロック”「Things It Would Have Been Helpful To Know Before The Revolution」といったふうに、このアルバムに込められた主張はどこまでもシリアスで普遍的だ。この世の森羅万象を喜劇として眺め、大袈裟に戯画的に綴らないとやっていられない、というような強い絶望感が立ち込めている。

 細部にまで力の込められたソングライティングやアレンジに圧倒される一方で、異彩を放っているのはシンプルな旋律の反復によって歌われる13分超の「Leaving LA」だろう。ショウアップされた音楽業界を批判し、“創造神話から45口径まで何でもオンラインで手に入る”欲望にまみれた社会を射抜くこの歌は、コメディどころかファーザー・ジョン・ミスティーのリアルな独白に他ならない。

 アルバムは、恋人たちの見つめ合う情景(おそらくはバーかどこか)に、ピアニストの奏でる「This Must Be the Place」(トーキング・ヘッズの楽曲で、ショーン・ペン主演による同名コメディ映画の中でも歌われた)が聴こえる、という「In Twenty Years or So」で幕を閉じる。ファーザー・ジョン・ミスティーのドラマティックな音楽は決して過剰なものではなく、むしろ社会に不安を抱く彼自身やすべての人々のために、必然的に綴られ、奏でられる音楽なのだ。(Text: 小池宏和)

◎リリース情報
『ピュア・コメディ』
ファーザー・ジョン・ミスティ
2017/4/26 RELEASE(4月7日配信スタート)
2,300円(plus tax)
※解説/歌詞/対訳付、特殊パッケージ仕様、日本盤ボーナス・トラック未定


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