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米ビルボードR&Bチャート1位をマークした「チューズデイ/Tuesday」で知られる米アトランタのシンガー/ヒップホップMCのアイラヴマコーネンが、現地時間2017年1月にTwitterを通じて自身がゲイであることをカミングアウトした。同時期にチャンス・ザ・ラッパーの弟、テイラー・ベネットもTwitterで自身がバイセクシャルであることを告白し、兄のチャンスが、「どんなことがあってもこの男を愛してる。彼は素晴らしい男に成長した。神と自分が彼の味方だから、彼にできないことはない、彼が打ち負かされることはない」とサポートの姿勢を示した。
アイラヴマコーネンには以前より“ゲイ疑惑”が付きまとい、2015年のニューヨーク・タイムズのインタビューでセクシュアリティについて質問された際は、「自分がゲイだとかストレートだとかバイセクシャルだとか、そんなことは言いたくない。だって、どうでもいいじゃないか。それは分断を広げているだけだ」と明言を避けていた。
人がレッテルを避けるのは、他人の偏見により不利益を被る可能性があるからだ。性的指向はプライベートな問題である以上、アイラヴマコーネンに限らず誰だって公言する義務はない筈で、今になって彼がカミングアウトしたことの意義は大きい。
実は米ヒップホップ界で同性愛者であることを公言している男性アーティストは極端に少ない。デイリー・ビーストのトム・サイクスが指摘する通り、アイラヴマコーネンらがカミングアウトする前は、ニューヨークのラッパー/プロデューサー、リーフ(Le1f)くらいしかいなかったのだ。ヒップホップ界はホモフォビア(同性愛嫌悪)の傾向が強いと昔から批判されてきた。
ただ、だからと言って現在のヒップホップ界が他の音楽ジャンルと比較して特段にその傾向が強いと結論づけるのは乱暴だ。今や主流な勢力となったヒップホップは、主流な文化の鏡であるに過ぎない。その主流な文化は、同性婚などいくつかの点においては多少前進したものの、トランプ政権下のアメリカではLGBTQを取り巻く状況は今後進歩するどころか後退していく可能性が強い。
他のジャンルを見渡しても、ゲイを公言しているポップ・スターや当代のロック・ミュージシャンはあまりおらず、カントリー・ミュージックに至ってはメジャーなアーティストでは一人もいないという状況だ。
ヒップホップの場合、同性婚や同性愛者の権利を擁護するアーティストも最近増えていて、ジェイ・Z、カニエ・ウェスト、50セントらも支持を表明している。2011年に『I’m Gay』と題されたミックステープを発表しているリル・Bは、“ゲイ”という単語が持つ棘を抜くことで同性愛に対する偏見をなくしたかったと語っている。
女性の場合、例えばレズビアンを公言しているヤング・M.Aは自身のセクシュアリティをメジャーなTVCMで表現することも厭わない。問題児として有名なアジーリア・バンクスの場合、その言動はさておき、バイセクシャルであることを隠さないが、そのことへ必要以上の注目が集まることも拒んできた。彼女たちにとって、自分は単に自分であり、生まれ持った性的指向に関して議論する気は無いのだ。
ただ、ヒップホップに限ったことではなく、全体的にLGBTQにとって生きづらい世の中であることは確かで、黒人でゲイなら特にそうだ。それ故にアイラヴマコーネンらがカミングアウトする気になったことは、ヒップホップ・カルチャー、ひいてはそれが反映している主流な文化そのものの考え方の変化を表しているとも言える。いまだに大きなリスクが伴うのは確かだが、5年前、10年前、15年前と比べたら2017年の現在の方がまだましで、ゆっくりとではあるが、確実に進歩はしているのだ。
◎アイラヴマコーネンによる投稿
https://twitter.com/iLoveMakonnen5D/status/822353517448835072
https://twitter.com/iLoveMakonnen5D/status/822353737146470400
◎チャンス・ザ・ラッパーによる投稿
https://twitter.com/chancetherapper/status/821931231604375552
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