木村カエラがビルボードライブに登場、MTV unplugged公開収録レポート到着

2017年1月16日 / 10:41

 木村カエラが、1月15日にビルボードライブ東京でMTVのアコースティックライブシリーズ【MTV Unplugged】の公開収録を行った。

 バンドはヒイズミマサユ機(P)、會田茂一(G)、佐藤征史(くるり/Ba)、柏倉隆史(Ds)による豪華な現ツアーメンバーに、チェロの徳澤青弦を迎えた5人編成。オーディエンスは、リラックスしたムードの中で、ツアーとは色彩の異なる音色とグルーヴを存分に味わった。

 大きな拍手と歓声に迎えられてステージに登場したカエラは、オープニングナンバーにまさかの「Yellow」を選んだ。彼女が刈り上げでソフトモヒカンにしていた時期のエッジーなパンクロックであり、アコースティックライブはゆったりしたものという、つまらない固定概念を一瞬にして吹き飛ばされた。金色に輝くノースリーブのロングドレスを身にまとった彼女は、椅子に座ったまま歌唱。普段のライブでは観客を煽りまくる曲だが、動きがない分だけ、全てのエネルギーがマイク一点に集中して向けられており、その歌声にはパンキーな自分を取り戻すんだという激しい情熱が込められていた。

 続く、「SHOW TIME」では観客からクラップが起き、1人1人の顔を見ながら表情豊かに歌い上げていた彼女は、足を力強く踏み出す仕草を見せながら、ショウの始まりを高らかに宣言し、大きな拍手と喝采を受けた。最初のMC で観客に向けて新年の挨拶をした彼女は、「今年、初めてのライブなので、いいライブにしたいのです。いつもと違って、大人なしっとりしたライブになっていくと思いますが……いや、ならないかな? どうなるかわかりませんが(笑)、最後までゆっくり楽しんでいってください」と語り、絵本のような世界が語られるバラード「ワニと小鳥」と「Butterfly」を続けて披露。絵本のページをめくるように丁寧に語るカエラの優しい歌声とチェロのチャーミングな響きは、喪失感でいっぱいのワニの上で小鳥が羽ばたき、運命の花を見つけた白い蝶が羽ばたく風景を引き連れてきてくれた。

 ここでベース、ギター、ドラムが一旦退場。カエラがアコギを弾き、ボリュームを抑えたピアノとチェロの3人だけで演奏された「リルラ リルハ」は、明るく元気なカエラのパブリックイメージを決定づけた初期のヒット曲だが、テンポを落とした演奏からは、壊れそうな心をなんとか支えようとする、弱さの中の強さのようなもの浮かび上がってきて新鮮であった。「TODAY IS A NEW DAY」はピアノとチェロのみで、歌声だけでスケール感を広げていくような構成。その歌声には胸を打つものがあり、歌い終えた彼女にはこの日一番の万雷の拍手と喝采が浴びせられた。

 再びバンドメンバー全員を迎え入れた彼女は、「デビュー前、高校生のときに衝撃を受けました。女の人は優しく歌わないといけないものだと思っていたんですが、彼女は力強く歌っていて。こんな風な歌い方がしたいと憧れていたバンドであり、人でした」と語り、グウェン・ステファニーがヴォーカルをつとめていたパンクバンド、ノー・ダウトのヒット曲「Just A Girl」をカバー。表現の方法は様々だけれども、彼女のルーツであり本質は、いつどんな時でもパンクなのだと知らされる思いがした。英語歌詞がメインのパンクロック「TREE CLIMBER」は、デビュー前の彼女が追い求めていた理想像の1つの到達点だろう。テンポは変わってないが、いつもであればステージ上を所狭しと動き回り、くるくると回転する彼女が、この日は椅子に座ったまま、まっすぐに前を見つめて、まさに力強く歌い上げていた。客席からは自然といつものライブでお馴染みのクラップが沸き起こった。最後に発せられた音が空中ですっと消えていくようなエンディングもかっこよく、その余韻はなかなか消えることはなかった。

 会場を熱く盛り上げた彼女は、「EGG」「Sun shower」とエモーショナルなバラードを続けた。この堂々たる歌いっぷりには目を見張るような力強さと開放感、どこまでも突き抜けていくような広がりがあった。日々のモヤモヤを全部、洗い流したかのような晴れやかさと清々しさを与えてくれてた彼女は「すごいしっとりしてるでしょ?」と茶目っ気たっぷりに語りかける。そして、自分の気持ちを胸の奥にしまわずに、相手に伝える必要性を歌った「You」、一人ぼっちではないことに気づき、笑顔で前を見て、今を生き、新しい日へと向かうんだと高らかに歌い上げる「僕たちのうた」。そして、いつもキラッキラワクワクしていたいんだという決意を込めた「BOX」へ。椅子から立ち上がり、大きく手を広げて歌う<これからも/この先も/わたしらしくありたい>という宣言に対し、観客は彼女の背中を手拍子で応えた。

 最後に彼女が「誰かを大切に思えることは、とても素敵なことだと思います。そんな歌を歌いたいと思います」と語ると、ステージ後方の幕が開き、イルミネーションで彩られた東京の夜の街が見えた。くるりの岸田繁作曲によるクラシカルで上品なメロディラインを情感豊かに歌い上げた彼女は、<胸がぎゅっと痛い!>という叫びにも似た歌声を観客の胸に残して、客席に手を振りながらステージを後にした。
木村カエラといえば、激しくアグレッシヴなパフォーマンスでライブハウスに集まった観客を熱狂させるロックアーティストというイメージが強いだろう。もちろん、それは決して間違いではないことがこの日も証明されたが、彼女の一面に過ぎないことも確かだ。無条件で聴き手の体を動かし、叫ばせ、興奮させるようなアップテンポの楽曲であっても、その歌詞には彼女の心の状態が描かれており、想像力を喚起させるストーリーがあり、聴き込めば聴き込んだだけ感情の陰影に触れてくるような深さとメッセージ性が込められている。また、小さなライブハウスから活動を開始した彼女だが、デビューから13 年目に入り、ヴォーカリストとしても日々、進化と成長を遂げていることも実感した。そういった意味で、『MTV Unplugged』は、彼女の“歌の言葉”にじっくりと耳を傾け、タフさと説得力を増したヴォーカル力に近距離で触れることができた、またとない貴重な機会となった。本ライブの模様は、2017年2月26日22時よりMTVにて放送される。

Photo by 田中聖太郎

セットリスト:
1. Yellow
2. SHOW TIME
3. ワニと小鳥
4. Butterfly
5. リルラ リルハ
6. TODAY IS A NEW DAY
7. Just A Girl(ノー・ダウト カバー)
8. TREE CLIMBERS
9. EGG
10. Sun shower
11. You
12. 僕たちのうた
13. BOX
14. 向日葵


音楽ニュースMUSIC NEWS

『虹プロ2』発・NEXZ、ダンスパフォーマンスビデオ第4弾を公開

J-POP2024年4月18日

 NEXZが、ダンスパフォーマンスビデオ『NEXZ Archive | J-HO Choreography | Tambourine – Eve』を公開した。  ソニーミュージックとJYPによる日韓合同オーディション・プロジェク … 続きを読む

私立恵比寿中学、【2024年新春大学芸会】ライブ映像発売決定 メイキング&【オケラディスコ2023】ダイジェストも収録

J-POP2024年4月18日

 私立恵比寿中学が、2024年7月3日に同1月6日~7日に開催した【私立恵比寿中学 新春大学芸会2024~高く飛ぶ竜と僕らのその先~】のライブ映像を発売することが決定した。  DAY1のパフォーマンスに加え、本作の初回生産限定盤には、DAY … 続きを読む

Crossfaith、約6年ぶり新体制初となる新アルバム『AЯK』リリース&ツアー開催決定

J-POP2024年4月18日

 Crossfaithが、新体制初となる新作アルバム『AЯK』を2024年6月26日にリリースすることを明らかにし、併せて【Crossfaith AЯK Japan Tour 2024】の開催を発表した。  『AЯK』は、『EX_MACHI … 続きを読む

&TEAM、美しい春&葛藤する少年たちを切り取ったコンセプトフォト44点を公開

J-POP2024年4月18日

 &TEAMが、2024年5月8日にリリースとなる1stシングル『五月雨 (Samidare)』のコンセプトフォト44点を公開した。  ソロカットでは、舞い落ちる桜色の花びら、雨粒の残る車窓からどこか遠くを見ている9人それぞれの新鮮 … 続きを読む

INIの大規模展覧会、未来への意志を込めたサブタイトル&キービジュアル公開

J-POP2024年4月18日

 INIの大規模展覧会のサブタイトルが「DESTINED HORIZONS」に決定し、撮り下ろしキービジュアルが公開された。  2024年5月24日~6月30日まで、東京ドームシティのGallery AaMoにて開催される【INI EXHI … 続きを読む

Willfriends

page top