映画『ブルーに生まれついて』、ジャズ喫茶のマスターが語るチェット・ベイカーと は

2016年11月26日 / 10:00

 11月26日に公開される映画『ブルーに生まれついて』は、伝説のトランペット奏者チェット・ベイカーがドラッグに溺れ、そこから再生を目指す時期に焦点を当ててベイカーの孤独と愛が描かれている。若者の間でもジャズブームが起きている昨今だが、東京・四谷のジャズ喫茶いーぐるは50年間続く老舗のジャズ喫茶。今回20歳で店を始めたマスターの後藤雅洋氏にチェット・ベイカーとの出会いやジャズについて訊いた。

―チェット・ベイカーとの出会いを教えて頂けますか?
後藤雅洋(以下、後藤):
チェット・ベイカーを初めて聴いたのはジャズ喫茶を始めたころで、その男か女かもわからない声が耳に不思議な感覚がしました。マザコン的で甘えん坊的な印象を受け、当時の自分にはむず痒く、ハマるには至りませんでした。だけど1986年、雑誌『ブルータス』でチェットがインタビューを受けた号を目にしてショックを受けたんだ。チェットはドラッグ中毒者の風貌を隠し切れないまま紙面に載っていたからね。でもそれをきっかけに改めて彼の演奏と向き合いだしたんですね。枯れた味、というのかな。中には完全にクスリの影響だろうという酷い演奏もあったけど、存在感をとても感じたね。

―チェットとマイルス・デイヴィスが同じ時代にジャズ・シーンで活躍していたことについてはいかがですか?
後藤:これは僕の想像だけど、マイルスはジャズマンとしてのカリスマ性を持つキャラクターを自己演出していたと思う。比べて映画『レッツ・ゲット・ロスト』なんか観ても、チェットは、飾らない、無垢。淡々としている。居直りともいえるけど“違う世界の人間”と感じる。その佇まいが逆にこわいよね。マイルスは、50年代DOWNBEAT(アメリカのジャズ系音楽雑誌)のランキングで抜かれたこともあって、チェットに嫉妬してたんじゃないかな。

―チェットを演じたイーサン・ホークの演技と映画『ブルーに生まれついて』をご覧になってどう感じられましたか?
後藤:(ロバート・バドロー)監督もイーサン・ホークもジャズの本質を本当に理解しているよね。ジャズは業の深い音楽、だということを分かって映画を作っていたと思う。

―チェット・ベイカーをこれから聴く人に向けて。何から聴いたらいいかアドバイスをいただけますか?
後藤:
僕は小学館のCD付きムック『JAZZ VOCAL COLLECTION』でこの前チェットの特集を監修したんだけれど、(本を指しながら)ここに収録されている音源は全てお勧めです。その中でも、アルバム『チェット・ベイカー・シングス』(Pacific Jazz)に収録されている「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「ザット・ホールド・フィーリング」なんてどうだろう。

―最近では若い人たちにもジャズブームが来ていますよね。
後藤:いまはジャズそのものが完全に新しいディメンションに入っていると思うし、ここ最近では、日本人でもジャズ・ドラマーの石若駿や、海外ではGOGOペンギン、スナーキー・パピ―、カマシ・ワシントンなんか凄く斬新でいいよね。ジャズと今の音楽シーンとの繋ぎ方が上手い。どんな形であれ若い人にジャズに興味を持ってもらえるのは嬉しいですね。

―ジャズ喫茶と聞くと少し緊張感がありますが、“たしなみ方”などありますか?
後藤:そんなことは考えずに気楽にジャズを楽しんでもらいたいな。いーぐるは18時まで私語禁止だから強制的にジャズを聴かされるわけだし(笑)知らないものを知り、出会いに来てもらえればと思いますね。

東京・四谷 喫茶いーぐる→こちら

◎発売情報 小学館隔週刊CD付きムック『JAZZ VOCAL COLLECTION』
監修:後藤雅洋
13巻 <チェット・ベイカー特集>
価格:本体1,200円+税
CD:ケース一枚入り

◎公開情報 『ブルーに生まれついて』
2016年11月26日(土)よりBunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿他にて公開
監督・脚本:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク、カーメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー
配給:ポニーキャニオン


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