『Viva La Revolution』で民衆を導いたミクスチャーの雄、Dragon Ashの音楽革命

2016年11月9日 / 18:00

『Viva La Revolution』(’99)/Dragon Ash (okmusic UP's)

Dragon Ashがニューシングル「光りの街」を11月9日に発表した。何と約3年振りとなるシングルリリース。10thアルバム『THE FACES』から数えても、約2年10カ月振りであり、まさにファン待望の音源と言える。シングル発売を記念して、今週末の11月13日(19:30~21:00)にはスペシャルプログラム『Dragon Ash Special生番組』がAbemaTVを生配信。番組中ではスタジオライヴも開催されるなど、こちらもファン必見の内容となっている。来年デビュー20周年を迎えるとあって、ますます盛り上がり必至のDragon Ash。ここで彼らの軌跡を復習してみようと思う。

邦楽ロック史上にその名を刻むカリスマ
Dragon Ash(以下DA)。1990年代後半に10~20代だったリスナーはその名に神々しさすら感じるのではなかろうか。CAROL、BOØWY、尾崎豊、THE BLUE HEARTSら、本人たちが意図した意図しないにかかわらず、時代の流れを変え、自らの手でその時代を作り上げたアーティストたちがいる。DA はそんな所謂カリスマアーティストと並び称される、邦楽ロック史上にその名を刻むバンドであることは間違いなかろう。DAがいなかったら現在の邦楽シーンはなかった…とは思わないまでも、10年やそこら遅れていただろうし、もしかすると少しその様相を変えていたかもしれない。DA以前と以後でロックシーンの趨勢は確実に変わった。デビュー時には未だティーンだったKj(Vo&Gu)が世紀末の邦楽シーンに巻き起こしたもの──それはまさしく革命だったのである。
DAがシーンに与えた影響は、ずばり言って、ふたつあると思う。ひとつは──これは多くの人が認めるところだと思うが、日本の音楽シーンにおいて、ヒップホップとロックとの垣根を取っ払ったことだろう。DAが活動を開始したのは96年で、メジャーデビューは97年。EAST END×YURIの「DA.YO.NE」と、小沢健二とスチャダラパーの「今夜はブギー・バック」とはともに94年のヒット曲だから、ヒップホップ自体は日本でもすでに一般層に浸透していた。また、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが97年の第1回の『FUJI ROCK FESTIVAL』出演していることからも分かる通り、俗に言うミクスチャーロックも音楽ファンの間では十二分に受け止められていた頃ではある。
だが、ヒットした日本のヒップホップには、本場・米国製にあったアウトロー掛かったストリート感は薄く(それゆえに「DA.YO.NE」も「今夜はブギー・バック」も売れたのだろうが)、先鋭的なメッセージの乗ったラップが多くのリスナーに支持されていたとは言い難い。国内のオルタナティブロックにおいてはTHE MAD CAPSULE MARKET’Sが一定の人気を得てはいたが、ひとり気を吐くような状態で、シーンと呼べるようなものは存在していなかったように記憶している。そんな中で、オルタナティブロックに鋭角的なヒップホップを巧みに取り込み、さらにそれを一般レベルに押し上げたDAは、言うまでもなく、エポックメイキングなバンドであった。

ヒップホップへの確かなリスペクト
かと言って──これは彼らが初めてチャート首位を獲得した3rdアルバム『Viva La Revolution』でも確認できるのだが、大衆におもねった感じは皆無である。実はそこがDAの見逃せないところでもある。J-POPに如何にもな感じのラップを、まさに取って付けたように乗せた、どこぞのミクスチャーとは異なり、ちゃんとヒップホップのマナーを守っている感じが素人目にも分かる。『Viva La Revolution』は前半──M2「Communication」~M5「Attention」は所謂フック的な歌がない(M1「Intro」はインストなのでそもそもヴォーカルがない)。Kjはラップに専念していると言ってもいい。しかし、BOTS(Dj)によるトラックはループ中心ではあるものの、キャッチーな小節の繰り返しなので実にキャッチーだし、そこにIKÜZÖNE(Ba)とMAKOTO SAKURAI(Dr)とによる躍動感あふれるリズム隊が重なることで、単調になりがちなループミュージックの弱点をしっかりと回避している。その後に、4thシングルでもあり、R&B的な歌がサビメロに入るM6「Let yourself go, Let myself go」を配し、メロディアスなレゲエM7「Dark cherries」~ポップなパンクチューンM8「Drugs can’t kill teens」~軽快なスカナンバーM9「Just I’ll say」と続け、これまたポップなM10「Fool around」、ギターが前面に出たM11「Freedom of Expression」につなげる構成もお見事だ。
ヒップホップに始まり、徐々にメロディアスかつダイナミックな方向へシフトしていく。『Viva La Revolution』は後半に向かうに従って聴き手のワクワク度が増していくようなスタイルである。ボサノヴァ調のインタールードM12「Nouvelle Vague #2」からアルバムのタイトルチューンM13「Viva la revolution」、そしてM14「Grateful Days」へと進み、このアルバムはフィーナ―レを迎える。再度、インストM15「Outro」で締め括られ、文字通り、大団円と言ってよい作りだ(その後に隠しトラックもあるが…)。

問答無用にアガる骨太なメッセージ
そして、そのほぼ全てにおいて、先鋭的かつ骨太なリリックを乗せている。これもDAの大きな特徴であることは間違いない。Kjが放ったメッセージは右向きでも左向きでもなく、確実に前、あるいは上を向いている。力強くも清々しいものであった。トラックだけでもアガる作りなのに、こんな歌詞を乗せられたら歌詞を重要視しないリスナーでも思わず熱くなるのではないか。そんな内容だ。以下、主だったところを列挙してみる。
《叫び 切り拓くぜ続いた暗闇 これが存在意識/新しい風が背負う宿命 壁にぶち当たるそれが運命/選ばれし者は時に共鳴 だからこそ起こり得る不意の革命》(M3「Rock the beat」)。

《握り締めまた見つける旅 扉を開けて歩き出す度/立ちはだかるのは多難の道 避けては通れぬ茨の道/突き進むなら傷は必至 承知の上で進むならいいし/高らかに歌い続ける この言葉盾に歩き続ける/僕達は歌い続ける キミ達も何かでここに並ぼう》(M4「Humanity」)。

《駆け抜けろ時代を 未来へと進め 空気を吸って/振りほどけ恐れを 大地を踏みしめ歩き出そう》《満たされぬ世界 塗りつぶして進め/キミ達の声が包み込んだ この場所からまた歩き出そう》《雲の切れ間に見え隠れする未来/今奏でてる願いよ響きわたれ/駆け抜けろ時代を未来へといざ進め/突き抜けろ空へさあ両手を広げて》(M6「Let yourself go, Let myself go」)。

《勇気を持ってかかげた誓い 鼻で笑うように流れる世界/駆け抜けよう共にこんな時代 塗り替えるのは僕達の世代》《時には冷たい風強く吹きつけていても/外には悲しい雨ふり続いているとしても/優しい鳥の声がほら目ざめを誘っている/僕らは動き出してまた何か始めるでしょう》(M13「Viva la revolution」)。
こうして言葉だけで見ても、脳内でドーパミンが放出されるようではないか。CDセールスがピークを迎え、今では“CDバブル”と揶揄されるこの時期。確かに中身のない音楽も少なくなかったのだろう。しかし、そんな中、DAは真摯かつ敢然と立ち向かった。リスナー、オーディエンスから圧倒的な支持を得たのも当然だったと言える。

DAが取り払ったもうひとつの垣根
《満を持してこんな時代に登場 HIP HOP PUNKS 織り交ぜて今参上/期待の選手 We’re Dragon Ash 共に行こう駆け抜けろ青春》(M2「Communication」)──まさに、満を持して世紀末の邦楽シーンに登場したDA。以後、通常のライヴツアーだけでなく、大規模フェスへの出演も増え、そこでヘッドライナーを務めることも珍しくなくなったが、彼らはそこで必要以上に演出を施すことはなかった。それはメンバーたちの出で立ちを含めて…である。それまでもライヴステージそのものに過度な装飾や装置を施すことなく、演奏だけで勝負するアーティストも増えていたが、それにしても彼らが身を包んでいたのは革ジャンであったりスーツであったりで、少なくとも当時のDAくらいの規模になると、演者と観客との区別はつかないことはほとんどなかったと思う。そりゃあ、Kjたちがファストファッションを着用していたとは思わないし、オーディエンスもTシャツ&ハーフパンツばかりではなかったとは思うが、パッと見たところ、DAのライヴではステージとフロアの違いはほぼなくなっていた。彼らはその垣根も取り払ったのだ。DAがシーンに与えた影響のもうひとつはそこだと思う。もちろん、そこでは、DAのデビューと同時期に活動していたHi-STANDARDら、俗に言う“AIR JAM”勢の功績も大きいが、この時期、ロック、ヒップホップは現実にストリートに回帰したと言ってよい。DA以後、確実に変化したシーンは今も続いている。


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