『笑点』も50周年ですので…寄席へ行く前に振り返る5曲

2016年11月7日 / 18:00

浅草ジンタ「笑点テーマ」収録のEP『百万光年彼方から』 (okmusic UP's)

信じたくないのですが、本当に信じたくないのですが、もう11月です。今年は慶事も訃報もスキャンダルも多すぎて、無名ライターにすぎない私ですら「あの記事出していいんですっけ? え、ダメ!?」と振り回されました。あまりにもあらゆるトピックが矢継ぎ早に呼び込んでくるため、脳の情報処理能力が追いつかず、私の中の2016年は桂歌丸師匠の『笑点』勇退あたりで止まっており、最近も歌丸師匠の廓噺しか聴いていません。生家が置屋さんだけあって、師匠の演じる女性はなんとも愛らしくて艶っぽく、作業中も思わずデレデレしてしまうので、そろそろいきつけの喫茶店を出禁になりそうです。何のためにApple Musicに登録したんだろうと自省したいところではありますが、iTunesでも案外落語を取り揃えているのです。ということで、いっそのことおすすめの滑稽噺でも列挙したかったのですが、さすがにそうしてしまうと編集部からお尻ぺんぺんされるので、落語のらの字も知らないという方のための5曲をご紹介いたします。
何故にこのネタをせめて『笑点』50周年で盛り上がっていた初夏に出さなかったのかというと、全ては大人の事情です。察してください、お客様。

「笑点テーマ」(’14)/浅草ジンタ
マンネリズムの極地『笑点』は、前半の演芸コーナーとお馴染み大喜利の二部構成となっています。演芸には若手お笑い芸人から、落語家、太神楽まで、ありとあらゆる芸の達人が出演しているのですが、この枠にいわゆるバンドとして登場したのは浅草ジンタが初とのこと。“便所でお尻を拭く会長”こと三遊亭小遊三師匠が名付け親で、その名の通り浅草を拠点に活動しており、下町特有の郷愁や猥雑さを落とし込んだトラッドなスカロックは、『グラストンベリー・フェスティバル』等の海外フェスでも称賛を浴びています。何はなくともそこ行く誰もが「ぴぴるぴるぴる、ぴぴるぴるぴる」と口ずさめるこの曲からどうぞ。

「グループ魂のテーマ better」(’14)/グループ魂
「バンドの出演者は浅草ジンタが初」と10分前に書いたばかりですが、実はそれよりずっと前、96年にグループ魂が出演しています。まだまだ演劇ファンにしか名の知られていない頃、“クドカン”という略称すら産まれていないこの時代に、彼らは『笑点の穴』という若手登竜門企画に挑戦したそうです。それはさておき、セルフカバーアルバムに収録されているこのバージョンは、作詞に陣内孝則、作曲に大江信也が参加している珠玉のコラボ作です。中身はパンクとコントが暑苦しいほどに爆走で同時進行する通常運転なのに! 何の話をしていうのか分からないというお若い方は、『爆裂都市 BURST CITY』、ザ・ルースターズ等で検索しましょう。

「タイガー&ドラゴン」(’02)/クレイジーケンバンド
所謂ゆとり〜さとり世代にとっての“落語がテーマのコンテンツ”と言えば、ドラマ『タイガー&ドラゴン』ではないでしょうか。実在する古典の演目をベースにした奇抜な内容は、いつの世も代わらない人の営みの滑稽さを清々しく笑い飛ばしてくれるようで、受験勉強の数少ない息抜きでした。星野源や春風亭昇太師匠が脇役で出演しているのも、今となってはいい思い出です。そして、各出演者のこれまでになかった表情を胸焼けするほど大胆に引き出すスクリプトの強靭さと匹敵するのが、クレイジーケンバンドによる同名主題歌。もったいぶったような官能的なヴォーカルと、とりすますながらも情けなさの滲み出る歌詞、何とも芳醇なファンクネスが印象的な楽曲に“大人の世界”を垣間見たものです。

「薄ら氷心中」(’16)/林原めぐみ
『タイガー&ドラゴン』しかり、『じょしらく』しかり、数年ごとに落語を題材にした作品がヒットするのも面白い話ですが、2016年は『昭和元禄落語心中』の年でした。戦前から平成初期にかけての落語の黄金期と低迷、そして時代に翻弄される登場人物たちの歪であるがゆえに美しい人間模様を描いた同作のオープニングテーマを歌うのは、芸者のみよ吉を演じた林原めぐみ。楽曲を提供したのは椎名林檎です。みよ吉の蠱惑的なささやきをそのまま留めたような危ういヴォーカルを起点として広がる、駆け引きの妙と酷薄な宿命を描いたジャズ歌謡のハレーションは、何度聴いても肌が粟立ちます。

「セントルイス・ブルース」/ルイ・アームストロング
いろいろあってここ半年ばかり『笑点』観ていないのですが、“黄色い与太郎”林家木久扇師匠は今もあの定番ギャグ「いやんばか〜ん」やっていらっしゃるでしょうか? かつてはレコード化もされたこの脱力ソングの原曲は、100年以上前に発表された「セントルイス・ブルース」というジャズナンバーです。もともとは“ブルースの父”ウィリアム・クリストファー・ハンディが作曲したものですが、ルイ・アームストロングや八代亜紀等のカバーも有名です。ハンディもよもや100年後の日本の演芸番組で、大御所の落語家が珍妙な振り付けと共にこの曲を披露しているとは思いますまい。師匠、いつまでも元気で長生きしてくださいね。


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