ファンキー加藤「全くもって説得力がない」情けない自分隠さぬ“禊”そして再び動き出したストーリー

2016年7月25日 / 20:12

 約3年前、FUNKY MONKEY BABYSのメンバーとして東京ドーム公演を実現。これを最後に解散し、現在はソロアーティストとして活躍しているファンキー加藤が、7月23日と24日【I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナ】を開催した。

<謝罪で始まった横浜アリーナ公演 1曲目は「中途半端なスター」>

 今年6月、不倫報道で世間を賑わすことになってしまったファンキー加藤だが、同公演には会場を埋め尽くすファンが集結。まずはマネージャー陣が「連帯責任」と書かれたタスキと共に登場し、「皆さま、このたびは、ファンキー加藤がお騒がせしまして、大変申し訳ございませんでした!」と叫ぶように謝罪、その姿勢に大きな拍手が送られる。そんな頼もしい仲間の支援を受け、ステージに現れるなり深々と頭を下げた加藤。そして1曲目に歌い始めたナンバーは「中途半端なスター」。「あの日の勇気はどこへ? 何かに怯えてばかり 理想が現実から遠ざかってるけど」とダメな自分を憂いながらも、全力で手を振り続けるファンたちの光景に目頭を熱くし、ペース配分など考えない、あの頃と何も変わらない、真っ直ぐすぎるフレーズたちを全身全霊の歌声で届けていく。「追いかけたい まだ胸のなかで 少年の自分が走っている!」

<「僕が発する言葉には、全くもって説得力がないかもしれません」>

 「横浜ぁぁぁぁぁぁぁ! 歌えぇぇぇぇぇぇぇ!」その後もお馴染みのサポートメンバー・田中隼人(key,dj)、MASATO(cho/THE BEAT GARDEN/今夏メジャーデビュー)と共に、だだっ広いはずの横浜アリーナを所狭しと走り回り、幾度となく爽快なシンガロングも生み出していた加藤だったが、最初のMCで改めて自分の想いを届けていく。

 「ご来場頂き……心からありがとうございます!!! いろいろご心配をおかけしました。そしてお騒がせしてしまって本当に申し訳ないと思ってます。今、僕が発する言葉には、全くもって説得力というものがないかもしれませんが、また僕は音楽というものに甘えてみようと思います。自分の歌声で失ったものをまたひとつずつ取り戻していこうと思ってます。その為には、今日集まってくれた会場の皆さん……ちょっとだけ優しくして下さい。少しだけ寄りかからせて下さい! 少しだけ甘えさせて下さい! ただし、一生懸命歌います!! 心の底から皆さんの胸のど真ん中めがけて歌いますんで、最後までお付き合い下さい!! よろしくお願いします!!!」終盤はほとんどシャウト。しかし、しっかりと胸に届く魂の言葉。

 ハッキリ言って「ちょっとだけ優しくして下さい」とファンに向かってお願いするなんてこの上なく格好悪い。東京ドームや横浜アリーナに立つほどのスターが「甘えさせて下さい!」なんて本来であれば口が裂けても言いたくない。でも加藤はスターでも、もしかしたらアーティストですらなく、情けないことをしてしまったひとりの男として頭を下げた。必死に頑張るから自分の歌をもう一度だけ聴いてほしいとファンに嘆願した。美しくない。格好良くもない。

 でもその姿はどうしようもなくファンキー加藤だった。情けなかろうが、格好悪かろうが、バカにされようが、自分らしくしか歌えなかった。その結果として日本中がその歌を求めるに至ったファンキー加藤そのもの。本人も言っていた通り、彼の純粋で真っ直ぐで飾りのない歌たちは、例の騒動で説得力を失ったかもしれない。前述のMCを読んで逆に腹を立てる人もいるかもしれない。それも重々承知した上で彼は再びステージに立ち、ダメダメな自分をちゃんとさらけ出し、いつぶっ潰れてもいい気迫で歌い叫んでいた。走り回っていた。必死に音楽とファンにしがみついていた。だったら、そのままどこまでも突っ走ってみせれくれ。そう思ったのは自分だけじゃないだろう。

<“禊”とも受け取れるいくつかのサプライズ 諦めかけた歌を……>

 そんな彼に対して“禊”とも受け取れるいくつかのサプライズがあった。ライブ中盤「今日という横浜アリーナ……」と加藤が語ろうとすると、田中隼人が「ファンキーさん、そんなしんみりしたMCもいいんですけど、今日はスタッフさん始動のプロジェクトが動いていましてですね。皆さんと一緒に観たいものがあります」と言い出し、なんとステージ上のスクリーンに芸能リポーター・井上公造が登場! その場に土下座状態となった加藤の目の前で「いやぁー、ツラい会見でしたね。何なってんだよ! 正直、ちょっと腹が立ったりもしました。まぁでも僕以上に複雑だったのがファンの皆さんだったと思います。今年はそういう騒動を数多く取材しましたけど、加藤くんの場合はファンの人があったかいなぁと思いました。これまで自分たちを励ましてくれた、元気にしてくれた加藤くんに何か恩返しというか、こういうときだからこそ支えてあげたい。そういう想いがSNSを見てても伝わってきましたね。このあったかいファンをもう裏切らないで下さい。それだけは約束して下さい」

 そんな厳しくも心温まるメッセージに続いては、宮迫博之(雨上がり決死隊)もVTRで登場。「えー、君は何をしてるんだ? こんなに世間を騒がせて、ファンを動揺させて……イカン! と友人である私も叱ってあげようかと思ったんですけれども、まぁ「おまえが何を言うてんの?」みたいなところもあり(笑)……あくまで疑惑ですけれども! でもひとつ加藤くんに謝ってほしいことがあるんです。加藤くんのマンション、僕のマンションの真向かいなんですよ。あなたの部屋見えるし、前の道路も見えるんです。そこにね、記者が山ほどいたんですよ。ずっと嫁が「あんた、何したん?」……家庭がぐわんぐわんしました。今度会ったときに謝って頂きたい。あなたのせいでウチが離婚しそうになった」と爆笑連発の小噺(?)で会場の空気を温めた。さらに田中隼人が「ちゃんと反省してるのか? 今日はおしおきを受けて頂きます」と言い出し、MASATOが某バラエティ番組でお馴染みの効果音に合わせて「加藤、アウト~」と畳み掛け、かなり強力なゴムパッチンの刑を受けることに。首もとに赤い痕が残るほどのダメージを喰らっていた(2日目はタイキックの刑だったそうです)。

 「井上さんも宮迫さんも言ってくれたんですけど、歌うという道しか僕には残されてないので、どんどんどんどん音楽の道をこれからさらに真っ直ぐ進んでいけたらいいなと思っております。音楽は歌う人と聴いてくれる人がいて成り立つものだと思っていて、本当は今日の横浜アリーナ、半分諦めかけていたんですけれども……ご来場頂きまして、重ね重ね、皆さん、本当にありがとうございます! で、そんな中でどうしても歌うことを迷った曲があったんですけれども、やっぱり10年先、20年先に、こんな男になりたいなという願いを込めて……そして皆さんと共にこの歌をうたっていきたいな、そういう風に思っております。一緒に歌ってください」と、ファンモン時代からの名曲「ヒーロー」を共に歌い上げていく。

<天井に吊るされて「太陽おどり」信頼のストーリーが再び動き出した日>

 説得力を失った言葉、歌。それらをまたイチから育てていこうとする姿が、この公演からは幾度となく見受けられた。「終わらない未来」も「あとひとつ」も「希望の唄」も「ちっぽけな勇気」も……この日披露されたすべての歌に対して真摯かつ全力で向き合っていくことで、一度は壊れかけたファンとの信頼もひとつひとつ取り戻していく。やっぱりファンキー加藤はファンキー加藤とひとりひとりが再確認していく。そしてアンコールでは、これまたスタッフからのおしおきの一環として(?)、かつてバンジージャンプ企画をリタイヤしたこともあるほどの高所恐怖症である加藤が、なんと横浜アリーナの高い高い天井に吊るされて「太陽おどり ~新八王子音頭~」を歌い踊り、みんなと笑顔を交わし合う光景が生まれていた。一緒に歌っては涙して、一緒にバカやっては大笑いして、また一緒に遊ぼうと約束して、必ずまた再会する。そうして築き上げられていったファンキー加藤とファンの信頼のストーリーが再び動き出した日。

 「またイチからひとつずつ積み重ねていこうと思います。またもっとカラっとしたファンキー加藤のワンマンライブをみんなと共にやれたらと思います。今日は間違いなく俺にとって再出発の日でした。本当に全部失いかけていたんですけれども、希望はここにありました。皆さん、本当にありがとうございます。またイチから頑張ります!」

取材&テキスト:平賀哲雄
photo:笹原 清明 / 堂園 博之

◎ライブ【I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナ】
07月23日(土)横浜アリーナ セットリスト:
01.中途半端なスター
02.MUSIC MAGIC
03.まわせ!
04.輝け
05.ナツミ
06.あの夏のカクテル
07.つながるから
08.ヒーロー
09.ブラザー
10.終わらない未来
11.太陽
12.あとひとつ
13.希望の唄
14.CHANGE
15.ちっぽけな勇気
16.My VOICE


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