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リオデジャネイロ五輪の影響があるのかどうかはともかく、ボサノヴァ系の再発やコンピレーション・アルバムが続々とリリースされている。定番アイテムももちろんいいのだが、ちょっと食傷気味というのなら、こんなアルバムはどうだろうか。本作『TOKYO BOSSA NOVA CAFÉ』は、日本コロムビアの数あるカタログから和製ボサノヴァの名曲を集めた作品集だ。
コロムビアの和製ボサノヴァというと、いしだあゆみを筆頭に、伊東ゆかりやヒデとロザンナなど、60年代の歌謡曲に多数の名曲が残されていることがマニアには知られている。しかし、本作は70年代初頭から90年代にかけての作品にフォーカス。特に、1980年前後のシティ・ポップ系に焦点を当てているのが珍しい。しかもかなりのレア曲が含まれているのだ。発掘され尽くしたといわれている和製ボサノヴァだが、ここまでディープなところをすべてチェックしている人はまずいないだろう。
冒頭のやまがたすみこによる「夏の光に」は、この中ではよく知られた楽曲だろう。彼女のようないわゆるシティ・ポップ系ニューミュージックは、本作のメイ ンどころであり、庄野真代、佐藤奈々子、木村恵子、石川セリなどの楽曲もセレクトされている。また、アイドルの河合奈保子、歌謡曲の尾崎紀世彦、フォーク・デュオのとんぼなど、ジャンルの振り幅も広い。加えて、90年代のJ-POPシーンから、クラックポット、frasco、赤松英弘といった通好みの ミュージシャンがセレクトされているのも嬉しい。
初CD化曲も3曲含まれており、五十嵐麻利江や早瀬ナオミなどは、その存在すら知らなかった人も多いだろう。なかでも驚くのが、アニメソングで知られる堀江美都子が『花の子ルンルン』のサウンドトラック盤に残した「夢であなたと」。先述のいしだあゆみあたりの60年代歌謡に通じるドリーミーさが魅力だ。
このように、雑多なセレクトのように見えるが、ボサノヴァというキーワードで繋がる20曲を通して聴くと、本場ブラジルのボサノヴァとは違った和製ならではの繊細さや湿度を感じさせるのが面白い。テレビにオリンピック中継を映しながらボリュームを下げ、このCDをだらだらと流しておくのが、この夏の極上の過ごし方かもしれない。
(REVIEW:栗本 斉)
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