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ウディ・アレン監督最新作『教授のおかしな妄想殺人』が6月11日より全国公開となる。
ウディ・アレン監督作品の邦題に「殺人」という言葉が使われるのは『マンハッタン殺人ミステリー』(1993年)、『タロットカード殺人事件』(2006年)に続き、これで三作目。とはいえ、最新作『教授のおかしな妄想殺人』には、前二作品のようなミステリー要素は皆無。アレンの真骨頂ともいえる純正ブラックコメディである。
御年80歳を迎えた巨匠が今作のテーマに掲げたのは、全人類の命題である=「人は何のために生きるのか?」ということ。物語の中心となる哲学科教授のエイブを演じるのは、今回が初のアレンとのタッグとなるホアキン・フェニックス。善人から悪人まで多彩な役柄をこなし、近年では『her/世界でひとつの彼女』(2013年)で人工知能と恋愛するナイーブな中年を見事に演じてみせたことも記憶に新しい、いわゆる「カメレオン俳優」だ。この作品で彼が演じたエイブは、虚無感を抱え、生きる意味を見いだせないでいる中年。目に輝きはなく、どこかいつも寂しげな表情をたたえている。しかし、その佇まいは見る者によっては“ミステリアスで魅力的”に映ることも…。エイブに恋する女子大生ジルを演じたのは、ハリウッドにおける若手トップ女優の一人であり、アレンとは『マジック・イン・ムーンライト』に続くタッグとなるエマ・ストーン。生きる意味を見失ったエイブが、ちょっとした偶然により自身の目的=“妄想殺人”を見いだし、一気に活力を取り戻していく。
主人公のターニングポイントとなる出来事にフィーチャーしすぎることもなく、チクタクと時計の針のように淡々と物語の時間軸は進行していく。もちろん、極上の毒気と皮肉を存分に織り込みながら。そして、最後に待ち受けているのは…。いい意味で、完全にアレン節全開の結末。予想の一枚上をゆく、ある種の笑いを禁じ得ないエンディングである。もし、うっかり特定の登場人物に感情移入してしまった場合、それが誰かによって「後味」もおおいに変わって来るだろう。もちろんニュートラルに物語を追っていた場合も。それもまた彼の作品の特徴であり、醍醐味のひとつだ。
そして、もうひとつ彼の作品の特徴であり、醍醐味となるのが劇中で流れる楽曲の数々。クラシックやスタンダード、オールド・ジャズなど、その選曲はコアな音楽ファンをもうならすほどマニアックなことで有名で、アレン作品に共通する洗練された雰囲気を演出する、ひとつの重要な役割を担っている。数年前には、1972年作品『ボギー!俺も男だ』から、2011年の『ミッドナイト・イン・パリ』まで30本のアレン作品の劇中で使用されたジャズ60曲を収録した3枚組アルバム『Music From The Films Of Woody Allen』も発表され、ファンの間では話題となっている。今作『教授のおかしな妄想殺人』でも、ラムゼイ・ルイス・トリオの代表曲からバッハの名曲まで、多彩な楽曲が作品に華を添える。映画のストーリーはもちろん、音楽通をもうならせるBGMの選曲にもぜひ注目してもらいたい。
◎作品情報
映画『教授のおかしな妄想殺人』
6月11日(土)丸の内ピカデリー&新宿 ピカデリーほか全国公開
http://kyoju-mousou.com/
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