La'cryma Christiのメジャー1stアルバム『Sculpture of Time』は今聴いても発見の連続の名盤!

2016年4月20日 / 18:00

『Sculpture of Time』(’97)/La'cryma Christi (okmusic UP's)

La’cryma Christiは2017年にメジャーデビュー20周年を迎える。2007年に解散して以降、一時的に再結成。2012年にはメジャーデビュー15周年を記念したアニバーサリーツアーを開催したが、また何らかの動きがあるのでは?と密かに期待している人も多いだろう。メンバーのHIRO(Gu)とSHUSE(Ba)はAcid Black Cherryを始めとする数々のサポートミュージシャンとしてもお馴染み、KOJI(Gu)は自身のバンドであるAlvinoで活動中、LEVIN(Dr)もAlvinoやHAKUEIのサポートを務めるなど、現在もシーンで活躍し続けている。ビジュアル系全盛期の1997年にメジャーデビューを果たしたLa’cryma Christiは、デビューの翌年にはシングル「With-you」がヒットし、「未来航路」がオリコンチャートの3位となる大ヒットを記録。ビジュアル系に位置付けられていたが、実は日本が生んだ才気あふれるプログレッシヴロックバンドだったとも言える。そんな彼らの名盤と言えば、代表作となったヒット曲が収録されたメジャー2ndアルバム『Lhasa』も素晴らしいが、“なんだ? このバンドは?”と世の中に衝撃を与えたという意味でも、名曲揃いという意味でもメジャー1stアルバム『Sculpture of Time』ではないだろうか。今、聴いても古くなっていないどころか、TAKAのヴォーカル、演奏、アレンジメントのセンスと完成度の高さに驚きと発見の連続である。

1990年代後半のビジュアルシーンとLa’cryma Christi
音楽のジャンルでは括れないビジュアル系という定義がお茶の間にまで浸透し、一般週刊誌などに特集されるようになったのがLa’cryma ChristiやMALICE MIZER、SHAZNAなどがブレイクした頃だろう。数多くのバンドが出現し、TVの音楽番組にも出演していた時代。あれから約20年の月日が流れた今もビジュアル系と呼ばれるバンドは多く存在しているが、違うのはこの時代、そして、それ以前のアーティストが自分たちのことをビジュアル系だとさほど思っていなかったことかもしれない。世間的にはひと括り的扱いをされていた感もあったが、ほとんどのバンドが音楽はもちろん、ライヴでのパフォーマンス、衣装、見せ方は異なっていた。かぶっていたら世に出てこられなかった時代だったとも言えるし、バンド側も自分たちにしかできない音楽を確立しよう、楽曲を生み出そうとする意識とプライドが非常に高かった。
1994年にTAKA、HIRO、KOJI、SHUSE、LEVINの5人が揃い、大阪を拠点に活動していたLa’cryma Christは“誰も見たことのないキリストの涙の色をステージと楽曲で表現したい”というビジョンを持つバンド。洋楽ロックと東洋のオリエンタルな音楽の要素を掛け合わせたような複雑でいてメロディアスな楽曲を世に送り出した。家にいながらにして世界を旅させてくれる錯覚に陥る歌詞の世界、テクニカルでありながら歌心も持ち合わせている楽器陣の表現力はデビュー当時からかなりの水準に達しており、『Sculpture of Time』にも6分を超える楽曲が2曲も収録されているが、まったく飽きさせないドラマチックな曲に昇華しているのに唸らされる。アクの強いプレーヤーたちを従えるのに相応しいTAKAのハイトーンヴォーカル(ポップなメロディーを活かす声質)がLa’cryma Christiの強力な武器であることは言うまでもないが、こんな浪漫あふれるアジア発のプログレロックバンドはもう出現しないだろうと思う。

アルバム『Sculpture of Time』
1stフルアルバムにして大傑作。タイトルを直訳すると“時の彫刻”だが、その名に負けていないスケール感とロマンティシズムがあふれる作品に仕上がっている。幕開けは伸びやかなTAKAのハイトーンヴォーカルと心地良くエモーショナルなサウンドに引き込まれる「Night Flight」で夜間飛行の旅の始まり。《僕は鉄の 塊に乗り空をゆくよ》という歌詞が印象的だ。そして、3rdシングルとしてリリースされた「南国」ではハイビスカスの花が咲く常夏の島へ…。イントロのまとわり付くようなギターのフレーズが熱風を運んできてくれるかのようである。「南国」はLa’cryma Christiのポップなメロディーと異国情緒あふれるマニアックな音楽性が絶妙のバランスで同居した代表曲のひとつだと思うが、ギター、ベース、ドラムのアンサンブルもコーラスの入り方も完璧だ。
そこから間髪入れずの「Sanscrit Shower」もまたまた唸らされる名曲。ベースがフィーチャリングされたイントロからしてミステリアスで、南の島から遺跡が残るアジアのどこかに飛ばされたような錯覚に陥る。後半の展開はザッツ・プログレだが、楽曲の持つ吸引力とヴォーカルの迫力により難解さをまったく感じさせないのがすごい。ツインギターの魅力を引き出している曲でもあり、La’cryma Christiの真骨頂とも言えるだろう。本作の中でもっともキャッチーで躍動感のあるメジャーデビューシングル「Ivory trees」は、その後のブレイクを予告させるナンバー。6分を超える大作「Angolmois」はプログレ魂全開のブルージーで内省的でありながら破壊力のある曲で、12弦ギターのフレーズ、浮遊感のあるコーラスからダイナミックに展開していく演奏にゾクッとさせられる。個性の強いプレーヤー陣がお互いを活かし合って主張するバンドアンサンブルが堪能できるのが本作でもあり、ヴォーカルの裏で鳴っているフレーズが濃いにもかかわらず歌を引き立てているのにも驚かされる。
書いていくとキリがないぐらい宝物のような楽曲が収録されているアルバムでなので興味が沸いた人にはぜひ全曲聴いてほしいが、エキゾティックなギターで始まる変拍子の嵐の「偏西風」も、「南国」同様ファンから熱烈な支持を受けているナンバー。「神業か?」と思うぐらい間奏も秀逸でプログレ、フュージョン好きにもたまらない一曲となっている。聴き手はLa’cryma Christiとともに見たこともない異国を旅している気持ちにさせられ、6分超えのラストナンバー「Blueberry Rain」では《甘い涙を泳ぐ ナイトフライトに行こうよ》と再び魅惑の旅に誘われる。日本のロック史に名を残すべきバンドであり、聴き継がれるべき名盤である。


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