SHOW-YAの『Outerlimits』はガールズバンドの限界を超越した渾身のハードロックアルバム

2016年3月9日 / 18:00

『Outerlimits』(’89)/SHOW-YA (okmusic UP's)

前回の本コラムでプリンセス プリンセスを取り上げたが、彼女たちと同時代にバンドブームをけん引したガールズバンドのもう一方のクイーン、SHOW-YAも日本のロック史において決して忘れ去られることはない存在だ。デビューから試行錯誤を繰り返して辿り着いたハードロック路線。女性ミュージシャンだけを集めたロックフェス『NAONのYAON』の主催。メンバーチェンジ~解散、そして再結成。道なき道を歩んできたSHOW-YAの軌跡は、今もガールズバンドのお手本となり得るもので、称えられてしかるべきだろう。

方向性の定まらなかったデビュー期
SHOW-YAは1985年にデビューしている。92年にヤマハ主催のバンドコンテストのレディース部門で最優秀グランプリバンドを受賞したものの、寺田恵子(Vo)と中村美紀(Key)以外のメンバーが脱退。その後のメンバー募集によって角田美喜(Dr)、仙波さとみ(Ba)、五十嵐美貴(Gu)が加入して、デビュー時のメンバーが揃った。当時の音楽シーンがどうだったかと言うと、LOUDNESSがアルバム『THUNDER IN THE EAST』でアメリカ進出を果たしたのが85年であり、和製ヘヴィメタル=所謂“ジャパメタ”が盛り上がっていたが、まだまだ一部好事家たちのものといった印象は拭えず、シーンの主流は完全に歌謡曲であった。
レベッカのシングル「フレンズ」が大ヒットし、女性ヴォーカルのロックバンドはすでにシーンのメインストリームに躍り出ていたが、全員女性のガールズバンドは(あるにはあったが)未だ珍しい存在で、今振り返ると、レコード会社やマネジメント会社がSHOW-YAをどう世に送り出していいのか逡巡したと思われる痕跡が残っている。デビュー曲「素敵にダンシング (Coke Is It)」にしても2ndシングル「しどけなくエモーション」にしてもロックはロックだが、音像が細いというか、後に響かせるハードロック、ヘヴィメタルの色は薄く、誤解を恐れずに言えば、どことなくニューウェイブっぽいのだ。まぁ、レベッカにせよBOØWYにせよ、ポストパンク的なニュアンスがあったことは事実だし、当時ロックでメインストリームに分け入ろうとすると、80年代的なサウンドを施すのは致し方ないことだったのだろう。アーティストの意思はともかく、少なくとも送り手側には、俗に言うバンドサウンド一本で勝負しようとする意識は極めて薄かったと思われる。
87年には「その後で殺したい」「水の中の逃亡者」「孤独の迷路」とシングル3作品を発表。これは秋元康作詞、筒美京平作曲、松下誠編曲という超強力な布陣を配した三部作とも言えるもので、今聴いても当時の制作サイドの意欲がうかがえるものの、いずれもロックチューンではあるが、良くも悪くも歌謡曲テイストは否めない。名うてのヒットメイカーが手掛けただけに決して悪い楽曲ではなく、“アイドルロック”として捉えたら十分にイケるナンバーだと思うが、さすがにのちのSHOW-YAのイメージは薄い。また、楽曲はともかく、この頃のビジュアルは──当時の苦心、いや苦悩ぶりは理解するとしても今見ても正直言って苦笑いを禁じ得ない。セールスも芳しくなかった。

ハードロック路線でついにブレイク
想像するに、そこでメンバーたちは一念発起したのだろう。おそらく「自分たちが本当にやりたいことをやろう!」という意気込みで、ハードロック路線に舵を切ったと思われる。ジャーニーのジョナサン・ケインとチープ・トリックのリック・ニールセンの共作として提供された、88年リリースの7thシングル「愛さずにいられない -Still be hangin’ on-」もさることながら、本領を発揮したのは89年に発表された8thシングル「限界LOVERS」だ。イントロからして誰が聴いてもハードロック、ヘヴィメタル。サビのメロディーこそキャッチーで分かりやすいが、それも《Back to the fire!》というシャウトで締め括られるのだから、彼女たちの意地が感じられる。ギターソロも若干マニアックだ。そんな彼女たちの意気込みは届くところには届いたのだろう。「限界LOVERS」はチャート13位を記録。後に30万枚を超えるロングセラーとなった。続く、9thシングル「私は嵐」はさらにヘヴィメタルを強め、イントロで重いリフをかき鳴らすギターはBメロではヴォーカルと拮抗し、ソロパートではライトハンド奏法を聴かせるなど、清々しいほどにヘヴィメタルなナンバーだ。これもまたチャートインし、SHOW-YAはついにブレイクを果たす。すでにプリプリが大ブレイクしており、折からのバンドブームが追い風になったとは言え、それまで逡巡していたSHOW-YAが本来のサウンドで成功した軌跡そのものがロック的ではある。
「限界LOVERS」「私は嵐」のヒットを受けてリリースされたのが7thアルバム『Outerlimits』。当然と言うべきか、これもハードロック、ヘヴィメタル色の濃い──いや、紛うことなき、ハードロック、ヘヴィメタル・アルバムだ。ほとんどの楽曲で重いギターリフが聴ける他、M4「TROUBLE」のギターとベースのユニゾンプレイ、M8「BAD BOYS」でのベースソロや印象的なキーボードなど、決して勢いだけではなく、しっかりとした楽曲を構築しているバンドアンサンブルを確認できる。一時期は週に6日は朝から晩までスタジオに入っていたというだけあって、メンバーそれぞれのテクニックも確かだ。「Stairway to Heaven」を彷彿させるM6「祈り」はその証左であろう。
『Outerlimits』の最も素晴らしい点はここで表明されているメンタリティーだと思う。歌詞はほぼ安藤芳彦氏が手掛けているが、安藤氏は寺田に依頼されて彼女の日記を基に歌詞を書いたというから、その内容は寺田の心情そのものと言っていいであろう。

《夜明が来るまで このまま走りたい/光の速さで 次の世界へ》《忘れてしまえ(忘れられない)/今日の自分を/追い抜いて行け(GETTIN’OUT OF LIMITS)/Movin’》(M1「OUT OF LIMITS」)。

《脱ぎ捨てた 嘘のドレス 偽る自分捨てて/我ままに 愛したい》《天使の顔 悪魔の顔/繰り返して 生きているわ/優しさより 激しさより/感じたまま》《限界まで 限界まで あきらめない》(M3「限界LOVERS」)。

《強く 強く もっと 強く/心のまま 生きたい》《高く 高く もっと 高く/広い 空を 飛べたら》(M6「祈り」)。

《誰にも分からない 孤独な戦いの世界》《自分を越えるための 地平を見つめて/火花を散らす 蒼い情熱》《SHOW ME THE POWER/今を変える力が見たい/GIVE ME THE POWER POWER/夢を掴む力が欲しい》(M11「BATTLE EXPRESS」)。

ポジティブかつアグレッシブ。まさに限界を超えようとする現状打破のパワー。「そんな彼女たちの意気込みは届くところには届いたのだろう」と前述したが、訂正する。これほどの思いが聴く人の胸に刺さらないわけはない。SHOW-YAのROCK ‘N ROLLは確実にリスナー、オーディエンスを揺らし(=ROCK)転がした(=ROLL)のである。

ガールズバンドをシーンに打ち出す
SHOW-YAが揺らし転がしたのは聴衆だけではない。音楽シーンそのものを揺らし転がして、ガールズバンドというカテゴリを日本に根付かせた。彼女らが提唱し、87年から立ち上げた『NAONのYAON』は、それを具現化するにあたっての大きなきっかけであったと思う。アーティストだけでなく、スタッフも女性のみで構成された日比谷野外音楽堂でのロックフェス。同時代の盟友、プリプリを始め、多くの女性アーティストが出演しているが、第1回はカルメン・マキ、第2回は本田美奈子を中心に結成されたロックバンドMINAKO with WILD CATS、アン・ルイス、NOKKO、シーナ、イリア、YOU、そして第3回は杏子と、レジェンドも続々参加。一方、昨年はシシド・カフカ、仮面女子、Silent Siren、Gacharic Spinら若手女性アーティストも出演と、世代を貫いている点が見逃せない。昨年、LUNA SEAが『LUNATIC FEST.』で、親交のある先輩、同世代、後輩と幅広い年代のバンドを集めたが、これに近いことをSHOW-YAは87年から(途中開催しなかった年もあるが)現在まで続けているのだから、これはもはや偉業と言っていいだろう。聞けば、SHOW-YAのデビュー当時は女バンドの先輩がいないので相談できる相手もおらず、「何があっても自分らで乗り越えなきゃいけないって必死だった」ということで、そんな思いを反映させたところもあったのだろう。SHOW-YA姐さんたちのやさしさが感じられる。
さて、89年にブレイクを果たしたものの、その3年後の91年に寺田がSHOW-YAから脱退。精神的にも肉体的にも追い詰められてしまったというのがその理由だったが、《限界まで 限界まで》《強く 強く》《高く 高く》とストイックに音楽活動に取り組んだことが仇となってしまったようだ。何とも皮肉な恰好だった。バンドは新たなヴォーカルを加えて活動を続けたものの、98年に解散。しかし、寺田が脱退時に忸怩たる思いを抱えていたことは間違いないし、他のメンバーも解散には割り切れない思いがあったのだろう。2005年に寺田が中心となって再結成を実現させる。寺田がメンバーたち一人一人に頭を下げて、5年間かけて説得したというのはファンにとっては有名なエピソードだ。昨年、デビュー30周年を迎え、アニバーサリーのアルバム『PROGRESS』を発表。収録曲「Rock Love」では杏子、相川七瀬、中村あゆみ、土屋アンナ、Gacharic Spin(はな、オレオレオナ)、石田ミホコ、稚菜ら、『NAONのYAON』で共演したアーティストがコーラス参加した他、安室奈美恵をフィーチャーした「限界LOVERS」もスペシャルトラックとして収録しており、今回もまたガールズバンドの可能性を示してくれた。30周年を終え、今後の活動は前人未踏の領域に入ったと言えるSHOW-YA。彼女たちが我々に何を見せてくれるのか、本当に注目しなければならないのは、むしろこれから…なのかもしれない。


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