デヴィッド・ボウイ入門映画『戦メリ』に登場する5人の名優/ミュージシャン

2016年2月15日 / 18:00

デヴィッド・ボウイ『Blackstar』のジャケット写真 (okmusic UP's)

デヴィッド・ボウイの訃報を耳にした時、そのあまりの衝撃から周囲の人間と悲しみとやるせなさ分かち合おうとしたんですけど、日頃音楽を聴かないアラサー以下だといまいち通じないのですね。こちらとしても「グラムロックの〜」「吉井和哉はボウイのインスタレーションとしてイエモンを〜」等といったところから始めてもキリがないので、吐き気がするほどベタではあるものの『戦場のメリークリスマス』を名画座で一緒に鑑賞することにしました。
さて、毎年クリスマスシーズンに風物詩として上映される同作ですが、ボウイ以外にも今となっては生ける伝説レベルのミュージシャンが役者として登場していることでも有名です。今回はボウイ世代ど真ん中の編集部から叱責されるのを承知の上でおさらいします。

1.「Blackstar」(’16)/デヴィッド・ボウイ
まずは何においてもボウイなのですが、ハラ軍曹を演じる北野武の「メリークリスマス、Mr.ローレンス」という例のセリフがあまりにも有名すぎるため、ローレンス役を演じているものと勘違いしている方も多いようです。実際はジャック・セリアズ少佐ですね。挑発的な眼差しと笑みを湛えたまま真っ赤な花を口にする場面は、生涯究極のロマンチストとして誰をも裏切ることのなかった彼を象徴しているように思えました。どの曲にするべきか本当に迷いに迷ったのですが、最後まで新しい要素を取り入れる革新性と意欲を失わなかったその姿勢に敬意を表してこの曲を。

2.「メリー・クリスマス ミスターローレンス Merry Christmas Mr.Lawrence」(’83)/坂本龍一
「作品自体は観たことなくても曲は知ってる」の極地でしょう。この名曲を産み出し、また同年にYMOを散開させた坂本龍一は、ジャック・セリアズ少佐の魅惑に翻弄されていくヨノイ大尉として出演しています。やや朴訥としたセリフ回しは最初違和感を覚えるものの、それが段々と日本兵としての責務とセリアズに抗えないひとりの人間としての葛藤を表現しているようにも感じられます。静謐で浮遊感のあるシンセサイザーは、舞台のジャワ島にも雪が舞い降りたかのような錯覚に陥らせるだけの魔力がありますね。

3.「シェキナベイベー」(’14)/内田裕也feat.指原莉乃
出ているのですよ、「ロックンロール!」内田裕也も。違う金の長髪を探すな、軍帽をかぶっているんだ。冷笑を浮かべながらセリアズ少佐を撃てと命令しているスラッとした酷薄な瞳の青年がいるだろう、そうそれだ! いやー、カッコ良いですね、本当。そして、近年どうしてもバラエティー番組や役者としての活躍が耳目を集めてしまいますが、2年前にはHKT48の指原莉乃とこんなコラボ曲を発表しているのです。冒頭やや取り乱してしまいましたが、あらゆる苦難を乗り越えたロックンローラーとアイドルのタフネスの結晶もぜひチェックしてください。

4.「浅草キッド」(’86)/ビートたけし
ボウイに負けず劣らずの存在感を放っているのがビートたけしです。シニカルな笑いと冷徹な態度を崩さない鬼軍曹ハラ、囚われの身という立場ながらどこまでもグラマラスなセリアズと相反するその泥臭さが、この作品が戦争映画であることを忘れさせないでいさせてくれます。映画に出演した時の彼は“世界のキタノ”と絶賛される前、テレビスターにしていち漫才師という立場でした。この曲はそれからはるか昔、まだまだ無名だった頃の悲哀と青春を自ら綴ったフォークソングです。《同じ背広を初めて買って 同じ形のちょうたい作り 同じ靴まで買う金はなく》という一節は、いつの時代も涙腺を緩ませます。

5.「夢は夜ひらく」(’71)/三上寛
セリアズの反抗的な態度に腹を立て、殴る蹴るなどの暴行に及ぶイトウ憲兵中尉ですが、どうか握った拳をおさめてください。彼こそフォーク全盛期の前からギターを爪弾き、海鳴りのような悲しみも、地獄のような憤怒もただただ“怨歌”として歌い上げるシンガー、三上寛そのひとであります。観客の肌をざわつかせ、胸をかきむしるようなステージを演じ続ける一方で、名状しがたいインパクトを持つ佇まいから数多くの作品で名演を披露しています。あまりに作品数が膨大なのでこちらも選ぶのを躊躇しましたが、「入門編」という意味も含めて、どこまでも渇いた絶望に打ちのめされるこの曲を。


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