蟲ふるう夜に 何も間違っていなかった音楽の終焉~4人がそれぞれに描く朝へ

2016年2月8日 / 20:44

 思い通りにいかない現実に翻弄されながらも、まるでドでかい光の塊のような音楽を必死に叩きつけてくるロックバンド 蟲ふるう夜に。2月5日 恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホールにて【ラストワンマンLIVE pupation】を開催した。

<蟻(vo)がまだベースを抱えながら歌っていた頃の編成で登場>

 バンドとしての活動を終了し、新たに“mushifuru project”へと活動を移行することになり、蟻(vo)はその中心人物に、慎乃介(g)、郁己(dr)、春輝(b)はプロジェクトメンバーとして参加しつつも、個々にイチミュージシャンとして独立。言うならば【ラストワンマンLIVE pupation】はバンドとしての解散ライブとも捉えられるもので、会場には蟲ふるう夜にの最後の勇姿を見届けようとファンやアーティスト、関係者が駆け付けた。そんな我々の前にまず現れたのは、バンド立ち上げメンバーである蟻、慎乃介、郁己の3人。蟻がまだベースを抱えながら歌っていた頃の編成(4年ぶり)で3曲を披露し、今宵のライブが蟲ふるう夜にの歴史を辿り、その物語の中で彼女や彼らがどれほど自分や音楽と向き合い戦ってきたのか、変革を起こしてきたのか、生き様を示すものであることを冒頭から痛感させる。

<必死に守りながら育て上げたモノを自ら粉砕する作業であっても>

 そこへ4人目のメンバー春輝(b)が加わり、蟲ふるう夜にをよく知るサポートメンバーの面々が加わると、そこで披露される楽曲たちに生命が灯る。子供の頃から自分が世界一不幸だと思っていた少女が、かけがえのない仲間と音楽と出逢ったことで「世界には色がある」ことを知り、ようやく人生のオープニングロールが流れ出し、自分の生きる理由を見つけるまでのストーリー。それがひとつひとつのメロディー、サウンド、言葉に滲み出し、かつての少女は涙を流し、彼女が守りたかった仲間たちはエモーションの限りを一音一音にぶち込んでいく。だから彼女はどうしても溢れ出てしまう涙を何度も拭いながら、前を向いて叫び続ける。このライブが大切に必死に守りながら育て上げたモノを自ら粉砕していく作業であったとしても、自身の決断を、4人の決断を淀ませてはいけないから。

<4人が届けようと選んだ音楽や言葉は何も間違っていなかった>

 オープニングロールが流れ出してからの物語も壮絶だった。バンドの成長と共に多くの仲間やライバル、味方や敵と出逢い、その環境の変化と共に心境も劇的に変化していく中で、変わらず嘘のない音楽を届けていくことの難しさを知った。時には守りたかった者ともぶつかり合った。世界に翻弄されまくった。しかし、その渦中から生み出された楽曲たちは蟲ふるう夜にを何度も奮い立たせた。その姿は何度も我々を鼓舞した。この日もそう。無論、蟲ふるう夜にとして、蟲ふるう夜にの4人として、どの曲も披露されるのは最後というシチュエーションも手伝っていたと思うが、中盤の「ホウセキミライ」「わたしが愛すべきわたしへ」あたりから会場中に先の蟻と同じ症状、泣きながらも前を見つめて共に歌う者たちが徐々に増えていく。その理由は寂しさともうひとつ。やはり4人が届けようと選んだ音楽や言葉は何も間違っていなかったから。

<蟲ふるう夜にというバンドの物語が終わるその日まで>

 「私たちが過ごした時間に嘘はないよね?」

 慎乃介が難病フィッシャー症候群で活動休止を強いられても、大一番のワンマンライブをインフルエンザで延期する事になっても「それでも鳴らす」と響かせ続けようとした音楽、寄生虫のよう蔓延るネガティブな思念を蹴散らすように掻き鳴らし続けた音楽、今眼前にいるすべての人々を何とか救える一撃を放てないかと追求し続けた音楽、何があっても生き続けようとしてきた音楽、4人の生きる理由にまで昇華された音楽にどんな間違いがあったと言うのだろう。たしかに未熟だったかもしれない。たしかにヒットしなかったかもしれない。たしかにイマドキじゃなかったかもしれない。たしかに4人をバンドで飯が食えるところまで導いてくれなかったかもしれない。夢を叶えさせてくれなかったかもしれない。でもこの日も我々を命ごと鼓舞させてくれた音楽はどうしようもなく正しかった。蟲ふるう夜にというバンドの物語が終わるその日まで、エンドロールが流れ終わるその瞬間まで、4人は4人の信じた音楽を鳴らし続けた。その純度400%の音楽が我々は好きだった。

<蟲ふるう夜にという同じ故郷を持つ4人がそれぞれに描く朝>

 なお、この日の【ラストワンマンLIVE pupation】はライブ音源化される。6月4日に開催される【mushifuru project 1st LIVE CONCERT】のプレミアムチケットに付属されるそうだ。「生まれ変わってもあなたに会いたい」そう蟻が囁いた通り、彼女はここ恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホールに再び立つ。現時点でどんな編成でどんな音楽を鳴らすのかは不明。もしかしたら……というか、4人の生き様を叩き付けた蟲ふるう夜に以上の何かをそこで体感させるのは難しいと、蟲ふるう夜にをよく知る者であれば誰もが思うだろう。でもそう思わせるだけのバンドを終わらせて選んだ道が“mushifuru project”なのであれば、蟻、慎乃介、郁己、春輝が紡いだ音楽=蟲ふるう夜にの先にある物語だとするならば、それは見てみたい。

 そして、いつでも恥ずかしいぐらい純粋な音楽を届けてきた4人の未来。蟲ふるう夜にという同じ故郷を持つ4人がそれぞれに描く明日はどんなものになるのか。それがどんなものであったとしても、その朝を待ち侘びたいと思う。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:粂井健太

◎ライブ【ラストワンマンLIVE pupation】
02月06日(土) 恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホール SET LIST:
01.僕たちは今、命の上を歩いている
02.焼き付くその眼深く
03.赤褐色の海
04.青の中の一つ
05.クロイトモダチ
06.犬
07.アヲイトリ
08.明星
09.蟲の声メドレー(白の出会い~ふたつの旅立ち~幻水の都)
10.一緒に逃げよう
11.守るべきもの
12.ホウセキミライ
13.わたしが愛すべきわたしへ
14.君という光、僕の走る道
15.それでも鳴らす
16.フェスティバル
17.スターシーカー
18.私たちは今、命の上を歩いている
19.pupation

◎コンサート【mushifuru project 1st LIVE CONCERT】
06月04日(土) 恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホール
OPEN 未定 / START 未定
プレミアムチケット先行販売
(2016.2.6 蟲ふるう夜に ラストワンマンLIVE pupation LIVE音源付)http://shop.mushifuru.com


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