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DJがスピンするゴキゲンなラヴァーズ・ロックで会場が心地好く暖まったところでマキシ・プリーストが登場。エネルギッシュなサウンドに乗って「トーキョーのみんな、ノッてるかい?」「準備はいい?」と問いかけながら、初っ端からオーディエンスとコール&レンポンスを繰り返す。
思い出せば今からもう四半世紀前、当時、レゲエ界最強のリズム・セクションだったスライ&ロビーを従え、初来日を果たしたマキシ・プリースト。そのライブの後半で、それまで被っていたニットキャップを脱いだ途端、腰まであるドレッド・ヘアを獅子舞のように振り乱して熱唱する彼を観て、「コイツは本物だ!」と度肝を抜かした経験――。
今でも鮮やかに蘇るそのシーンを反芻しながら、4年ぶりとなる来日公演を心待ちにしていたファンもいるはず。ジャマイカ移民2世としてロンドンに生まれ、ブリティッシュ・レゲエを牽引してきたマキシのステージは、果たして昔のそんなサプライズとは異なりながらも、とても躍動感に溢れた歌を聴かせると同時に、レゲエの魅力を再認識させてくれるパフォーマンスに満ちていた。
これまで11枚のオリジナル・アルバムをリリースし、米英のヒット・チャートにも顔を出してきた彼の、ラヴァーズ・ロックをベースにR&Bやソウルをクロスオーバーさせたロマンティックで情熱的な楽曲は、時代を超えた普遍性を宿していることが今回のライブで改めて証明されて、僕は今宵、嬉しくて仕方がない。1987年にヒットさせたキャット・スティーヴンスのカヴァー「ワイルド・ワールド」を筆頭に、90年の「クロース・トゥ・ユー」、日本では織田裕二とデュエットした『踊る大走査線』の主題歌「ラブ・サムバディ」が話題になったことでもネーム・バリューがあるマキシ。
そんな彼の久々のステージ。“レゲエ界の貴公子”という愛称がピッタリのエネルギッシュながらも都市生活者のリズム感に溢れたパフォーマンスは、会場に詰めかけたファンの心を魅了し、オーディエンスを痺れさせて一気に鷲掴みにする。そのカリスマティックなオーラさえ感じさせる存在感は、まさに長年にわたりダンスホール・レゲエ/ラヴァーズ・ロックを引っ張ってきたキャリアの証だろう。ボディにダイレクトに響いてくる重低音のベースを核としたバックの的確な演奏に心地好く身体を揺らしてグルーヴしながら、エモーショナルで艶のある声で歌いかけてくる。そこから滲む彼独特のレゲエ・ミュージックに対する「洗練」と「伝統」のバランスは、非の打ちどころがない。中盤ではヴァン・モリソンの「クレイジー・ラヴ」や前述した「ワイルド・ワールド」などを粋に聴かせてくれる。そして、次にはロッキッシュなサウンドに挑んでいくスリリングさ…。実に貫禄に満ちたステージングのところどころに訪れるエキサイティングな瞬間――これが現在のマキシの真骨頂だ。
初日のファースト・ステージからフル・スロットルで展開されたパフォーマンスは、観客を熱くせずにはおかない。何度も会場の隅々にまで目を配り、「もっと聴きたい?」と言葉を投げかけ、一体感を常に意識しているマキシ。それに応えるかのように、みんな総立ちで踊っている。絶妙の間の取り方によるレゲエの奥深さを実感させてくれる彼のライブは、もはや完成の域に達しているのではないか?そんな太鼓判さえ捺してしまいたくなるようなパーフェクトな快感に溢れた歌と演奏を、僕はたっぷりと味わうことができた。
東京では今日も、そして大阪では明日の2日にライブがあるので、久々の彼のステージをしっかりチェックして欲しい。レゲエが単なる“夏の風物詩”でもなければ、一部のオタク・ファンの音楽でもないことが、目から鱗が落ちるほどハッキリとわかるはずだから。さぁ、準備はいいかな?もう一息の冬の寒さを乗り切るためにも、ぜひともマキシのライブで、熱いパッションを身体全体で感じて!
◎公演情報
【マキシ・プリースト】
2016年1月31日(日)・2月1日(月) ビルボードライブ東京
公演詳細>
2016年2月2日(火) ビルボードライブ大阪
公演詳細>
Photo:Masanori Naruse
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。寒さも「今が本番」の寒中。こんな時期に敢えて、キレイな酸と爽やかなアロマが共存したフランス・アルザス地方の白ワイン、リースリングを冷やして、暖かい部屋で楽しむ贅沢。食事は温野菜サラダやクリームソース仕立てのチキンやポークのグリルなど、身体が温まるものをチョイスして。ハーバルな香りとスッキリした飲み心地が、もうすぐやってくる春を連想させてくれる。季節の移ろいを感じながら楽しめるワインと言えそう。ぜひ、お試しを。
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