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2015年のラップ・シーンは、まさにフェティ・ワップのひとり勝ちという状態だったが、今年2016年のヒップホップ界は、トラヴィス・スコットがその座を独占するのではないかとニラんでいる。
昨年9月26日付のアルバム・チャートで、デビュー・アルバム『ロデオ』が3位に初登場する快挙を果たし、フューチャー、2チェインズをゲストにむかえた先行シングル「3500」がスマッシュ・ヒット。その「3500」に続いてリリースされた、アルバムからの2ndシングル「アンチドート」が、ラップ・チャート4位、R&Bチャート7位と両TOP10入りする大ヒットに至っている。
昨年9月にリリースされたビデオは、5600万回再生を突破。ブルームーンの下でスモークを浴びながらライムするシーンが印象的で、ヒップホップらしいクールな画に仕上がっている。その映像にマッチした、ピアノやギターリフといった生音を取り入れつつ、重圧感のあるビートに絡めるトラヴィスのラップが秀逸で、90年代ファンには鳥肌モンだ。
いよいよ、ヒップホップ・シーンの復活が垣間える中、トラヴィスの存在は最も重要な役割を果たすべく位置にいる。鍛え上げた肉体と、流行に媚びないどっぷり黒いサウンド。パーティーチューンに格差げしたヒップホップを、黒人の創造性文化として取り戻すべく活動をしているようにも思える。カニエ・ウェストやドレイクといった、重鎮が絶賛するのも納得で、その存在のデカさは彼らに筆頭するといってもいいだろう。
その才能に惚れ込んだか、パートナーとして囁かれているのが、女王リアーナだ。そのリアーナの最新作『アンチ』のプロデュースも務め、アルバムからの先行シングル「ビッチ・ベター・ハヴ・マイ・マネー」は、トラヴィスが放った快進作。この曲を聴くかぎり、リアーナの新作はポップ調な要素は一切なく、黒いサウンドが渦巻く、タフなストリート感覚が楽しめるだろう。トラヴィスの才能そのものの結晶だ。
「アンチドート」は、2016年1月16日付のビルボード・シングル・チャートで17位まで上昇中、初のTOP20入りに至っている。セールスや視聴回数も伸び続け、間もなくTOP10入りも期待できるだろう。しかし、チャート云々は一切気にせず、ポップ・シーンに売り込むこともなく、ハードコアを貫き通すその姿勢は、まさに現代のヒップホップ・アイコンだ。90年代リバイバルの流行と共に、今年は間違いなくトラヴィス・スコットが躍進する1年になるだろう。
Text: 本家 一成
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