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7月にリリースされたアルバム『平和元年』を携え、元ちとせが10月9日ビルボードライブ東京で公演を行った。
元ちとせは大きな拍手を受け真っ青なワンピースで登場すると、「美しき五月のパリ」でライブをスタートさせ、「元ちとせらしく歌います」と笑顔で挨拶をした。以降は「スラバヤ通りの妹へ」「リリー・マルレーン」と続き、心地よいメロディーの中で元の歌声がまるで“言霊”のように紡がれていく。
ライブのタイトルでもあるアルバム『平和元年』では、元が世界で歌い継がれている反戦歌をカヴァーしているが、この日のライブでも怒りや苦しみ、あるいは悲しみや痛みが切に込められている楽曲たちを彼女は舞い踊りながら歌う。平和への祈りを、歌声とダンスに変えて体全体で表現する元の姿は見とれてしまう程美しかった。
「最后のダンスステップ」では、『平和元年』でプロデューサーを務めた間宮工とのデュエットも披露。間宮はギターも担当し、バンマスとして緻密なサウンドアプローチを施した。さらに、SUNNY(キーボード)、沖山 優司 (ベース)、ASA-CHANG (ドラム・パーカッション)、藤井 珠緒 (パーカッション)による演奏で曲は重厚感を増し、「戦争は知らない」の曲中に世界でも有名な反戦歌「花はどこへ行った」のメロディーを織り込んだアレンジは特に印象的だった。
後半では、戦の悲痛さが受け取れる「腰まで泥まみれ」や「死んだ女の子」が演奏され、観客は皆食い入るように真剣な表情で元の祈りにも感じられる歌声に耳を傾けた。「死んだ女の子」は、戦後60年の際に広島の原爆ドーム前で坂本龍一のピアノと元によって披露されていた楽曲だが、グルーヴィーな演奏で会場を飲み込んでしまうようなこの日の雰囲気は圧巻で、「こんな表現もあるのか」と心を打たれた。その後、元は「語り継ぐこと」など自身の曲を力強く歌い上げた。
MCでは、母になったことや広島を訪れたことに触れ、歌い手として「平和について何かを想うきっかけに私がなれたら」と、凛とした表情で語った。冒頭の挨拶で彼女が口にした通り「元ちとせらしく」伝えられた平和の尊さ、当時の出来事を語った曲を今だからこそ歌い継ぐことの大切さ、さらにここから平和を見つめなおし歩き始めるという『平和元年』というタイトルに込められた意味を、しっかりと音楽で受け取ることのできるステージだった。
Text:神人未稀
Photo: Masanori Naruse
◎公演情報
元ちとせ ~平和元年~
10月9日(金) ビルボードライブ東京
◎リリース情報
『平和元年』
Now on Sale
AUCL 184 3,000円(tax out)
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