ザ・ジャムの1stアルバム『イン・ザ・シティ』はモッズ&パンク魂を感じさせる熱い名盤

2015年7月31日 / 18:00

The Jam『In the City』のジャケット写真 (okmusic UP's)

2015年5月に約3年振りのオリジナルアルバム『サターンズ・パターン』をリリースし、10月に来日公演が決定しているポール・ウェラー。一世を風靡したザ・ジャム、スタイル・カウンシルの再結成にまったく興味を示さないポール・ウェラーは、50代後半にして今なお尖っている粋でオシャレなロックミュージシャンとして君臨しているのではないかと思われる。そんな彼の原点として押えておきたい一枚が1977年に発売されたザ・ジャムのデビューアルバム『イン・ザ・シティ』だ。初期衝動のカタマリのような荒削りでスピーディな3ピースサウンドに血が騒ぐこと間違いなし。ロンドンパンクを語るなら、外せない名盤である。

初期のザ・ジャムは単純明解かつ痛快
ザ・ジャムのメンバーはポール・ウェラー(Vo&Gu)、リック・バックラー(Dr)、ブルース・フォクストン(Ba)の3人。同じ学校に通っていたポールとリックが昼休みに音楽室を使ってジャムセッションをしていたのが、バンド名の由来。何とも単純明解な“バンドやろうぜ”的成り立ちである。ちなみに彼らがデビューした1977年は、パンクムーブメントによってイギリスのロックが息を吹き返した時代。その前年にはセックス・ピストルズが「アナーキー・イン・ザ・UK」で華々しくデビューを飾り、同年にはザ・クラッシュが1stアルバム『白い暴動』をザ・ダムドが『地獄に堕ちた野郎ども』をリリースしている。細身のモッズスーツをスタイリッシュに着こなし、ザ・フーやキンクスの影響を色濃く感じさせていた初期のザ・ジャムは竹を割ったようなロックンロールが痛快で瞬く間にキッズの注目を集める存在になる。
「ぼくらは未来を忘れ、過去を忘れ去るべきだ。今この時、ぼくらが考えなければならないのは現在だけだ。(中略)今は一緒に何かをするんだ。何しろ、ぼくらは今この時、何にも持っていないから。何にも!」(ライナーノーツより引用)
当時、ポール・ウェラーはインタビューで、このように語っているが、パンクロックとは、まさにそういう音楽だったように思う。余談になるが、ザ・ジャムのコンサートのチケットを買って新宿厚生年金会館に行った時、彼らはホーンセクションを迎えた大所帯の編成になっていた。ザ・ジャム史上、最高位の全英1位を獲得した1982年リリースの『ザ・ギフト』がリリースされた後だったからだと思うが、ブラックミュージック色が強くなり、洗練されたライヴを観て、「あれれ? ザ・ジャムってこういう感じだったっけ?」とちょっと戸惑ったのを覚えている。アルバムをリリースしてバンドは解散、のちにポール・ウェラーがファンク、ジャズ、ボサノヴァなどを取り入れ、オシャレでエッジもあるスタイル・カウンシルを結成したことを思うと、「なるほど〜」の流れなのだが、個人的にはやっぱり若気の至りのザ・ジャムが好きである。

アルバム『イン・ザ・シティ』
デビューシングル「イン・ザ・シティ」を含む1stアルバム。全12曲、約32分! “1、2、3、4!”のカウントで始まる「アートスクール(邦題:芸術学校)」に持って行かれたら、あっと言う間に1枚、聴き終わってしまうだろう。優れたポップミュージックを生み出すポール・ウェラーの才能はこの時にはまだ開花していないため、ザ・フー直系のロックミュージックを激しくギターをかき鳴らし、性急なビートで演奏するという印象だ。ビートルズがカバーしていたことで有名なラリー・ウィリアムズ(アメリカのR&Bシンガーソングライター)の「スロー・ダウン」のカミソリのようなギターカッティング、唾が飛んできそうなポール・ウェラーのヴォーカルはまさにパンクジェネレーション。映画『さらば青春の光』にザ・フーの音楽を爆音で聴いている主人公が親に怒鳴られるシーンが出てきたが、このアルバムも「こんなうるさいモノ聴いていたら、成績が落ちる」と心配された代物かもしれない。が、こういう、はちゃめちゃなエナジーに満ちあふれた音楽こそが(ジャンルのスタイルは変われど)キッズにマイクや楽器を持たせるという図式は今も昔も変わることはない。


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