『シン・ゴジラ』に続いて、舞台を現代社会に置き換えて再構築した『シン・ウルトラマン』【映画コラム】

2022年5月16日 / 13:47

 「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府は、班長の田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官の神永新二(斎藤工)、非粒子物理学者の滝明久(有岡大貴)、汎用生物学者の船縁由美(早見あかり)というスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立し、禍威獣対策に当たらせていた。

 そんなある日、大気圏外から銀色の巨人が突如出現し、禍威獣を倒す。このウルトラマンと名付けられた巨人対策のため、禍特対には新たに分析官の浅見弘子(長澤まさみ)が配属され、神永とバディを組むことになる。

(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

 特撮テレビドラマ「ウルトラマン」を、『シン・ゴジラ』(16)の庵野秀明と樋口真嗣のコンビで映画化。庵野が企画・脚本、樋口が監督を務め、舞台を現代社会に置き換えて再構築した。

 『シン・ゴジラ』は、音楽やタイトルなどに過去作へのオマージュは示しつつも、過去作を縛った前提を全てリセットして、「今の日本に“初めて”ゴジラが来たら?」という新たなテーマを提示しながら、自由なアイデアを展開させた点がユニークだった。

 ところが、「今の日本に“初めて” ウルトラマンが現れたら?」というテーマは『シン・ゴジラ』と同じだが、今回は連続ドラマの「ウルトラマン」の中から、庵野と樋口が自分好みの部分を抽出して、2時間弱にまとめた感じなので、どうしても語り口が急ぎ足になるし、いろいろと詰め込み過ぎて全てが中途半端になり、バランスが悪い感じがした。

 例えば、山本耕史が好演を見せるメフィラスのエピソードなどは、もっと見たいと思った。連続ドラマの映画化の難しさがここにあるといってもいいだろう。

 また、オリジナルを踏襲した部分と新たに構築した部分が、もう一つかみ合っていない印象を受けたし、専門用語が飛び交う早口のせりふ回しなのに、キャストの滑舌やアクセントが悪くて聞き取りにくいところも多い。

 
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