「三谷さんは一人一人を愛しながら作っているから、演じる役者はうれしい」井上順(織田有楽斎)【真田丸インタビュー】

2016年11月28日 / 08:00

 NHKの大河ドラマ「真田丸」に、織田信長の弟で、茶々(竹内結子)の叔父にあたる織田有楽斎を演じている井上順。利休十哲に数えられる茶人で、穏健派として茶々らを補佐した有楽斎の真意を語る。

 

織田有楽斎役の井上順

織田有楽斎役の井上順

-「真田丸」をどうご覧になっていましたか。

 初回から見ていました。「新選組!」を超えた作品になっていますし、大河ドラマの歴史に一石を投じた感じがしました。緩急がついていますし、難しい言葉も出てこない。すっと入れて見やすくてすっかりはまってしまっていました。

-有楽斎とはどんな人物ですか。

 きょうだいだった信長やお市の方が死んで、残った3人の姪っ子(茶々、初、江)がかわいくてしょうがない。平和な世の中で、みんな元気に過ごしてほしい、自分が豊臣と徳川の懸け橋となって平和が続いてくれればいいと思っていたんでしょう。

-有楽斎には得体が知れないところもあります。

 人当たりが良くて眼光鋭い。得体が知れないけど、この人、悪党ではなくて策士。それでも力が及ばなかった。

-大坂城に集まった牢人たちをどう見ていたと思いますか。

 ほどほどにしてほしいというのが本心だったと思います。真田幸村(堺雅人)には一目置いていて最初は褒めまくりますが、いなくちゃ困るというのではなく、邪魔されても困るというところ。だから手の上で踊らせておけばいいというのが本当の気持ちだと思います。

-三谷幸喜さんが監督した映画『ラヂオの時間』出演以前に出会いがあったとか。

 「東京サンシャインボーイズって面白い劇団があるから」って知人に勧められて見たのが舞台「ラヂオの時間」。そうしたらしばらくして映画への出演依頼が来たんです。お会いした三谷さんに「覚えていますか」と言われたけど思い出せない。実は20年ほど前に出会っていたんです。僕が毎年ホテルで開いていたクリスマスショーで車をプレゼントにした年があって、絶対当たらないクイズにしようと思ったのに当てた人がいた。それが三谷さんだったんです(笑)。びっくりしました。逆に、僕が映画の出演依頼より前に舞台版を見ていたことを話すと、今度は三谷さんが驚いていました。

-それ以来おつきあいが続いているんですね。

 「今度何かやりましょう」、「いつも口ばっかり」なんてやり取りばかりだったんですけど、「真田丸」の放送が始まってから、ようやく出演依頼が来ました。『ラヂオの時間』以来なんですよ。今回の有楽斎は「真田丸」の中ではちょっと違った色の人間として出てきますし、とてもいいポジションに置いてくれていると思っています。

-スタジオの雰囲気はいかがですか。

 出演者もスタッフもこの番組を愛しているんだなという空気の中でやらせてもらっているから、うれしくてしょうがない。だからドライリハーサルをやって照明を直す時とかにいろんなくつろいだ話をするんです。竹内結子さんにはお子さんのことを聞いたり、堺さんにはどうやってこれだけのせりふを覚えているのかを聞いたりしました。堺さんは、ちゃんと入れ方を習いに行って、子どもをお風呂に入れているらしいんです。きっとそういう時間を持つことで、せりふの入る時間ができるんでしょう。そういう話を聞いているだけでも堺さんの優しさを感じます。

-あまり描かれない有楽斎をなぜここまで詳しく登場させたのだと思いますか。

 三谷さんは主役でも脇役でもその人の味を出してあげたいと役に息吹を与えていくので、みんながやる気になるわけです。一人一人を愛しながら作っているから、演じる役者はうれしい。主役じゃない人たちもいいシーンを作っています。そういう人が影の主役じゃないかなと。有楽斎にしても生き生きとした脇役という点でお役に立てればうれしいと思いますね。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】“原爆の父”と呼ばれた男は一体何者だったのか『オッペンハイマー』/80年代と現代が交錯しながら合体している『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

映画2024年3月29日

『オッペンハイマー』(3月29日公開)  才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、第2次世界大戦中、核開発を目的とした米政府のマンハッタン計画において、原子爆弾開発プロジェクトの委員長に任命される。  だが、実験での原爆の威力 … 続きを読む

岡本圭人、岡本健一と2度目の親子共演への思い 「成長した姿を見せられたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年3月27日

 若村麻由美と岡本圭人、岡本健一が出演する舞台「La Mère 母」と「Le Fils 息子」が2つの劇場で同時上演される。同作は、劇作家フロリアン・ゼレールによる家族三部作のうちの2作で、若村が主演する「La Mère 母」は日本初上演、 … 続きを読む

「光る君へ」第十一回「まどう心」互いの思いとは裏腹に、さらに開くまひろと道長の距離【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年3月23日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月17日に放送された第十一回「まどう心」では、藤原兼家(段田安則)によるクーデター“寛和の変”の事後処理、およびそれに伴う主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の行動が描かれた。  兼 … 続きを読む

【週末映画コラム】4K復元版で「ドル3部作」を一挙上映『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』

映画2024年3月22日

 監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ、主演クリント・イーストウッドという伝説のトリオが放った「ドル3部作」(「ドル箱3部作」と表記されることも多い)が、マカロニ・ウエスタン誕生60周年を記念し、4K復元版として3月22日から一 … 続きを読む

「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

映画2024年3月21日

 朝6時、いつものように目覚めた岩森淳は、恋人の砂原唯(山下リオ)を殺した溝口登(伊勢谷友介)を殺害する。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、なぜか溝口も生きている。そして今日もまた、岩森は復讐(ふくしゅう)を繰り返していく。荒木伸二監 … 続きを読む

Willfriends

page top