「本当におきれいなので、こっそり鈴木京香さんと竹内結子さんの写真を撮りました」小日向文世(豊臣秀吉)【真田丸 インタビュー】

2016年7月31日 / 20:45

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、主人公真田信繁(堺雅人)が仕える豊臣秀吉を演じている小日向文世。世継ぎである秀頼の誕生などの吉事はあったものの、おいの秀次(新納慎也)の切腹、朝鮮出兵の混乱などで徐々に崩壊していく秀吉の最期を語る。

 

豊臣秀吉役の小日向文世

豊臣秀吉役の小日向文世

-秀吉を演じてきて、どんなことを感じていますか。

 楽しかったです。喜怒哀楽がはっきりした役なのでストレスがなかったです。感情が両極に行ったり来たりするというのは役者の醍醐味(だいごみ)ですから。

-今回は老衰していく秀吉というのも描かれていきます。

 秀吉の晩年の様子には諸説あるみたいですけど、今回、三谷幸喜さんは老人性の認知症が進行していくという方向で描いています。正気になったり不安定になったりを繰り返していきます。天下を極めた男が最期は孤独に、ある意味みっともなく死を迎えていきます。

-秀吉の最も怖いところは?

 自分の欲を満たそうとする時、それを邪魔する者に対していらだつところです。そして人が何を考えているのかを見抜く力が優れているところですね。

-笑顔なのに目が笑っていない場面が多かった印象があります。

 台本通り、怒りの表情を作っているだけなんですよ。目の奥が笑ってない芝居って難しいんですけど(笑)。まあ視聴者は秀吉の裏の部分を知っているから、笑っているようで実は相手の心を見抜いていると想像してくれてそう見えるんだと思いますが。

-秀次と秀吉のやり取りはこれまでの描かれ方と違いますね。

 これまでは秀次は性格が破綻していて、暴力的な人として描かれることが多かったのですが、今回は違います。秀吉叔父さんに子どもが生まれなければ自分が跡を継がなければならないというプレッシャーや、自分の度量に対する不安などがたまっていって、秀吉の目を気にし過ぎ、そこから誤解が生じていく。秀吉は秀頼が生まれたことで秀次が何かするのではないかという疑心暗鬼につながっていったんだと思います。

-信繁のことは目にかけていました。信繁も最後までそれに応えます。

 かわいいんでしょうね。打てば響く頭のいい若者で、気の回る家来だった自分の若い時と同じものを感じたんでしょう。

-秀吉はいろいろな方が演じてこられましたが、小日向さんならではの部分は?

 子どものような無邪気さが人より表面に出やすかったのかもしれません。だからこそそこから一気に怒りや容赦のなさの方に行く落差が視聴者には大きく感じたのかも。無邪気になる秀吉と、その一方で嫉妬に狂う秀吉、その間の政治的な部分での冷静な秀吉という三つの秀吉を意識しました。

-秀次が追い込まれて切腹するなど、徐々に崩壊が始まっていきます。

 部下に任してのんびりすればいいのに、心が充足しない、穏やかに暮せない秀吉のことがかわいそうになります。

-この間、民放のドラマにも出演されていますね。

 「真田丸」のファンには「一本に絞って集中してほしい」と思われているかも。でも7月からのドラマにはまた出ます(笑)。

-共演者をどう見ていましたか。

 山本耕史くんや草刈(正雄)さんのかっこ良さとか、堺くんの知的なセリフ回しとか、内野(聖陽)くんの役作りのマイペースさとか、大泉(洋)くんのエンターティンメントとか、自分にないものを持っているから、悔しいです。でも僕の個性を生かすために僕が夢中で演じられる状態をどうやったら見つけられるかに集中しました。

-正室の寧と側室の茶々に対する秀吉の思いは?

 茶々は秀吉にそんなに尽くしてくれたとは感じないけど、なにより秀頼を生んでくれました。寧は、秀吉があれだけたくさんの側室を置いて、茶々と子ども作るのに、最期をみとってくれる。とてもすてきだなと感じました。性格の違う二人が寄り添ってくれたのは秀吉もうれしかったんじゃないでしょうか。演じた鈴木京香さんと竹内結子さんには本当にありがとうと言いたいです。本当におきれいでね、よくこっそり写真を撮りました。死の間際の撮影の時も空き時間に下から(笑)。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第十五回「おごれる者たち」見どころを成立させるドラマの積み重ね【大河ドラマ コラム】

ドラマ2024年4月20日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月14日に放送された第十五回「おごれる者たち」では、藤原道長(柄本佑)の長兄・道隆(井浦新)を筆頭に、隆盛を誇る藤原一族の姿やその支配下の世で生きる主人公まひろ(吉高由里子)の日常が描かれた。 … 続きを読む

「今回は、極上のエンターテインメントを作ったつもりです」 『悪は存在しない』濱口竜介監督【インタビュー】

映画2024年4月19日

 長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む

【週末映画コラム】気持ちのいい人情喜劇『あまろっく』/山田太一の小説をイギリス人監督が映画化『異人たち』

映画2024年4月19日

『あまろっく』(4月19日公開)  理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。  ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む

小関裕太&岡宮来夢、念願のロミオ役に「プレッシャーも力に変えて頑張りたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年4月19日

 上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。  本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む

「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

映画2024年4月18日

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む

Willfriends

page top