【映画コラム】思わず彼女たちを応援したくなる『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』

2017年9月30日 / 19:57

(C) LOCO DD 製作委員会

 独自の活動を続ける3人の監督が、自ら選んだ3組の地方アイドルを、ドラマとドキュメンタリーを融合させながら描いたオムニバス映画『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』が公開された。LOCOはロコドル(地方アイドル)のロコ、DDはドラマ&ドキュメンタリーの略称である。

 始めの「Last DAYS~君といた場所~」の監督は、俳優としても活躍する田中要次。同郷のオトメ☆コーポレーションを追いながら、田中監督がラストの処理について悩んでいたところに、グループの解散話が持ち上がって…。

 続く「ファンタスティック ライムズ!」は大工原正樹監督が、福岡のFantaRhyme(ファンタライム)を描く。兄に借金をせがまれたSayaは、その様子を見かねた相方のAyuと口論になり…。ここでは実在のアイドルが自分自身を演じているのだが、2人のパンチの効いたダンスとボーカルが見ものとなる。

 最後の「富士消失」(写真)は、島田元監督が静岡、富士山のご当地アイドルユニット3776(みななろ)の井出ちよのを描く。ある日、ちよののもとにお茶の精が現れ、彼女は夢の世界へと入っていくが、その世界では富士山が消えていた…。富士山を取り戻すため、ちよの冒険が始まる。

 と、一見、地方アイドルを紹介するちょっとユニークな映画と見せ掛けておきながら、実は、SF(少し不思議な話)、青春ドラマ、そして西部劇と、各編の監督自身が好きな(得意な?)世界に、彼女たちを取り込んでみせたところが面白い。

 とはいえ、3作とも、アイドルたちの必死さやけなげさ、人気という不条理な代物についても描いており、売れるって、メジャーになるって一体何なのだろうと思わされ、見ていて切なくなってくるところがある。

 また本作には、懐かしい自主映画のような雰囲気も漂うが、地方アイドルを描くには、手づくりの良さが感じられるような、こうした味わいの方が適していると感じた。何より、3人の監督が、映画作りを通して、彼女たちに注ぐ愛の深さが画面から伝わってくるのである。だからこそ、映画を見ながら思わず彼女たちを応援したくなる。そこが本作の真骨頂なのだ。(田中雄二) 


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