【映画コラム】 『パシフィック・リム』から『マン・オブ・スティール』まで。3D映画、真夏の大逆襲!?

2013年8月10日 / 19:01

『パシフィック・リム』 (c)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES FUNDING,LCC

 2009年に公開された『アバター』の成功を機に、映画界を席巻した3D(立体)映画。新たな金の鉱脈発見かと騒がれたが、“猫もしゃくしも3Dで”という粗製乱造が災いし、ブームもすっかり下火になった感があった。ところが、猛暑が続く8月の日本で、3D大作が次々と公開されるという現象が起こっている。順を追って紹介しよう。

 まず、9日から公開された『パシフィック・リム』は、太平洋の深海から現れる巨大KAIJUと、兵士が操縦する人型巨大ロボット・イェーガーとの対決を描くSF作。兵士の一人として菊地凛子が出演し、彼女の少女時代を芦田愛菜が演じる。監督は日本の特撮映画やアニメのマニアとしても知られるメキシコ人のギレルモ・デル・トロ。それ故、巨大ロボットの造形は「鉄人28号」や「マジンガーZ」、暗く寒々とした画面構成は、本多猪四郎監督の『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(66)の影響を強く感じさせる。エンドクレジットではハリウッドの特撮を支えたレイ・ハリーハウゼンと共に本多監督に献辞を捧げる念の入れようだ。

 10日公開の『ワールド・ウォー Z』は、人間を凶暴化させ、ゾンビ化させる未知のウイルスの感染原因を突き止めるべく、世界各地を駆け巡る元国連捜査官(ブラッド・ピット)の活躍を描いたパニック作。すさまじい勢いで増殖するゾンビの描写が見ものとなる。ゾンビ物は残酷さが目立つ反面、どこか滑稽に映るところもあるが、深刻な題材を描いた本作にも、ゾンビの意外な弱点などにそうした部分がある。

 23日から公開されるのが、往年のTVドラマを基に製作されたシリーズ第2弾『スター・トレック イントゥ・ダークネス』。今回は最大の危機を迎えた地球を救うべく壮絶な戦いが繰り広げられる。J.J.エイブラムス監督は、スター・トレックに関する過去の作品のネタを随所に仕込みながら、若きカーク船長とスポックの友情、宇宙船エンタープライズ号のクルーの成長物語としても面白く見せる。“トレッキー”と呼ばれる古くからのファンと新たな観客のどちらもが楽しめるような趣向が凝らされている。悪の将軍を『ロボコップ』(87)のピーター・ウェラー、知的な悪役を女性に大人気のベネディクト・カンバーバッチが演じているのも見どころだ。

 最後は、30日公開の『マン・オブ・スティール』。何度も映像化されたアメリカDCコミックのヒーロー、スーパーマンを、製作・原案『ダークナイト』(08)のクリストファー・ノーラン、監督『300 〈スリーハンドレッド〉』(07)のザック・スナイダー、英俳優のヘンリー・カビルの主演で装いも新たに描く。今回はスーパーマン誕生の秘密が物語の核となる。ロケットのように空を飛ぶスーパーマン、悪役ゾッド将軍一味との対決などが、目にも止まらぬスピードで展開される。スーパーマン=クラーク・ケントの養父母をケビン・コスナーとダイアン・レインが演じているのも楽しい。

  以上4作品。果たして興行的にも“3D映画、真夏の大逆襲”となるのだろうか。(田中雄二)

 ●公開情報
『パシフィック・リム』
2013年8月9日(金)新宿ピカデリー 丸の内ピカデリー他 3D/2D同時公開
配給:ワーナー・ブラザース映画


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