【コラム ―フレームの中で躍動する女優たち―】第6回:「清野菜名 抜群の運動神経を生かした本格アクション期待の星」

2015年11月27日 / 14:36

 TBS系で好評放送中の「コウノドリ」(毎週金曜日午後10時)は、綾野剛や松岡茉優が演じる産婦人科医たちの奮闘を描いた医療ドラマである。この作品で助産師の角田真弓を演じる清野菜名も、アクションをきっかけに注目を集めるようになった女優の一人だ。

 その出世作が、2014年に公開された園子温監督の映画『TOKYO TRIBE』。

 近未来都市TOKYOを舞台に、各地区を仕切るグループ同士の抗争を、アクションとラップ、お色気満載で描いたエンターテインメント作品である。

 オーディションを経てヒロインのスンミ役に抜擢された清野は、この作品で格闘を中心にアクションの才能を発揮。

 アクションシーンの撮影には大きく分けて、動きを細分化して撮った上で、編集でつなぐやり方と、俳優が一連の動作を行い、それをそのまま撮るやり方がある。それぞれ目的に応じて使い分けられるので、一概にどちらがいいとは言えないが、前者はアクションが苦手な俳優でも編集次第でそれらしく見せることが可能。これに対して後者は、一連のアクションを演じられることが前提となり、俳優にとっての難易度は上がる。

 この作品では後者の方法を多用。立ちふさがる男たちを続けざまにパンチやキックで倒すなど、かわいらしい顔立ちからは想像できないような清野の強烈なアクションは、その存在を強く印象付ける結果となった。

 デビューのきっかけこそローティーン向けファッション雑誌のモデルだった清野だが、実は中学時代に走り高跳びで陸上の全国大会に出場したほどの運動神経の持ち主。高校時代には『TOKYO TRIBE』でアクション監督を務めた匠馬敏郎の下でトレーニングも積んでいる。その経験が実を結んだのが『TOKYO TRIBE』だった。

 この他、金子修介監督の『少女は異世界で戦った』(14)では武田梨奈らと共にソードアクション(女優4人による本作のリアルアクションは必見!)、押井守監督による初主演映画『東京無国籍少女』(15)ではガンアクションに挑戦と、作品ごとにその幅を広げている。

 また、『TOKYO TRIBE』に先駆けて出演した『ヌイグルマーZ』(13)では、アクション吹き替えも担当。同作では武田梨奈がスーパーヒーローのヌイグルマーと超能力者キルビリーの二役を演じているが、両者の対決シーンでキルビリーに扮(ふん)したのが清野だった。(目立たないようにしているが、よく見ると清野の顔が映っているのが分かる。)

 このように、映画を中心にアクションに挑戦している清野だが、その実力の一端を「素敵な選TAXI」(フジテレビ系:14)、「ウロボロス~この愛こそ、正義。」(TBS系:15)などのテレビドラマでも披露。特に「ウロボロス」第9話のアクションは、短いながらもクライマックスの盛り上げに一役買った。

 実は清野は『TOKYO TRIBE』のオーディションに一度落ちている。ヒロイン起用は、再挑戦したアクションメンバーとしてのオーディションで認められた結果だった。彼女のアクションに対する適性を証明するとともに、女優としての覚悟を示すエピソードとは言えないだろうか。

 まだ20歳を過ぎたばかりで、女優として伸び盛りの清野菜名。映画、テレビドラマを問わず、彼女のアクションをもっと見たいと願うのは、筆者だけではないはずだ。

(ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)


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