【コラム フレームの中で躍動する女優たち】 第1回:武田梨奈 「2010年代ガールズアクションのトップランナー<前編>」

2015年10月20日 / 09:00

 最近、ちょっと懐かしい言葉を耳にする機会が増えてきた。

 その言葉とは“アクション女優”。

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』 (C) 2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C) 諫山創/講談社

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』 (C) 2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C) 諫山創/講談社

 40代以上の人であれば、かつての人気女優・志穂美悦子を思い出すかもしれない。だが、今この言葉を呼び戻したのはもちろん彼女ではない。“瓦割り”のCMでブレークした若手女優の武田梨奈だ。いまやあちこちから引っ張りだこの武田は、数々の作品でアクションを披露。その影響からか、最近はアクションに挑戦する女優が続々と登場し、花盛りと呼ぶにふさわしいにぎわいを見せている。

 そこでここでは、武田を筆頭に、アクションで活躍する女優たちを数回にわたって紹介していきたい。

  今夏の話題作『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』でも力強いアクションを披露した武田。これまで出演した映画とテレビドラマ(レギュラー)を合わせると20作以上にも及び、今も『木屋町DARUMA』(全国順次公開中)、『かぐらめ』(24日から新宿武蔵野館で公開)など、続々と出演作が公開されている。

 その最大の魅力は、10歳から始めて黒帯の実力を持つ空手を基本にしたスタントなしのリアルアクション。目にも止まらぬ速さで繰り出される技の数々は、一度見たら忘れられなくなること間違いなしだ。

  では、この活躍はどのようにして生まれたのだろうか。

 その第一歩となったのが、初主演作『ハイキック・ガール!』(09)。柴咲コウ主演の『少林少女』(08)をプロデュースした西冬彦が、女子高生を主人公にしたアクション映画を企画。その主演女優を探す中で行き当たったのが、まだ無名だった武田のブログだった。これをきっかけに、オーディションを経て主演抜てきに至る。

 こうして誕生した『ハイキック・ガール!』は、2009年5月に劇場公開。当時、高校生の武田が空手の達人やプロのスタントマンたちを次々となぎ倒す姿は、強烈な印象を残した。

 映画『るろうに剣心』三部作でアクションに挑戦した女優の土屋太鳳は、この作品がアクションに憧れるきっかけになったとブログに記しているが、他にも何人かの若手女優が本作から影響を受けたと語っている。

 また、その活躍は海外にも知れわたる。ハリウッド大作『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン監督は、SFマガジン12年9月号のインタビューで、興味ある日本のカルチャーとして本作を挙げ、「とにかくサイコー!大好きだよ」というコメントを寄せた。

 ちなみに、本作には武田の弟・一馬も出演。西がプロデュースした『KG カラテガール』(11)における姉弟対決も見ものだ。

 西冬彦とのハードアクション路線でその実力を発揮した武田は、続いて独特のユーモア感覚を持つ井口昇監督と出会い、コミカルなアクションに挑戦する。

 連続ドラマ「古代少女隊ドグーンV(ファイブ)」(10)では、見習い妖怪ハンターの1人“ドロちゃん”役で妖怪と格闘。『デッド寿司』(13)では“すしヌンチャク”を手に、凶暴化したすし(!)を退治。『ヌイグルマーZ』(14)では中川翔子演じるゴスロリ少女が変身したスーパーヒーロー“ヌイグルマー”と超能力少年キルビリー(武器はスプーン!)の一人二役…。

 奇想天外な井口ワールドを縦横無尽に駆け回り、アクションコメディーの扉を開く。『デッド寿司』のメーキング映像で、「ジャッキー・チェンさんのようなコミカルなものをやりたかったので、今回かないました」と屈託なく語っているのが印象的だ。

 VFX合成やワイヤアクションなどの経験も収穫となり、『デッド寿司』では「第1回ジャパンアクションアワードベストアクション女優最優秀賞」を受賞した。

  こうして実績を積み重ねてきた武田だが、ここまでは“瓦割り”のCMでブレークする以前の話。日々進化を続ける彼女は、また新たな階段を上りつつあり、そこにはアクションを学んだ女優が活躍するヒントがあるように思う。そこで次回は、最近の活躍を振り返ってみたい。

 (ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)


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