【映画コラム】 鮮やかにだまされる快感が味わえる『フォーカス』

2015年5月2日 / 18:07

 ウィル・スミスが、口八丁手八丁の天才詐欺師に扮(ふん)した『フォーカス』が5月1日から公開された。

 (C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

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 ニッキー(スミス)は、巧みな話術と手さばき、そして人間行動学に基づいた技能を駆使して人を欺く超一流の詐欺師。仲間を集めて大規模なコンゲーム(信用詐欺)を計画する彼の前に、美しき新米詐欺師のジェス(マーゴット・ロビー)が現れ、チームに加わることになる。

 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)でレオナルド・ディカプリオの妻を演じた新進女優のロビーがスミスと互角に渡り合うさまが見もの。二人の関係は師弟から恋人へと変化していくが、詐欺師同士だけにどちらも相手を信用し切れない。だまし合いながら互いの本心を探るという、一筋縄では行かない恋愛が描かれるのがユニークだ。

 ニッキーはジェスに「相手の注意をそらすこと。だましの極意はこれに尽きる」と教える。つまり、視線=フォーカスを自在に操ることで相手を手玉に取ることができるというわけだ。本作の魅力は、こうした“極意”を踏まえながら、すりのテクニックを巧みに見せたカメラワークと相手の心理の裏をかく方法を描き込んだ脚本の面白さによるところが大きい。

 また本作は、名作『スティング』(73)をほうふつとさせる、チームプレーとしての詐欺を楽しむことができる。スミスやロビーとからむアドリアン・マルティネスら脇役の活躍も見逃せない。彼らがどんな役割を果たすのかは見てのお楽しみだ。

 本作の舞台は、ニューヨークからスーパーボウルが開催されるニューオーリンズへ、さらにカーレースが行われるブエノスアイレスへと移っていく。その中でローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」などの既成曲も効果的に使われている。観客は、華やかな舞台と気の利いた音楽に身を任せながら、最後は鮮やかにだまされる快感を味わうことになる。これぞまさに娯楽映画の醍醐味(だいごみ)だ。(田中雄二)


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