【映画コラム】死を通して生を考える喜劇『神様メール』と『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』

2016年5月28日 / 17:37

 どちらもベルギーのブリュッセルを舞台に、シュールでブラックなコメディーの形を借りて、人間の生と死について描いた二作が相次いで公開された。

『神様メール』 (C)2015 - Terra Incognita Films/Climax ilms/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

『神様メール』 (C)2015 – Terra Incognita Films/Climax ilms/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

 まずは、『トト・ザ・ヒーロー』(91)『八日目』(96)などで知られるベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『神様メール』から。

 神様(ブノワ・ポールヴールド)は、ブリュッセルのアパートに家族と一緒に住んでいて、パソコンを使って世界を操作している。ところが、ある日、神様の10歳の娘エア(ピリ・グロワーヌ)が、神様のパソコンから人々に余命を知らせるメールを送ってしまったからさあ大変。

 エアはパニックに陥った人間たちを救済しようと街に繰り出し、神様も娘の後を追うが…という何とも人を食ったような設定の寓話(ぐうわ)で、ドルマル監督がキリスト教=神を徹底的にちゃかしているところが面白い。

 野球カードが大好きなエアの母親(女神)、余命を知って冒険家になった会社員、スナイパーに転職した保険屋…と、神様とエア以外にも変な、妙な人物ばかりが登場する。中でもゴリラと恋をする有閑マダムを天下の名女優カトリーヌ・ドヌーブが演じていたのには驚いた。

 彼らが集うラストには“ある奇跡”が用意されているのだが、それは見てのお楽しみ。この映画のテーマはあくまでも「もし余命を知ってしまったら人間はどう行動するのか?」だということをお忘れなく。

 
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